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2024年02月28日

朝食で「タンパク質」をとると1日の血糖値が良好に 満腹感や集中力も高められる 糖尿病の人にとって朝食は大切

 朝食で乳製品・大豆食品・卵・魚などのタンパク質をとると、満腹感を高められ、集中力が続きやすくなるという研究が発表された。

 2型糖尿病の人が朝食でタンパク質を適度にとると、朝食と昼食の両方で血糖値の上昇を抑えられることも報告されている。

 とくに肥満のある2型糖尿病の人は、糖質に偏った朝食を見直すと、血糖管理が改善する可能性がある。

朝食でタンパク質をとると満腹感と集中力を高められる

 朝食でタンパク質をとると、満腹感を高められ、集中力が1日持続しやすくなるという研究を、デンマークのオーフス大学が発表した。

 研究グループは、肥満のある18~30歳の女性30人を対象に、ランダムな順番で、▼タンパク質の多い朝食をとる、▼炭水化物の多い朝食をとる、▼朝食を食べないという3つの条件で、それぞれ3日間過ごしてもらった。食事のカロリーはどれも同じに調整した。

 タンパク質の豊富な朝食は、デンマークで人気のある、低脂肪乳から作ったチーズの一種であるスキールや、オーツ麦を使ったシリアルなどを食べてもらった。

 その結果、タンパク質が豊富な朝食を食べていた期間は、満腹感と集中力がもっとも高まり、炭水化物が豊富な朝食を食べていた期間に比べて、エネルギー摂取量が全体的に増えることもなかった。

タンパク質は朝食でも十分にとるのが望ましい

 「これまでの研究でも、朝食を食べる習慣のある人は、食べない人に比べ、体格指数(BMI)が低くやせている傾向があることが示されています」と、同大学公衆衛生学部のメッテ ハンセン氏は言う。

 1日3回の食事のなかで、朝は忙しくて時間をとれないので、食パン1枚のみなど、簡単に食事をすませている人もいるだろう。

 「タンパク質は朝食・昼食・夕食で均等にとるようにして、朝食でもタンパク質をとるのが望ましいと考えられます」と、ハンセン氏は指摘している。

 「朝食をパンとジャムだけですませていて、体重が増えているという人は、朝食に乳製品・大豆食品・卵・魚・鶏肉なども加えることをお勧めします」としている。

朝食は血糖管理を良好に維持するために大切

 米国のミズーリ大学による別の研究では、2型糖尿病の人が朝食でタンパク質の摂取量を増やすと、朝食と昼食の両方で血糖値の上昇を抑えられることが示されている。

 研究グループは、2型糖尿病の男女12人を対象に、クロスオーバー比較試験を実施。参加者の年齢は21~55歳で、体格指数(BMI)は30以上だった。

 参加者に朝食を、高タンパク食[タンパク質 35%、炭水化物 45%]、あるいは高炭水化物食[タンパク質 15%、炭水化物 65%]をそれぞれ7日間食べてもらった。朝食のカロリーは、500kcalに設定した。

 血糖値の上昇をみるときの指標となる血糖上昇曲線下面積(AUC)は、高タンパク食をとっていた期間は17%で、高炭水化物食の23%より低く、血糖値の上昇が抑えられていたことが示された。

 さらに、朝食でタンパク食をとると、膵β細胞に作用しインスリン分泌を促す働きをするペプチドホルモンであるGIPの分泌も増えた。

 「その日の最初の食事である朝食は、その日の血糖管理を良好に維持するうえで大切です」と、同大学栄養・運動生理学部のジル カナリー氏は述べている。

 「血糖値が高くなるのを気にしている方にとって、タンパク質を過剰にとる必要はないにしても、適度にとることは有益です。朝食でタンパク質をまったくとらないという人は、乳製品・大豆食品・卵・肉なども加えることをお勧めします」としている。

糖質のとりすぎは食後の高血糖や肥満につながりやすい

 とくに肥満のある2型糖尿病の人は、糖質に偏った朝食を見直すと、血糖管理が改善する可能性があるという別の研究を、カナダのブリティッシュコロンビア大学も発表している。

 「朝食は1日で大切な食事です。朝食に簡単な工夫を加えることで、2型糖尿病とともに生きる人の血糖管理を改善できる可能性があります」と、同大学健康運動科学部のバーバラ オリベイラ氏は言う。

 血糖値をもっとも早く上昇させるのは糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)なので、ご飯・パン・麺類・お菓子など、糖質を多く含む食品のとりすぎを減らすのは、とくに食後の血糖上昇を抑えるのに効果的としている。

 糖質は、体のエネルギー源として欠かせない大切な栄養素だか、とりすぎると食後の高血糖や肥満につながりやすい。

 「その日の最初の食事である朝食を見直して、糖質だけでなく、タンパク質と脂質もバランス良くとるようにすることは、血糖変動を抑えるための、すぐに取り組める簡単な工夫になりえます」と、オリベイラ氏は指摘している。

朝食のみを低糖質にするとHbA1cが低下

 研究グループは、平均年齢64歳の2型糖尿病の男女121人を対象に、ランダム化並行群間比較試験を実施。参加者を、糖質の多い朝食をとるグループと、糖質の少ない朝食をとるグループに分けて比べた。朝食1食のカロリーは、450kcalに調整した。

 3ヵ月後に、低糖質の朝食をとったグループは、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映し、血糖管理の指標になっているHbA1cが0.2%より低下した。さらに、低糖質食のグループは、1日の血糖変動の幅がより少なかった。

 「朝食のみを低糖質にする戦略は、HbA1cを改善し、1日を通して血糖値の変動を安定させるのに有利であるという結果になりました」と、オリベイラ氏は言う。

 「極端な糖質制限は勧められないにしても、糖質に偏らないようにして、タンパク質と脂質もバランス良くとることは重要です。タンパク質と脂質は、ブドウ糖を含まないため、短時間では血糖値をあまり上げません」としている。

糖尿病の人にとってベストなタンパク質の選び方 (米国糖尿病学会)

Study: Protein-rich breakfast boosts satiety and concentration (オーフス大学 2024年2月2日)
A dairy-based protein-rich breakfast enhances satiety and cognitive concentration before lunch in young females with overweight to obesity: A randomized controlled cross-over study (Journal of Dairy Science 2023年12月20日)
Prevent Type 2 Diabetes Blood-Sugar Spikes by Eating More Protein for Breakfast (ミズーリ大学 2015年4月29日)
A High-Protein Breakfast Induces Greater Insulin and Glucose-Dependent Insulinotropic Peptide Responses to a Subsequent Lunch Meal in Individuals with Type 2 Diabetes (Journal of Nutrition 2015年3月)
Cutting breakfast carbs can benefit people with Type 2 diabetes (ブリティッシュコロンビア大学 2023年5月31日)
Impact of a Low-Carbohydrate Compared with Low-Fat Breakfast on Blood Glucose Control in Type 2 Diabetes: A Randomized Trial (American Journal of Clinical Nutrition 2023年7月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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