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2024年02月29日

糖尿病の人の41%は心理社会的な幸福度が低下 理解やサポートを得られると改善 サポートは多いほど嬉しい

 糖尿病とともに生きる人が、周囲からの理解やサポート、社会的支援を得られると、心理社会的な課題を改善しやすくなるという国際調査の結果が発表されている。

 糖尿病とともに生きる成人の41%は、幸福度が低下しており、ほぼ半数(46%)は、糖尿病に関連する否定的な感情的・心理社会的な経験をもっていることが示されている。

 スマホアプリなどを使ったオンラインの生活指導や社会的サポートが期待されている。そうしたオンラインのサポートは、35~55歳の中年成人の生活改善に有用であることが明らかになった。

オンラインの生活指導や社会的サポートは効果的

 スマホアプリなどを活用したオンラインの生活指導や社会的サポートが、肥満や過体重の35~55歳の中年成人の生活改善や減量に有用であることが、米国のミズーリ大学の研究で明らかになった。

 肥満は、2型糖尿病・高血圧・心臓病・脳卒中・肝臓病・がん・睡眠時無呼吸症候群など、深刻な健康上の障害を引き起こす。米国では肥満は、予防可能な死亡原因として、喫煙に次ぐ第2位にあげられている。米国では、20歳以上の成人の42.5%が肥満だという。

 ウォーキングなどの運動の習慣化や、食事スタイルの改善、体重管理など、健康増進のために目標を立てる人は多いが、その多くは実行できていない。

 「肥満や糖尿病のある人は、それに関連した身体的な不調だけでなく、うつ病のリスクが高く、自尊心の低下や社会的孤立などを経験することが多く、メンタルヘルス不調のリスクも高いことが知られています」と、同大学の健康科学部のマンスー ユ教授は言う。

 「しかし、オンラインのプログラムを利用し、専門家によるアドバイスやサポートを受けられ、自分と同じように生活改善や治療に取り組む仲間をつくり交流すれば、より幸せで健康的な生活をおくれるようになる可能性があります」としている。

生活改善を成功させるための5つのヒント

 研究グループは今回、減量のためのオンラインによる生活指導を実施した研究を解析した。過体重または肥満の中年成人を対象に、2000年~2019年の20年間に実施され、6ヵ月以上の介入を行い70%以上が継続した、ランダム化比較試験(RCT)を含む、29件の研究を解析した。

 その結果、オンラインの生活指導で成功しやすいのは、

  1. 生活改善のための情報を提供し、食事や運動などの自己管理のためのツールを提供する
  2. 参加者がオンラインで自分と同じように治療や減量に取り組んでいる仲間をみつけ、情報を共有できるグループチャットの機能がある
  3. 医療の専門家が参加者の疑問や質問に答えることができる

という、3つの要素を備えたものだった。

 さらに、地方に住む参加者のために、アクセスしやすく、柔軟性や利便性が高く、時間とコストが少なくて済むプログラムが効果的であることも示された。

 健康増進のために、生活改善プログラムに参加し成功させるために、ユ教授は次の5つのことがヒントになるとしている。

  1. 食事や運動などの生活スタイルの改善に取り組んでいることを、家族・友人・恋人・同僚に話し共有する。
  2. ウォーキングなど、取り組みやすい運動や身体活動をみつけて、日課に組み込む。
  3. オンラインで、生活改善の取り組みの進捗について知らせ、アドバイスや励ましの言葉をもらう。
  4. 自分と同じように健康増進や減量に取り組んでいる仲間をみつけ、たとえば今日はどれだけ歩いたかなどの情報を共有し、励ましあう。
  5. 食事や運動などについて、分からないことや上手くいかないことがあれば、医療従事者や専門家に相談しアドバイスをもらう。

糖尿病の人が理解やサポートを得られると心理社会的な課題を改善しやすい

糖尿病の人の41%は心理社会的な幸福度が低下

 糖尿病とともに生きる人が、周囲の人々からの理解やサポート、社会的支援を得られると、心理社会的な課題を改善しやすくなるという国際調査の結果を、米ペンシルベニア州立医科大学も発表している。

 糖尿病の人が直面している、感情的・心理社会的課題をより深く理解することで、健康状態を改善できる可能性があるという。

 糖尿病の心理社会的支援を進めていくことを目的とした研究プログラムである「DAWN2」では、糖尿病とともに生きる成人の41%は、心理社会的な幸福度が低下していることが示された。

 さらに、糖尿病の人のほぼ半数(46%)は、糖尿病に関連する否定的な感情的・心理社会的な経験をもっていることも分かった。

 糖尿病の人の多くは、自分の状態について不安・恐怖・心配・憂うつなどを感じることがあり、さらには社会や職場・学校などの無理解や偏見、差別を経験していると報告されている。

孤独を感じている人は多い 糖尿病に対する肯定的な理解も必要

 調査は、米国やカナダなど17ヵ国に住む、1型糖尿病と2型糖尿病の患者8,596人を対象に、オンライン・電話・対面で実施されたもの。

 「糖尿病の人のなかには、家族に周囲にいる人に負担をかけたくないと思い、ご自分の抱えている課題やニーズについて話すのに消極的になっている人もみられます。孤立し、孤独を感じている人は少なくなく、そのことが悪循環を生みだしているおれそがあります」と、同大学で公衆衛生学を研究しているヘザー スタッキー教授は言う。

 「ただし、糖尿病に対して肯定的に理解している人も多いことも示されました。糖尿病であるために、食事スタイルをより健康的に変え、運動を習慣として行うようになり、医療専門家や家族・仲間とのつながりが増え、課題を克服できるようになったと考えている人もいます」。

 「糖尿病になったことで、自分のことをより良く理解できるようになり、生活が少し豊かになったと答えた人もいました」としている。

糖尿病の経験や考えを信頼できる仲間と共有

 「糖尿病には、確かに心理社会的にマイナスの面がありますが、そこから立ち直り、適応する方法をみつけている人もいます。糖尿病の人が、もっとオープンになり、ご自分の経験を共有できれば、さらにはより多くの人が彼らの意見に耳を傾けることができれば、糖尿病に対する理解と自己管理を向上できる可能性があります」と、スタッキー教授は指摘している。

 糖尿病の心理社会的な課題に対処し、より良く生きられるようになるため、(1) 糖尿病に対して前向きな見方をすることで、治療や回復力を改善する、(2)医療従事者や、家族や友人、同僚などの周囲にいる人の理解とサポートを得るという、2つの課題が浮かび上がった。

 「糖尿病についての経験や考えを、仲間や信頼できる人たちと共有することを奨励したいと考えていています。これにより、糖尿病とともに生きる人々のストレスをいくらか軽減でき、糖尿病との生活を改善できると信じています」としている。

Mizzou researcher reveals two key factors for online weight loss success (ミズーリ大学 2024年1月24日)
Effectiveness of Different Online Intervention Modalities for Middle-Aged Adults with Overweight and Obesity: A 20-Year Systematic Review and Meta-analysis (Journal of Prevention 2023年12月20日)
Positive outlook and social support help diabetes patients cope (ペンシルベニア州立医科大学 2014年9月9日)
Personal Accounts of the Negative and Adaptive Psychosocial Experiences of People With Diabetes in the Second Diabetes Attitudes, Wishes and Needs (DAWN2) Study (Diabetes Care 2014年8月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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