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2024年03月04日

太陽光を浴びると糖尿病リスクが低下 食後の血糖値が下がる メンタルヘルスにも良い効果

 自然の光である太陽光に含まれる赤色光を浴びると、血糖値が低下し、食後に血糖値が高くなる血糖値スパイクを抑えられることが明らかになった。

 「意識して日光を浴びるようにして、できれば体を軽く動かすことを習慣にすると、生理機能に良い影響があらわれます。血糖値の乱れが改善し、糖尿病リスクが減少し、健康寿命の延伸の実現につながると期待されます」と、研究者は述べている。

赤色光が食後の血糖値の上昇を抑制

 波長が670nmの赤色光を15分浴びると、血糖値が低下し、血糖値が低下し、食後に血糖値が上昇する血糖値スパイクを抑えられることを、英国のロンドン大学などが確かめた。

 この波長の赤色光は、自然の光である太陽光に含まれているが、LED照明には含まれていない。LED(発光ダイオード)は通常は、特定の波長に偏った光を発し、光源の種類によっては紫外線や赤外線といった、太陽光に含まれる波長の光が含まれていない。

 研究グループは今回、太陽光に含まれる670nmの赤色光を浴びると、細胞内にある小さな発電所であるミトコンドリアによるエネルギー生成が刺激され、血液中のブドウ糖の取り込みが増加することを明らかにした。

 日光を浴びながら体を動かすと、とくに食後の血糖値スパイクを改善できる可能性があるという。実験では、糖負荷試験後の血糖値の上昇は27.7%低下し、血糖値の最高値は7.5%減少した。

 「赤色光を15分間浴びるだけで、食後の血糖値を下げられることが示されました。昼間に日光を浴びることで、血糖管理が改善しやすく、2型糖尿病の治療や予防に役立つ可能性があることは、これまでも報告されています」と、同大学健康心理科学部のマイケル パウナー氏は言う。

 「ミトコンドリアは、細胞の活動エネルギーとなるアデノシン3リン酸(ATP)をつくる働きをします。650~900nmの波長の光を浴びることは、ミトコンドリアによるATP産生が増加し、血糖値が低下し、健康と寿命を改善することと関連していると考えられます」としている。

太陽光を浴びると生理機能に良い影響が

 「LEDライトは日常のいたるところにありますが、人工的な環境下にずっといて、太陽光を浴びないでいると、ミトコンドリアの機能とATP産生が低下してしまうおそれがあります」と、パウナー氏は指摘する。

 「意識して日光を浴びるようにして、できれば体を軽く動かすことを習慣にすると、生理機能に良い影響があらわれます。血糖値の乱れが改善し、糖尿病リスクが減少し、健康寿命の延伸の実現につながると期待されます」。

 研究グループは今回、30人の健康な参加者を対象に、ランダム化比較試験を実施。1つのグループ(15人、平均年齢41歳)は、670nmの赤色光を7日間浴び、もう1つのグループ(15人、平均年齢38歳)は、赤色光を浴びなかった。

 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)などにより、血糖値の変化を検査した結果、ブドウ糖を飲む45分前に赤色光を浴びると、糖負荷試験の2時間後血糖値が低下し、血糖値の最高値も低くなることが示された。

太陽光が細胞のミトコンドリアの機能に影響

 研究グループは、赤色光を浴びると血糖値が改善する効果は、「アブスコパル効果」の影響と考えているという。

 アブスコパル効果は、がんの治療で、がん細胞に対して放射線治療を行うことで、放射線があたっていない遠くの病巣まで縮小がみられる現象のこと。

 がんの局所に対する放射線治療によって、免疫細胞が活性化すると考えられているが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。

 太陽からふりそそがれる可視光線は、紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の7色だか、人工的なLEDライトは通常は青が優勢で、赤はほとんど含まれていない。

 「今回の研究は、健康な人を対象に行ったものですが、糖尿病の人にとっても、日光を浴びることが、細胞のミトコンドリアの機能に影響を与え、これにより細胞レベルと生理学的レベルで、私たちの体に影響をもたらしている可能性があります」と、パウナー氏は述べている。

日光を浴びるとメンタルヘルスにも良い影響が

 昼間に日光を浴びることは、メンタルヘルスにも良いことが、約8万7,000人を対象とした大規模な研究で確かめられた。

 逆に、夜間に強い人工光を浴びすぎると、うつ病や不安症のリスクが高まり、睡眠の質も低下しやすいという。

 オーストラリアのモナシュ大学などの研究グループは、英国バイオバンクに参加した8万6,772人を対象に、生活での光への曝露、睡眠、身体活動、メンタルヘルスなどについて調査した。

 その結果、昼間に日光を浴びている人は、うつ病のリスクが20%減少したが、夜間に長時間、強い人工光にさらされている人は、逆にうつ病のリスクが30%上昇した。

 「日中になるべく自然な光を浴びるようにして、夜間は強い人工光は避けるようにするというシンプルな工夫が、メンタルヘルスを改善するのに役立つ可能性があります」と、同大学脳・メンタルヘルス研究所のショーン ケイン氏は言う。

 ケイン氏によると、日中に明るい光を浴び、夜はなるべく室内を暗くすることは、睡眠と覚醒のリズムを調整する体内時計を整え、概日リズムを健康にするのに効果的だという。

 「しかし、今日では多くの人が日中は薄暗い屋内で過ごし、夜は強い照明をつけて明るくした室内で過ごし、運動不足も増えています。そうした生活スタイルは、私たちの体を混乱させ、調子を悪くする原因になります」としている。

Red light can reduce blood glucose levels, says study (ロンドン大学 2024年2月21日)
Light stimulation of mitochondria reduces blood glucose levels (Journal of Biophotonics 2024年2月20日)
Largest ever study on light exposure proves its impact on mental health (モナシュ大学 2023年10月10日)
Day and night light exposure are associated with psychiatric disorders: an objective light study in >85,000 people (Nature Mental Health 2023年10月9日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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