ニュース

2024年03月14日

「温泉」が腸内細菌に良い影響 九州大学が泉質によって異なる健康効果を発見 糖尿病の人にも温泉療法は良い

 温泉⼊浴が、ビフィズス菌を増加させるなど、腸内細菌叢に好ましい影響をもたらし、健康効果につながる可能性があることが、九州大学の研究で明らかになった。

 温泉⼊浴が腸内細菌叢にもたらす影響は、炭酸⽔素塩泉ではビフィズス菌が有意に増加するなど、泉質によって異なることも分かった。

 「温泉療法の理論的根拠を見い出し、温泉療法や健康促進プログラムを開発することで、より個別化されたアプローチが可能になり、地域活性化にも寄与するものと期待されます」と、研究者は述べている。

温泉⼊浴の健康効果 腸内の善玉菌が増加

 温泉は⻑い歴史を通じて、病気の治療や保養など、さまざまな効果を期待して利⽤されてきた。⽇本には10種類の療養泉(泉質)があり、それぞれ効能が異なると伝えられている。

 ⼀⽅で、温泉入浴が健康な⼈にどう影響するかはよく分かっておらず、腸内細菌叢や健康への影響についても⼗分に解明されていない。

 そこで、九州大学の研究グループは、別府市と別府市旅館ホテル組合連合会と共同で、温泉の効果の検証を⾏った。

 今回、九州地⽅在住の健康な成⼈を対象に、別府温泉の異なる5泉質の温泉⼊浴の前後での腸内細菌叢の変化を分析した。

 その結果、炭酸⽔素塩泉⼊浴によりビフィズス菌が増加するなど、温泉⼊浴が腸内細菌叢を変化させ、泉質ごとに異なる腸内細菌を有意に増加させることを、はじめて明らかにした。

 人の腸内には、100兆個と推定される腸内細菌が生息しており、そのなかには良い働きをする善玉菌もある。

 腸内細菌叢を良くすることが、さまざまな体の不調や、肥満や糖尿病、炎症性腸疾患、がん、ウイルスなどに対する免疫などの改善にもつながると注目されている。

温泉⼊浴の効果を科学的に検証

 研究は、九州⼤学⼤学院⼯学研究院都市システム学講座の⾺奈⽊俊介主幹教授(兼 九州⼤学都市研究センター⻑)と、武⽥美都⾥特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

 九州の別府温泉地は、2,000以上の温泉源を有し、⽇本でもっとも多様な温泉を提供している。⽇本では、含まれる化学物質の種類と濃度により、10種類の療養泉に分類されている。

 温泉は、地域開発や温泉療法で、重要な役割を果たしてきた。鉱泉や温泉⽔の⼊浴や飲⽤は、治療の補助や疼痛緩和のために世界中で⽤いられている。

 温泉⼊浴の効果として、筋⾻格系や⽪膚疾患の患者などの睡眠の質や⽣活の質の改善に加え、⼼⾎管疾患や⾼⾎圧などの緩和に効果があるなどの報告がある。

 さらに、最近の研究では、温泉⼊浴と疾病患者での腸内細菌との相互作⽤についても研究が進められている。腸内細菌は、さまざまな病気や健康に深く関わっている。

炭酸⽔素塩泉⼊浴によりビフィズス菌が増加

 研究グループは今回、2021年6⽉~2022年7⽉に、九州在住の18歳~65歳の健康な成⼈136人(男性80人、⼥性56人)を対象に調査を実施。

 参加者に、別府温泉の5つの異なる泉質(単純泉、塩化物泉、炭酸⽔素塩泉、硫⻩泉)に7⽇間連続して⼊浴してもらった。⼊浴時間は毎⽇20分以上とし、参加者は通常通りの⾷⽣活を維持するよう求めた。

 7⽇間の⼊浴前後の便検体を収集し、腸内細菌叢の変化を16S rRNA遺伝⼦アンプリコンシーケンシングにより測定し解析した。

 その結果、その結果、泉質によって腸内細菌の占有率に有意な変化が起きており、とくに炭酸⽔素塩泉⼊浴によりビフィズス菌の⼀種(Bifidobacterium bifidum)が有意に増加することなどが明らかになった。

 他にも、単純泉、炭酸⽔素塩泉、硫⻩泉での⼊浴後には、それぞれ異なる腸内細菌叢の有意な変化があることを確かめた。

温泉⼊浴が腸内細菌叢に与える影響を実証
泉質ごとに異なる腸内細菌を有意に増加させることを明らかにした

出典:九州大学、2024年

温泉⼊浴の健康効果の科学的根拠を提供

 「温泉⼊浴は、疾病患者のみでなく、健康な⼈にも広く親しまれており、その効果を検討することで公衆衛⽣の向上や、温泉の新しい価値を創出することができると考えられます」と、研究者は述べている。

 「今回の発⾒は、温泉⼊浴による健康増進の効果に関する新たな科学的根拠を提供するもので、将来的に、温泉療法を⽤いた公衆衛⽣の向上および地域活性化に貢献することが期待されます」。

 「温泉による腸内細菌叢や健康への影響について、まだ⼗分に解明されておらず、温泉⼊浴効果がどの程度持続するのかや、また他の⾝体的効果などについても、今後の研究と慎重な議論が必要です。現在、再現性の確認や、対照群を⽤いた研究による、より詳しい研究を進めています」としている。

糖尿病の人にとっても温泉療法は有用

 糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法で、必要に応じて薬物療法も行われるが、温泉療法は治療の効果を高めるのに有用であることが、北海道大学名誉教授で温泉療法について研究している大塚吉則氏の研究で示されている。

 とくに肥満をともなう2型糖尿病の人が、温泉療法に、適切な摂取カロリーの食事、森林浴・ウォーキング、温水プールなどでの運動を組み合わせて取り組むと、血糖値や体重が低下し、血糖値の日内変動も改善することが示されている。

 地域資源である温泉を療養に有効活用する「ヘルスツーリズム」は、地域の活性化にもつながると期待されている。

 大塚氏は、温泉療法がもたらす効果として、▼入浴の温熱作用によるカロリー消費の増加、▼糖の取り込みの促進、▼温泉浴によるリラックス効果、▼森林浴や温泉プールでの水中運動など、恵まれた自然環境での運動の効果、▼ホルモン分泌や自律神経作用の安定化などを挙げている。

九州⼤学⼤学院 ⼯学研究院
Effects of bathing in different hot spring types on Japanese gut microbiota (Scientific Reports 2024年1月28日)

一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
一般社団法人 日本温泉科学会
温泉の活用-温泉療法から健康づくりまで (温泉科学 第60巻日本温泉科学会70周年記念特別号)
Hot-Tub Therapy for Type 2 Diabetes Mellitus (New England Journal of Medicine 1999年9月16日)

温泉医科学研究所
もっと温泉を活用しよう! 温泉を利用した健康づくり
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲