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2023年06月22日

食事スタイルを「朝型」にして糖尿病を改善 朝食を早い時間に食べると血糖値が低下 夜のドカ食いはなぜ悪い?

 食事のタイミングを1日のなるべく早い時間帯に変えて、食事スタイルを「朝型」にすると、糖尿病や肥満のリスクを軽減できることが、さまざまな研究で示されている。

 逆に、夜遅い時間帯に食べると、体重の増加や脂肪の代謝の低下が起こりやすくなる。

 血糖値を上げやすい高カロリーの食品を食べるのを、昼間に集中するように調整し、朝食を食べはじめる時間を午前8時30分より前にすると、体の代謝が良くなるという研究も発表されている。

1日の早い時間帯に集中して食事をすると糖尿病が改善

 米ニューヨーク大学ランゴン医療センターによる新しい研究で、食事のタイミングを1日のなるべく早い時間帯に移すことで、2型糖尿病のリスクを軽減できることが示された。研究成果は、米国内分泌学会年次総会で発表された。

 「食事のタイミングを1日の早い時間帯に変え、夜遅くには食べないようにすると、体重増加が少なくなり、血糖値の変動が改善し、血糖値が高くなっている時間は減ることが示されました」と、同大学内分泌糖尿病代謝科のジョアン ブルーノ氏は言う。

 「食事スタイルを見直して、朝型にすることで、2型糖尿病やその予備群の人は、糖尿病リスクを減らすことを期待できます」としている。

 研究グループは、朝起きてから8時間の時間帯に、食事を集中してとるスタイルを設定し、糖尿病予備群や肥満と判定された10人の参加者に1週間取り組んでもらった。

 1日に早い時間帯に集中して食事をする場合と、午後4時以降の遅い時間帯に集中して食事をする場合を比べた結果、食事のタイミングを朝型にすることで、血糖値の変動幅が少なくなり、血糖値が140mg/dLを超えた時間が減少し、体重も安定することが明らかになった。

 「糖尿病を予防・改善するために、1日の食事をする時間を調整することが効果的である可能性があります。1日のなるべく早い時間帯に食べるように、食事のタイミングを変えることは、すぐに取り組める糖尿病対策になります」と、同病院の内分泌代謝科専門医であるホセ アレマン氏は言う。

夜遅くに食べすぎると糖尿病や肥満が悪化

 逆に、夜遅い時間帯に食事をすると、体重の増加や脂肪の代謝の低下が起こりやすくなることが、ペンシルバニア大学医学部による別の研究で確かめられている。研究の詳細は、米国睡眠関係学会連合集会で発表された。

 研究では、標準体重の成人9人を対象に、午前8時~午後7時に3回の食事と2回の間食をとる場合と、食事のタイミングを遅らせて、正午から3回の食事と2回の間食をとる場合に分けて比較した。

 その結果、食事のタイミングを遅らせて、遅い時間帯に食事をとった場合は、体重・インスリン・コレステロールの値がそれぞれ上昇し、脂肪代謝が悪くなった。

 夜型の食事スタイルにより、心臓病や糖尿病などにも影響する食欲ホルモンであるグレリンの値にも悪影響があらわれ、食べすぎになりやすいことが分かった。

 「とくに睡眠不足の人は、朝起きる時間が遅くなり、食事スタイルが夜型になりやすくなります。夜遅くの食事が原因で、体重や代謝に悪影響がもたらされるおそれがあります」と、同大学で睡眠と時間生物学を研究しているナムニ ゴエル氏は言う。

高カロリーの食事は昼間に集中させる 「体内時計」に注目

 食物や栄養は、食事をする時間帯により、その効果や影響が大きく変わるという、「時間栄養学」という研究が注目されている。

 体には、おおよそ1日の周期で働く「体内時計」がそなわっており、食物や栄養を摂取する時間帯により、調整されていると考えられている。

 英国のサリー大学は、食事時間を1日の早い時間または遅い時間に変更することで、2型糖尿病への影響はどう変わるかを調べるため、大規模な研究を実施している。

 一般的に、朝から昼頃までは、心身が活性化してエネルギー消費が大きくなり、栄養の吸収も活発になる。

 とくにご飯やパン、ドーナツ、菓子パンなどの、炭水化物(糖質)を多く含む食品や、カロリーの高い食品を食べるのを、昼間の明るい時間帯に集中するように調整すると、体の代謝が良くなるとみられている。

 一方、夜遅くにたくさん食べると、エネルギーの多くが脂肪として体に蓄積されやすいので、太りやすくなるという。

朝食を午前8時30分までに食べている人は血糖値が低い

 食事が夜型になると、体重が増加しやすくなり、インスリン・血糖・コレステロール・中性脂肪などの値も高くなり、糖尿病リスクが上昇しやすいことは、米ノースウェスタン大学による別の研究でも示されている。研究は、米国内分泌学会の年次学術集会で発表された。

 とくに夜遅くに食事をすると食欲が亢進しやすく、睡眠時間が短くなりやすいことも明らかになった。逆に、早い時間帯に集中的に食事をすると、代謝の健康は改善しやすいという。

 「1日の早い時間に朝食を食べる食事スタイルをもつ人は、血糖値が低く、インスリン抵抗性も低い傾向がみられました。今後の食事指導に役立てられる情報です」と、同大学の主任研究員であるマリアム アリ氏は述べている。

 インスリン抵抗性は、膵臓のβ細胞から分泌される血糖値を調整するホルモンであるインスリンに対して、体が十分に反応できなくなり、血液中のブドウ糖が細胞にとりこまれる能力が低下した状態。糖尿病だけでなく、肥満やメタボの原因にもなる。

 研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した1万575人の成人のデータを解析し、毎日の食事の開始時間によって6つのグループに分けて比較した。

 その結果、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性がもっとも少なかったのは、朝食を食べはじめる時間が午前8時30分より前のグループだったという。

朝食も大切 朝食で「体内時計」をリセット

 朝食をきちんととることも重要だ。「体内時計」は、朝起きて食べることでリセットされる。朝食は遅くても起床後1時間以内にとることを勧めている。

 「体内時計について、まだ解明されていないこともありますが、食事時間を調整することで、2型糖尿病の改善や体重減少などのメリットをえられる可能性があります」と、サリー大学で時間生物学や生理学を研究しているジョナサン ジョンストン教授は言う。

 「時間栄養学の研究は活発になっており、研究が進めば、1人ひとりに合わせて適切化した食事スタイルを提案できるようになると期待しています」としている。

Study Finds That Eating Meals Earlier Improves Metabolic Health (ニューヨーク大学ランゴン医療センター 2023年6月15日)
Timing Meals Later at Night Can Cause Weight Gain and Impair Fat Metabolism (ペンシルバニア大学医学部 2017年6月2日)
Caloric and Macronutrient Intake and Meal Timing Responses to Repeated Sleep Restriction Exposures Separated by Varying Intervening Recovery Nights in Healthy Adults (Nutrients 2020年9月3日)
Altering mealtimes could prevent development of Type 2 diabetes - new study set to investigate (サリー大学 2021年1月15日)
Early versus late time-restricted feeding in adults at increased risk of developing type 2 diabetes: Is there an optimal time to eat for metabolic health? (Nutrition Bulletin 2020年12月25日)
Eating before 8:30 a.m. could reduce risk factors for type 2 diabetes (米国内分泌学会 2021年3月18日)
Associations between Timing and Duration of Eating and Glucose Metabolism: A Nationally Representative Study in the U.S. (Nutrients 2023年2月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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