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2023年10月24日

糖尿病は運動不足の影響がもっとも大きい ウォーキングなどの運動で合併症を予防 筋肉を減らさないことが大切

 運動不足が引き起こす死亡に対する影響がもっとも大きいのは、2型糖尿病であることが、「世界疾病負担研究」(GBD)のデータ解析で明らかになった。

 ウォーキングなどの運動を習慣として行い、運動不足を解消すれば、糖尿病・高血圧・脂質異常症を改善でき、心肺機能を高められ、筋肉や骨も健康になり、心血管疾患(CVD)のリスクを下げられる。

 糖尿病とともに生きる人が、運動をすることで筋肉を増やすと、心臓病などのリスクが大幅に減少することが、糖尿病の成人1,500人超を長期間追跡した調査でも明らかになっている。

 「糖尿病の人は、筋肉を減らさないように、食事でタンパク質を十分にとり、運動を習慣として行うことが重要です」と、専門家は指摘している。

運動不足による影響がもっとも大きいのは糖尿病

 運動不足が引き起こす死亡に対する影響がもっとも大きいのは、2型糖尿病であることが判明した。

 これは、保健指標や保健政策の立案のための戦略ツールでとして国際的に活用されている「世界疾病負担研究」(GBD)のデータを解析したもの。1990年~2019年の204の国や地域のデータが使われた。

 運動不足が健康にもたらす影響の大きさを示した指標は、2型糖尿病は全体で8.8%となり、もっとも大きかった。男性では8.1%、女性では9.4%となった。

 これは、大腸がんの5.6%や、虚血性心疾患の5.5%、虚血性脳卒中の4.8%を大きく上回っている。

 運動不足(身体活動量の低下)が原因で、世界では2019年に83万人が死亡しており、1990年に比べて84%増えているという。

食事や運動などの生活改善により糖尿病リスクは58%減少

 「運動不足は、平均余命の減少や、糖尿病・心血管疾患・がんなどの、多くの疾患の原因になることが示されました」と、研究者は述べている。

 「逆に、運動を習慣として行うようになり、運動不足を解消すれば、糖尿病・高血圧・脂質異常症を改善でき、心肺機能を高められ、筋肉や骨も健康になり、心血管疾患(CVD)のリスクを下げられます」としている。

 食事スタイルをより健康的にして、座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体を積極的に動かすようにし、ストレスにも対策することで、2型糖尿病のリスクは最大で58%減少でき、とくに60歳以上の高齢者では71%の予防効果を得られるとしている。

 また、運動不足に関連する10万人あたりの死亡リスクを疾患別にみると、死亡者数が多い疾患は、(1) 虚血性心疾患 6.5人、(2) 虚血性脳卒中 2.1人、(3) 2型糖尿病 1.6人(0.8~2.7)、(4) 大腸がん 0.8人、(5) 乳がん 0.1人となっている。

 運動をすることで、糖尿病の合併症でもある心血管疾患による死亡リスクは23%減少し、大腸がんがんなど、多くのがんのリスクを低下できる。運動により認知能力も向上し、認知症のリスクも軽減できる。不安感を減らし、睡眠の質も改善できる。

糖尿病の人が運動で筋肉を増やすと
合併症のリスクが大幅に減少

ウォーキングなどの運動を続けることが大切

 ウォーキングなどの運動を続けることで、心肺機能を高められ、筋肉や骨も健康になることが知られている。

 糖尿病とともに生きる人が、運動をすることで筋肉を増やすと、心臓病などのリスクが大幅に減少することが明らかになった。

 一方、筋肉量が少ないと、心臓病による死亡リスクは2倍に上昇するという。

 これは、ドイツのハンブルクで開催されている欧州糖尿病学会(EASD)年次総会で発表された、韓国のハルリム大学の研究グループによるもの。

 「サルコペニア」とは、加齢などにともない筋肉量と筋力が減少すること。高齢化すると、寝たきりの原因になる。

運動不足で筋肉が減ると危険性が高まる

 「筋肉が減ってしまうと、サルコペニアやフレイルの危険性が高まります。筋肉の減少は直接的に、病気による死亡リスクを高めることが示されました」と、同大学内科内分泌代謝科のジェ ミョン ユ氏は言う。

 「糖尿病の人は、筋肉を減らさないように、食事でタンパク質を十分にとり、運動を習慣として行うことが重要です」としている。

 研究グループは、米国健康栄養検査調査(NHANES)に参加した糖尿病の成人1,514人を平均9.3年間追跡したデータを解析した。

 その結果、骨格筋量指数が低く、筋肉量が減っている人は、全死因による死亡率と、心臓病と脳卒中などの心血管疾患による死亡率が高い傾向がみられた。

体重だけでなく脂肪や筋肉にも注意

 筋肉量の低い人は、筋肉量が正常の人に比べ、心血管疾患により死亡リスクが2倍高く、何らかの原因で死亡するリスクも44%高いことが判明した。

 「肥満に対策するために、体重測定を習慣として行っている人は多いのですが、体重だけでは体脂肪や筋肉の量については分からないので、注意が必要です」と、ユ氏は指摘する。

 「サルコペニアを予防・改善するために、体重だけでなく脂肪や筋肉といった体組成にも気を配る必要があります。現在は、生体電気インピーダンス法を用いた家庭用の体組成計が普及しており、体組成を継続的にチェックできるようになっています」としている。

Physical Inactivity (米国食品医薬品局 2022年9月8日)
Global disease burden attributed to low physical activity in 204 countries and territories from 1990 to 2019: Insights from the Global Burden of Disease 2019 Study (Biology of Sport 2023年3月)
Low muscle mass is associated with a two-fold risk of death from heart disease in people with diabetes (Diabetologia 2023年10月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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