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2023年07月19日

「良い睡眠」で糖尿病を改善 深い眠りからでる脳波が血糖値の上昇を防ぐ 睡眠を改善する5つの方法

 夜に質の良い睡眠をとれていると、血糖値が下がりやすくなり、糖尿病の管理が改善するメカニズムを解明したと、米カリフォルニア大学が発表した。

 夜間に深い睡眠をとれているときにあらわれる脳波が、昼間の体のインスリンに対する感受性を高めているという。

 「睡眠を改善する5つの方法」も紹介されている。

深い睡眠が糖尿病を改善するメカニズムを解明

 質の良い睡眠をとれていると、健康増進につながることが多くの研究で示されている。逆に、良い睡眠をとれないでいると、糖尿病リスクは上昇する。

 米カリフォルニア大学が、夜の深い睡眠によりえられる脳波が、インスリンに対する感受性を改善するメカニズムを解明したと発表した。これまで、糖尿病の管理を改善するのになぜ良い睡眠が必要なのか、その仕組みはよく分かっていなかった。

 「深い睡眠をとれていると、その翌日は血糖管理が良好であることを、多くの方が経験していると思います」と、同大学バークレー校で神経科学・心理学を研究しているマシュー ウォーカー教授は言う。

 「今回の研究で、夜間に深い睡眠をとれているときにあらわれる脳波が、体のインスリンに対する感受性を調節する仕組みに影響する、潜在的なメカニズムを明らかにしました」としている。

深い睡眠時にあらわれる脳波が血糖値の上昇を防ぐ

 研究グループは今回、600人のボランティアの睡眠データを解析し、深い睡眠時にあらわれる脳波により、翌日の血糖管理を予測できることを解明した。

 「深い睡眠と同期した脳波は、ドミノ倒しの最初のコマを弾く指のように働き、脳から心臓まで、血糖値の調節に影響する連鎖反応を改善しています」と、ウォーカー教授は説明する。

 「今回の研究で、ノンレム睡眠時の脳波にみられる睡眠紡錘波と徐波と呼ばれる、2つの脳波の組み合わせが、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する体の感受性に影響し、結果的に血糖値の管理を改善するのに役立っていることが判明しました」としている。

 睡眠時の脳波で判別すると、ヒトの睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠という、質の異なる2つの睡眠段階に分類される。一般的に、レム睡眠では脳は活発に働いているのに対し、ノンレム睡眠では脳は休息し、脳や肉体の疲労回復のために重要とみられている。

 ノンレム睡眠は、睡眠の深さ(脳波の活動性)によって4段階に分けられる。睡眠紡錘波はその前半で、徐波睡眠は後半で活発になる。

関連情報

深い睡眠でえられる脳波がインスリンに対する感受性を高める

 深い睡眠でえられるこの2つの脳波の結合は、体内に信号を送り、自律神経を調節し、翌日の血糖値の調節にも影響しているという。

 睡眠と大きな関わりがあるのが自律神経だ。自律神経には、体が活動しているときや緊張したときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経がある。

 眠気を感じているときに、副交感神経が優位の状態に切り替わると、リラックして血圧や脈拍数が下がり、呼吸もゆるやかなり、自然に眠りにつきやすくなる。

 一方で、眠ろうとするときに緊張や不安、興奮などがあると、交感神経が優位になり、体がリラックスした状態に切り替わらないため、深い眠りをえられなくなる。

 夜の深い睡眠によりえられる脳波は、副交感神経系にスイッチを入れ、血液からブドウ糖を吸収するよう細胞に指示し、インスリンに対する体の感受性を高め、血糖値の上昇を防いでいると考えられる。

 「夜の深い睡眠でえられる脳波は、翌日の昼間の神経系の調整に影響し、インスリンに対する体の感受性を高め、血糖管理を良くするのに役立っています」と、ウォーカー教授は説明している。

睡眠を見直すと糖尿病が改善

 睡眠時の脳波は、翌日の血糖値を高感度に示すマーカーとして使用でき、従来の睡眠指標よりも役に立つ可能性があるという。

 研究グループは、別の1,900人のボランティアのデータを解析し、睡眠時の脳波により同じ効果を再現できることを確かめた。

 「睡眠が唯一の特効薬になるわけではないにしても、深い睡眠により脳波を改善することは、血糖値をより改善するのに有用である可能性があります」と、ウォーカー教授は言う。

 医師の処方された薬を指示通りに服用し、食事や運動などの生活スタイルを改善しても、血糖値の管理がなかなか改善しないという人は、推奨される生活スタイルの改善として、睡眠を見直すことが効果的な方法になりえるという。

 「良い睡眠は、痛みをともなわず修正ができるものであり、糖尿病や高血糖を改善する助けになります」としている。

睡眠を改善する5つの方法

 睡眠障害や社会的時差ぼけなど、睡眠の質を下げる要因について研究しているピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると睡眠を改善しやすい。

快眠はまずは規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻に就眠・起床をすると効果的だ。

夜遅い時間に食事しない

 体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。

寝室の環境を調整する

 夏場は寝室をなるべく涼しくする。エアコンを利用して、25℃くらいまで気温を下げる。エアコンをつけると寒さを感じる場合は、湿度を50%~60%にすると、体感温度を下げられる。

 室内を静かにして、気を散らすものをなくす。カーテンやブラインドは、遮光性や遮熱性のあるものを使い、室内を薄暗くする。できれば吸水・速乾性のある快適な枕や寝具を使い、ベッドやマットレスも通気性のあるものに変える。

適度な運動が良い睡眠をもたらす

 日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという報告がある。ウォーキングなどの活発な運動を、1日30分行うことを目標にする。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、糖尿病や高血圧、肥満などの改善・予防につながる。

光で体内時計を整える

 朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。

 反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。

 スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。寝る前にはスマートフォンなどを操作しないようにする。

New research finds deep-sleep brain waves predict blood sugar control (カリフォルニア大学バークレー校 2023年7月7日)
Coordinated human sleeping brainwaves map peripheral body glucose homeostasis (Cell Reports Medicine 2023年7月7日)
睡眠・行動神経科学センター (ピッツバーグ大学)
9 tips for better sleep, from the people who keep Pitt athletes well rested (ピッツバーグ大学 2023年4月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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