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2023年08月21日

糖尿病が「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する方法は?

 世界の成人のほとんどが、生涯を通じて腰痛を一度は経験しており、半数は首の痛みも経験している。コロナ禍で腰痛に悩まされる人はさらに増えた。

 在宅ワークなどで長時間座り続けることが増えたり、運動量が減り、腰回りの筋力が低下していることや、ストレスや不安なども影響している。

 腰痛を予防・改善するために、運動を習慣として行うことが効果的と考えられている。どのような運動をすると、腰痛の緩和の効果をえられるかが分かってきた。

糖尿病のある人は腰痛や首の痛みのリスクが高い

 世界の成人のほとんどが、生涯を通じて腰痛を1度は経験しており、半数は首の痛みも経験している。世界保健機関(WHO)によると、腰痛は生活の質を低下させる病気やケガのトップ10に入っている。

 糖尿病のある人は、腰痛のリスクが35%高く、首の痛みのリスクは24%高いことが、オーストラリアのシドニー大学の研究で明らかになっている。

 「2型糖尿病と腰痛は、どちらも運動不足や肥満などと関連しています。腰痛や、首や背中の痛みなどに悩まされる糖尿病の人は増えています」と、同大学骨関節研究所のマヌエラ フェレイラ氏は言う。

 研究グループは、18歳以上を対象とした糖尿病と腰痛や背中・首の痛みとの関連を調べた8件の研究を解析した。その結果、糖尿病とともに生きる人は、糖尿病のない人に比べて、腰痛を経験する可能性が 1.35倍、首の痛みは1.24倍、それぞれ高いことが示された。

 「糖尿病と腰痛とのあいだの、直接的な因果関係についてはよく分かっていませんが、糖尿病は腰痛や首、脊椎の痛みと関連しているとみられます」と、フェレイラ氏は指摘している。

 「糖尿病を治療することで、腰痛の発生を減らすことができたり、その逆に腰痛を防ぐことで、糖尿病を治療も改善できることが期待されます」としている。

肥満やメタボの人も腰痛のリスクが高い

 腰痛は肥満とも関連が深い。体重の重い人ほど腰痛の発症率が高いことが、ニューヨーク州立大学医療センターが100万人以上の米国人を対象とした別の研究で明らかになっている。

 調査では、腰や関節などの痛みを経験した割合は、低体重や標準体重の人に比べて、過体重の人は20%高く、肥満1度の人は68%、肥満2度の人は136%、肥満3度の人は254%、それぞれ高いことが示された。調査に回答した人の63%は肥満か過体重だった。

 肥満に加えてメタボリックシンドロームも、慢性腰痛などと生理学的に関連していることが分かった。メタボの構成要素である[腹部肥満・高血圧・高中性脂肪・高LDLコレステロール、空腹時血糖値の上昇]のうち、とくに腹部肥満は過去3ヵ月の腰痛の強い予測因子であることが示された。

ヨガやピラティスから背中や腰を強くする運動を考案

 腰痛を予防・改善するために、運動を習慣として行うことが効果的と考えられている。どのような運動をすると、腰痛の緩和の効果をえられるかを探る研究も世界中で行われている。

 とくにコロナ禍で、外出を自粛したり、在宅勤務を余儀なくされた人が増え、腰痛の発症が増えているという報告がある。

 そこでリトアニアのカウナス工科大学は、ヨガやピラティスの方法論を研究し、脊椎を支える背中から腰の筋肉を強化するエクササイズを考案した。

 この運動プログラムは、筋力と持久力を鍛える静的エクササイズと動的エクササイズで構成されており、室内でも10分~20分でできるという。

 研究グループがこの運動を、70人の女性ボランティアに週に2回、20週間続けてもらったところ、腰部の筋肉の強化と腰痛の解消に効果的であることが示された。

 「長期にわたるストレスや神経損傷によって引き起こされる慢性腰痛は、感情にも影響をもたらし、不安や気分障害、さらにはうつ病などを引き起こし、さらには運動不足を促し、肥満や2型糖尿病などにも影響します」と、同大学社会科学部のイリーナ クリジエン氏は述べている。

背中から腰の筋肉を強くするエクササイズ
出典:カウナス工科大学、2020年

ヨガやストレッチを取り入れた運動で腰痛を改善

 ヨガ・太極拳・気功も、腰痛の治療に効果的であり、痛みやうつ、不安などの精神的苦痛を軽減し、痛みに関連した障害も減らすことが、米国のフロリダ アトランティック大学の別の研究で明らかになっている。

 研究グループは、米国で最大規模のヨガのランダム化比較試験を実施。参加した228人の成人は中程度の腰痛を抱えていた。

 ヨガやストレッチ体操を取り入れた運動クラスに参加した人は、指導者の支援のもと、呼吸や瞑想を取り入れたヨガや、ハムストリングス・股関節屈筋・回旋筋など、15種類のストレッチエクササイズに、週に75分間、12週間取り組んだ。自宅でも毎日20分の運動をすることが奨励された。

 その結果、ヨガやストレッチを行ったことで、とくに背中の筋肉や柔軟性が向上し、慢性的な腰痛は緩和された。鎮痛剤などによる治療を受けていた人も服用量が減り、その臨床的な効果は6ヵ月間続いた。

 「今回の研究により、ヨガもストレッチも、腰痛を改善するための、安全で効果的な身体活動となることが示されました」と、同大学グループヘルス研究所の研究員であるカレン シャーマン氏は言う。

 「ただし、腰痛の治療を目的としている場合は、初心者向けの運動クラスに参加し、参加者の個々の身体的制限に合わせて調整ができる専門のインストラクターの指導を受けることをお勧めします」としている。

腰痛を緩和するための10分でできるストレッチ
Mady Morrisonが公開しているビデオ

Study of One Million Americans Shows Obesity and Pain Linked (ニューヨーク州立大学 ストーニーブルック校 2012年1月26日)
Obesity and Pain Are Associated in the United States (Obesity 2012年9月6日)
Study links diabetes and back pain (シドニー大学 2019年2月22日)
Is there an association between diabetes and neck and back pain? A systematic review with meta-analyses (PLOS ONE 2019年2月21日)
Keeping lower back pain at bay: exercises designed by Lithuanian researchers are 3 times more efficient than usual (2020年3月23日 カウナス工科大学)
Effect of different exercise programs on non-specific chronic low back pain and disability in people who perform sedentary work (Clinical Biomechanics 2020年1月5日)
Oh My Aching Back: Do Yoga, Tai Chi or Qigong Help? (フロリダ アトランティック大学 2020年2月6日)
A Narrative Review of Movement-Based Mind-Body Interventions Effects of Yoga, Tai Chi, and Qigong for Back Pain Patients (Holistic Nursing Practice 2020年2月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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