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2023年10月02日

54歳で脳卒中を発症 妻の迅速な対応で回復 「脳卒中の兆候を見逃さないで」

HealthDay News

妻の迅速な対応で脳梗塞から完全に回復した郵便配達員――AHAニュース

 月曜日の午前5時15分、米国カリフォルニア州に住む男性、Levan Singletaryさんの目覚ましが鳴った。道路の清掃が始まる前に、路上に止めてある車を移動しなければいけない時間だった。

 アパートのドアを出て2階から階段を駆け下り、約200メートル歩いた所にあった車を移動。自宅に戻ってから、郵便局への出勤前にもう1時間、ひと眠りしようとベッドに入った。

 妻のAngelaさんは既に目を覚ましていたが、まだベッドの中にいた。「Van? 今日は休みじゃなかったの?」と彼女は尋ねた。彼女は夫のことをふだん、Vanと呼んでいる。

 Levanさんはふだん、月曜日は非番だったが、その日は出勤を指示されていることを妻に伝えた。彼は郵便配達員としての仕事以外に、市営公園などで週に4日、夜間の仕事もしていた。

 Angelaさんは、Levanさんが仕事を抱え過ぎていると感じ、「非番の日の出勤など断ればよかったのに」と語った。すると、LevanさんがAngelaさんへ腕を伸ばし、身を寄せようとしてきた。Angelaさんは、会話の内容と脈絡のない夫の行動を、奇妙なものに感じた。

 次の瞬間、Levanさんが何か言いたげに、言葉にならない声を発し、同時に体が痙攣した。「どうしたの?」との妻の問いに答えはなかった。

 「Van、大丈夫?」と重ねて問うと、夫は「大丈夫だよ」と答えた。確かにふだんと変わらない様子だったが、体が硬直しているような感じもした。

 そこでAngelaさんは、夫に「座ってみて?」と、ベッドに腰掛けるように指示した。Levanさんは、その動作ができなかった。

 Angelaさんは、自分の年老いた父親が以前、脳梗塞になった時のことを思い出した。Levanさんはまだ54歳で健康上の問題はなかったが、彼女の頭に浮かんだのは父親のその時の症状だった。

 「Van、あなたは脳梗塞を起こしているみたいよ」と彼女は夫に語った。Levanさん自身はいつも通りだと思ったが、数秒後に左半身が麻痺し始めた。

 Angelaさんはすぐに911番に通報し、「夫が脳梗塞を起こしているようだ」と状況を伝えた。

 救急要請後、彼女は夫を病院に連れて行く準備に大わらわとなった。パジャマ姿だったため、とりあえず靴下を履かせ、タオルで顔を拭きローションを塗って、ひげを剃った。

 「どうなるのかな?」という夫の質問には、「大丈夫よ」とだけ言葉を返した。一方でLevanさんは、「救急治療室で治療が終わったら、すぐに仕事に行けるように服を整えておいて」と妻に頼んだ。Angelaさんは、「今日は仕事には行かないことになると思うよ」と答えた。

 救急隊は15分かからずに到着し、約15分離れた脳卒中センターのある病院に彼を搬送した。病院到着後、血栓溶解薬による治療が行われた。

 血栓溶解薬は、脳梗塞発症から3~4.5時間以内であれば投与可能な薬剤で、この治療が行われた場合、良好な予後を期待できる。Levanさんの場合、発症から約1時間後の投与だった。

 変化はすぐに現れた。Angelaさんが病院に到着した時、Levanさんは既に起き上がって朝食を食べていた。

 医師たちは、Angelaさんの素早い的確な行動を称賛した。脳梗塞発症から治療開始までの時間が短かったことが、Levanさんの回復に大きな違いをもたらしたという。

 医師の説明によると、Levanさんの脳梗塞の原因は頸動脈の裂傷とのことで、いくつかの治療選択肢が示された。

 翌日、夫婦2人で保険会社からの連絡を待つあいだに、Levanさんに2度目の脳梗塞が発生した。そばにいたAngelaさんは、その兆候に気付き直ちに看護師を呼んだ。緊急手術が施行され、頸動脈の裂傷の修復とステントの留置が行われた。

 Levanさんはその後、経過観察のために数日間入院した。ただし、理学療法士や言語療法士が関与すべき障害は起こらず、同じ週の土曜日には自宅に戻っていた。

 翌日曜日、Levanさんは自宅周辺を歩き回り、月曜日の出勤に向けて体調を整えようとした。しかし、Angelaさんは「仕事のことは考えないで」と伝え、彼の母親も彼女の考えに同意した。

 5週間後、Levanさんは郵便配達の任務に復帰した。その日、自宅に帰った時刻は、以前の帰宅時刻よりも2時間半ほど遅かった。帰宅が遅れた理由は、休んでいる最中に職場の人々から寄せられていた応援メッセージを読み、そしてその人たち全員に感謝を述べていたためだった。

 この出来事以来、LevanさんとAngelaさんの生活にはいくつかの変化があった。

 まず、Levanさんの仕事内容が郵便配達から、ほかのスタッフをトレーニングするポジションに変わった。ただし、公園での夜間業務などはまだ続けている。

 「私は生来、一労働者として生きてきたが、これからは少し仕事のペースを落とすつもりだ」と彼は語っている。

 一方、Angelaさんは、2人の息子を育てた後は仕事を離れていたため、今後は夫への依存を減らす必要があると考えている。「私たちは結婚して33年、その5年前からともに暮らしてきたが、そのあいだ、主に彼の収入に頼っていた。これからは私も仕事に就いて家計を支えなければいけない」と彼女は話す。

 Levanさんは今、機会があるごとに脳卒中という疾患に対する認識向上と、「time is brain(時は脳なり)」というフレーズの周知啓発に努めている。

 250人の郵便職員の前で、それらの重要性を語ったこともある。「脳卒中の兆候が見られたら、それを軽視しないでほしい。私は、妻が迅速に行動してくれたおかげで、完全に回復することができた」。

[American Heart Association News 2023年8月21日]

American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved.
Photo Credit: Levan Singletaryさん(本人提供)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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