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2023年10月02日

糖尿病の人のメンタル不調を「7つの生活スタイル」で低減 ソーシャルメディアの有効活用もうつ病を軽減

 糖尿病とともに生きる人は、うつ病になりやすく、またうつ病の人も糖尿病になりやすいことが知られている。

 うつ病のリスクは、食事・運動・アルコール・社会的なつながりなど、7つの健康的な生活スタイルにより低減できることが、約29万人を9年間にわたり追跡した研究で明らかになった。

 「うつ病の遺伝的なリスクのある人も、健康的な生活スタイルを実行することで、リスクを減らすことができます」と、研究者は述べている。

 うつ病のリスクのある人のメンタルヘルスは、インターネットの、SNSやチャットなどのソーシャルメディアを利用した介入により改善できるという研究も発表された。

うつ病リスクは7つの健康的な生活スタイルにより低減できる

 糖尿病とともに生きる人は、うつ病になりやすく、またうつ病の人も糖尿病になりやすいという報告がある。うつ病になると、血糖値管理が難しくなり、糖尿病の合併症のリスクが高まる。うつ病を早期に発見し、適切にケアすることが重要となる。

 うつ病のリスクは、食事・運動・アルコール・社会的なつながりなど、7つの健康的な生活スタイルにより低減できることが、約29万人を9年間にわたり追跡した研究で明らかになった。

 研究は、英国のケンブリッジ大学や中国の復丹大学などの国際研究グループによるもの。

 「うつ病のリスクは、遺伝的な原因により上昇する場合もありますが、そうした人でも健康的な生活スタイルを実行することで、うつ病のリスクを減らすことができることが示されました」と、ケンブリッジ大学精神科のバーバラ サハキアン教授は述べている。

 世界保健機関(WHO)によると、世界の成人の20人に1人がうつ病を経験しており、公衆衛生に深刻な負担をもたらしている。うつ病の発症に影響を与える要因は複雑で、生物学的要因と生活スタイルによる要因が混在しているとみられている。

うつ病リスクは健康的な食事・運動・睡眠などの改善により減少

 研究グループは、英国バイオバンクに参加している約29万人を9年間にわたり追跡して調査した。うち1万3,000人がうつ病と判定された。

 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を対象に追跡して調査している大規模研究。健診結果やDNAサンプル、生活スタイルなどの関連を調べている。

 その結果、うつ病のリスクを低減するのに関連する、7つの健康的な生活スタイルを特定した。

 その7つの健康的な生活スタイルは以下の通り――。
アルコールを飲みすぎない 健康的な食事
運動・身体活動の習慣化 質の良い十分な睡眠
タバコを吸わない 座ったまま過ごす時間を短縮
社会的なつながりの活性化 

  • うつ病のリスクは、適度なアルコール摂取により11%、健康的な食事により6%、運動の習慣化により14%、タバコを吸わないことで20%、座ったまま過ごす時間を短縮することで13%、それぞれ減少した。
  • 良い睡眠を毎晩7〜9時間とることも重要で、単発のうつ病や治療抵抗性のうつ病を含み、うつ病のリスクを22%低減した。
  • 友人との交流などの社会的なつながりは、うつ病のリスクを18%減少し、再発性うつ病障害に対して効果的であることが示された。

うつ病の遺伝的リスクの高い人も健康的な生活スタイルにより改善

 健康的な生活スタイルの実行が中程度のグループでは、あまり実行していないグループに比べ、うつ病の発症リスクが41%低かった。実行が高程度のグループでは、うつ病リスクは57%低かった。

 研究グループは、参加者のDNA検査も行い、遺伝的リスクスコアを割り当てた。その結果、うつ病の遺伝的リスクスコアがもっとも低いグループは、もっとも高いグループに比べて、うつ病を発症する可能性が25%低かった。しかし、遺伝的な影響は、生活スタイルの改善による影響よりもはるかに小さいとしている。

 「うつ病の遺伝的リスクの高い人でも、健康的な生活スタイルを実行することで、うつ病のリスクを軽減できることも明らかになりました。遺伝的リスクに関係なく、健康的な生活スタイルが重要であることが示されました」と、サハキアン教授は述べている。

 「うつ病は、思春期や若年期という早い時期に発症することも多いので、健康的な生活スタイルの重要性とそれがメンタルヘルスに及ぼす影響について、早い時期から教育や保健指導を行う必要があります」と付け加えている。

ソーシャルメディアの有効活用もうつ病の軽減に効果的

 うつ病のリスクのある人のメンタルヘルスは、インターネットの、SNSやチャットなどのソーシャルメディアを利用した介入により改善できる可能性があることが、英国の‎ユニヴァーシティ カレッジ ロンドンによる別の研究で示された。

 研究グループは、ソーシャルメディアの使用とメンタルヘルスとの関連を調べた、2004年~2022年に発表された23件の研究を分析した。

 その結果、3分の1以上(39%)で、ソーシャルメディアの利用はメンタルヘルスの改善と関連していることが示された。とくにうつ病や気分の落ち込みの改善は顕著であり、研究の70%で介入後にうつ病の大幅な改善がみられた。うつ病の治療にもとづく介入はもっとも効果的で、83%でメンタルヘルスの改善がみられた。

 ただし、ソーシャル メディアに夢中になり、本来の仕事に集中できなくなり、日常生活の他の場面でも障害が出てくるのは防ぐ必要があるとしている。

 インターネットに依存することが、うつ病・不安・ストレス・孤独感など、メンタルヘルスの低下につながる可能性を指摘した研究も多い。

 「メンタルヘルスに問題を抱える人は増えており、ソーシャルメディアの利用者も増えています。ソーシャルメディアを上手に治療介入と連携させることは効果的である可能性があります」と、同大学疫学・健康研究所のルース プラケット氏は言う。

 「不安や気分の落ち込みを訴える人に対し、メンタルヘルスケアにもとづくアプローチをとり、社会的なつながりや交流を活性化するのに役立てられるソーシャルメディアを開発する必要があります」としている。

Healthy lifestyle can help prevent depression - and new research may explain why (ケンブリッジ大学 2023年9月11日)
The brain structure, immunometabolic and genetic mechanisms underlying the association between lifestyle and depression (Nature Mental Health 2023年9月11日)
Social media use interventions alleviate symptoms of depression (‎ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2023年8月11日)
The Impact of Social Media Use Interventions on Mental Well-Being: Systematic Review (Journal of Medical Internet Research 2023年8月11日)
Hooked on virtual social life. Problematic social media use and associations with mental distress and addictive disorders (PLOS ONE 2021年4月8日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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