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2023年11月22日

生活を楽しめている人は糖尿病や認知症のリスクが低い ストレスを管理しながら「楽しむ意識」をもつことが大切

 ストレスは糖尿病とも関連が深い。職場でストレスの多い人は、心臓病や脳卒中、2型糖尿病のリスクが高いことが明らかになっている。

 ストレスは認知症のリスクも高める。中年期にストレスが多いと、年齢を重ねると認知症のリスクが高くなることが示されている。

 一方、「生活を楽しんでいる意識」の高い人は、介護が必要な認知症になるリスクが低いことが、日本人を11年間追跡した研究で明らかになった。

 「自覚的ストレスをコントロールしながら生活を楽しんでいる意識をもつことが重要です」と、研究者は述べている。

ストレスは糖尿病のリスクを高める

 ストレスは糖尿病とも関連が深い。職場でストレスの多い人は、心臓病や脳卒中、2型糖尿病のリスクが高いことが、日本・欧州・米国で実施された27件のコホート研究に参加した60万人以上を対象とした解析で明らかになっている。

 仕事の負担が重かったり長時間労働をしているなど、仕事のストレスが多いと、心臓に血液をおくっている冠動脈で血液の流れが悪くなる冠状動脈性心疾患や、脳の血管がつまったりやぶれたりする脳卒中の発症リスクが、10~40%上昇することが示された。

 仕事のストレスが多いと、2型糖尿病の発症リスクも30%上昇した。研究は、英国のニバーシティ カレッジ ロンドンなどによるもの。

ストレスは認知症のリスクも高める

 ストレスは認知症のリスクも高める。中年期にストレスが多いと、年齢を重ねると認知症のリスクが高くなることが、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究で明らかになっている。

 研究グループは、1968年に38歳~60歳だった1,415人の女性を、35年間追跡して調査した。

 その結果、中年期にストレスを繰り返し経験していた女性は、そうでない女性に比べて、認知症のリスクが65%高かった。とくに強いストレスを経験していた女性は、認知症のリスクが2倍以上に上昇した。

 「ストレスは、脳卒中や心臓病、糖尿病、高血圧だけでなく、認知症のリスクも潜在的に高めることが示されました」と、同大学神経生理学研究所のレナ ヨハンソン氏は言う。

 「リスクの高い人に、ストレスを軽減するためのアドバイスをしたり、ストレスが高くなる危険性について知ってもらう必要があります」としている。

「生活を楽しんでいる意識」が高いと認知症リスクは低下

 良い知らせもある。「生活を楽しんでいる意識」の高い人は、介護が必要な認知症になるリスクが低いことが、順天堂大学が日本人を11年間追跡した研究で明らかになった。

 「自覚的ストレスをコントロールしながら、生活を楽しんでいる意識をもつことが、将来の認知症の発症を予防するために重要であることが強く示されました」と、研究者は述べている。

 研究グループは、全国14万人の地域住民を対象に、20年以上実施されているコホート研究である「JPHC Study」に参加した約3万9,000人を対象に、約11年にわたり追跡調査した。

 その結果、認知症のリスクは、生活を楽しんでいる意識の高い人では32%、中程度の人でも25%、それぞれ意識の低い人に比べ減少していたことなどが明らかになった。

主観的な幸福度を高める「心理的ウェルビーイング」

 認知症の発症に、加齢・基礎的な健康状態・社会経済的状態・生活スタイルなどがと関連していることが、多くの研究で示されている。そこで、近年注目されているのが「心理的ウェルビーイング」だ。

 心理的ウェルビーイングは、人生の目的など、人生全般にわたりポジティブに働き、主観的な幸福度を高めている心理的機能のこと。

 「自己実現と成長」「人や社会とのつながり」「前向きで楽観的な心をもつこと」「自立し自分のペースを保つこと」などが、主観的な幸福度に影響しているとみられている。

 生活を楽しいと感じるポジティブな意識をもつことで、周囲との関わりが生き生きとし、高齢者の運動能力も高められる期待されている。

「心理的ウェルビーイング」と認知症リスクとの関連を調査

 これまで、心理的ウェルビーイングと心臓病や脳卒中などの循環器疾患との関連は報告されているが、認知症との関連についての研究は少なかった。

 そこで研究グループは、心理的ウェルビーイングの一側面である「生活を楽しんでいる意識」をもつことと、認知症リスクとの関連を調査した。

 その結果、自覚的ストレスが「少ない」および「ふつう」のグループでは、生活を楽しんでいる意識が高いと、認知症リスクは低く、脳卒中の既往のない認知症、既往のある認知症のいずれも同様だった。

 一方、自覚的ストレスが「多い」グループでは、生活を楽しんでいる意識と認知症リスクの間に統計学的な関連はみられず、認知症のタイプ別に分けて解析しても関連はみられなかった。

 「自覚的ストレスが高いと、生活を楽しんでいる意識が高くても、認知症リスクは低下せず、とくに脳卒中の既往のない人では、認知症リスクが低下しないことも示されました。自覚的ストレスをコントロールしながら生活を楽しんでいる意識をもつことが重要であることが示唆されました」と、研究者は述べている。

 研究は、順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学の野田愛准教授、谷川武主任教授らの研究グループ(多目的コホート研究「JPHC Study」)によるもの。研究成果は、「The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences」にオンライン掲載された。

生活を楽しんでいる意識が高いと認知症リスクは低下

自覚的ストレスが多いと、生活を楽しんでいる意識が高くても、認知症リスクは低下しない
自覚的ストレスをコントロールしながら、生活を楽しんでいる意識をもつことが、認知症を予防するために重要であることが示された。

出典:順天堂大学、2023年

Work Stress as a Risk Factor for Cardiovascular Disease (Current Cardiology Reports 2015年8月4日)
Midlife psychological stress and risk of dementia: a 35-year longitudinal population study (Brain 2010年5月20日)
順天堂大学大学院医学研究科 公衆衛生学講座
Perceived Level of Life Enjoyment and Risk of Developing Disabling Dementia: The Japan Public Health Center-Based Study (The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences 18 2023年9月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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