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2024年07月08日

ストレスは糖尿病と肥満のリスクを高める ストレス対策が必要 ウォーキングなどの運動が効果的

 ストレスは加齢にともない増えるさまざまな健康リスクを高める。ストレスは、体内で炎症を悪化させ、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高めることが分かった。

 糖尿病のある人にとってもストレス対策は重要だ。ストレスを軽減する方法をみつけることが求められている。

 ウォーキングなどの運動は、ストレスに関連する活動を減らし、糖尿病の合併症のリスクを低下させることが明らかになった。

糖尿病のある人はストレスの影響を受けやすい

 糖尿病のある人は、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌が高まり、その結果として血糖値が上がりやすいことが、大規模な研究で確かめられている。

 ストレスを受けたときに分泌が増えるコルチゾールは、ストレスに耐えるために必要なホルモンと考えられているが、血糖値を上げる作用もある。コルチゾールの分泌は通常は、1日を通して変動し、朝に上昇し、夜には低下する。

 2型糖尿病のある人は、コルチゾールの分泌のリズムが乱れると、血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病の管理が難しくなる。糖尿病のある人にとってもストレス対策は重要だ。

ストレスを軽減する方法をみつけることが大切

 「糖尿病のある人々は、定期的に通院し、血糖値をチェックし、食事を管理し、薬の服用やインスリン注射を続け、自分で管理しなければならないことがたくさんあり、多くのストレスにさらされています」と、米オハイオ州立大学糖尿病・内分泌代謝研究センターのジョシュア ジョセフ氏は言う。

 「糖尿病とともに生きる人にとって、ストレスを軽減する方法をみつけることは非常に重要です。ほとんどの人は、健康的な食事、運動の習慣化、十分な休息をとることが重要だと理解しています。しかし、ストレス対策も糖尿病の管理で重要な要素であることに気づいてない人も多いのです」としている。

ストレスは肥満のリスクを高める

 ストレスは加齢にともない増えるさまざまな健康リスクを高める。ストレスは、体内で炎症を悪化させ、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高めることが、米オハイオ州立大学の新たな研究で示された。

 メタボリックシンドローム(メタボ)は、心臓病や2型糖尿病などの健康リスクを高める5つの要因[内臓脂肪の蓄積、高血圧、善玉のHDLコレステロールの低下、空腹時血糖値の上昇、中性脂肪(トリグリセリド)の上昇]が重なった状態。

 血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効果を十分に発揮できなくなるインスリン抵抗性が、大きく関わっていると考えられている。不健康な食事や運動不足、睡眠不足などが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなる。

ストレスが炎症を亢進

 研究は、米国国立老化研究所(NIA)などの支援を得て行われた。研究グループは、米国で実施されている全国調査である「米国中年期研究」(MIDUS)に参加した、平均年齢52歳の男女648人を対象に調査を実施した。

 C反応性タンパク(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)などの炎症バイオマーカーや、高値になると血栓ができやすくなるフィブリノゲンなどの値から、ストレスとメタボの関連に炎症がどのように関わるかを測定するモデルを構築した。

 その結果、ストレスはメタボに大きく影響しており、炎症がその関連の61.5%に関与していることを明らかにした。

ストレス管理によりリスクを軽減できる

 「ストレスは心の病気に関わるもの、つまり心理的なものだと考える人が多いのですが、慢性的なストレスは炎症やメタボなど、さまざまな身体的な問題に関わっていることが示されました」と、同大学心理学部のジャスミート ヘイズ氏は言う。

 「生活スタイルなどの環境因子や遺伝因子など、メタボに影響を与えるものは数多くあります。そのなかには、遺伝など変えられないものもありますが、変えられるものも多くあります」。

 「今回の調査は、中年期の人々を対象に実施したものです。中年期は、老化の進行が速まる時期です。日常で簡単に取り組める、安価なストレス管理法をみつけることが、健康改善に役立つ可能性があります」としている。

ウォーキングなどの運動をする習慣がストレス対策に
ストレス関連の脳活動を減らし心血管疾患リスクを低下

 それでは、ストレスに対策するために、どのような方法に効果があるだろうか?

 ウォーキングなどの運動や身体活動は、ストレスに関連する脳の活動を減らし、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを低下させることが明らかになった。

 とくに、ストレスに関連するうつ病などのメンタルヘルス不調を経験している人は、運動により大きな恩恵を受けられる可能性があるという。

 これは、米マサチューセッツ総合病院(MGH)が、5万359人を10年間にわたり追跡して調査した研究で明らかになったもの。参加者の一部は、脳画像検査とストレス関連の脳活動の測定も受けた。

 その結果、参加者の13%が心血管疾患を発症したが、ガイドラインで推奨されている身体活動レベルを満たしている人は、心血管疾患のリスクが23%低いことが明らかになった。

 「運動がストレス軽減に役立つメカニズムを解明するために、前向き研究が必要となりますが、運動はとくにストレスに関連する症状のある人にとって、大きな利益をもたらすことを多くの人に知ってもらう必要があります」としている。

Study Links Stress Hormone With Higher Blood Sugar In Type 2 Diabetes (オハイオ州立大学ウェクスナー医療センター 2020年7月13日)
The longitudinal association of changes in diurnal cortisol features with fasting glucose: MESA (Psychoneuroendocrinology 2020年9月)
Stress, via inflammation, is linked to metabolic syndrome (オハイオ州立大学 2024年1月12日)
Inflammatory biomarkers link perceived stress with metabolic dysregulation (Brain, Behavior, & Immunity - Health 2023年12月)
Predictability of the National Psychological Stress Screening for Subsequent Long-Term Psychiatric Sick Leave Among Employees: A Multicenter Nested Case-Control Study (Journal of Occupational and Environmental Medicine 2024年5月)
Physical Activity Reduces Stress-Related Brain Activity to Lower Cardiovascular Disease Risk (マサチューセッツ総合病院 2024年4月16日)
Effect of Stress-Related Neural Pathways on the Cardiovascular Benefit of Physical Activity (Journal of the American College of Cardiology 2024年4月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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