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2023年06月12日
【新型コロナ】マスク着用やワクチン接種はいつまで必要? 糖尿病の人は重症化や死亡リスクが高い
HealthDay News
Photo courtesy: Inna Polekhina/iStock via Getty Images
新型コロナの緊急事態は過ぎたが依然として対策意識の維持・向上を――AHAニュース
世界保健機関(WHO)と米国政府の公式見解によると、新型コロナはもはや緊急事態には当たらないという。
これは大きな変化ではあるが、誰もがパンデミックを意に介さずに行動できるようになったわけではないと、多くの専門家が指摘している。
その1人、米ミシガン大学のPreeti Malani氏は、「誰にとってもリスクがなくなったわけではない。ただ、3年以上前に緊急事態宣言が発出されたときとは、大きく状況が変化した」と語る。
WHOが2020年1月30日に初めて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した時点で、新型コロナによる死亡者はわずか213人しか判明していなかった。しかしその後、その数は世界中で700万人近くに増加した。
WHOは今年5月5日に、緊急事態の終了を宣言し、5月11日には米国で公衆衛生上の緊急事態宣言が解除された。これにともない、新型コロナのモニタリング体制や検査・ワクチン接種費用の公費負担も終了しつつある。
とはいえ、新型コロナウイルスが消え去ったわけではなく、WHOのMaria Van Kerkhove氏も、「緊急事態は終了したが新型コロナの流行はまだ終わっていない」と、警戒の継続を呼びかけている。
米疾病対策センター(CDC)は、今年5月13日までの1週間で、米国内で281人が新型コロナで死亡し、9,204人が入院したと報告している。週当たりの死亡者数が約2万6,000人だったピーク時から著減しているがゼロではない。
一部の人々は依然、新型コロナ重症化や死亡リスクが高い。CDCによれば、高齢者や心臓病、糖尿病、肥満、慢性腎臓病などの基礎疾患を抱えている人、および現喫煙者・元喫煙者がそれに該当するという。
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米ヒューストン・メソジスト・デベイキー心臓血管センターのSafi U. Khan氏は、「健康を守るためにすべきことのなかで、ワクチン接種はリストの最上位にある」と話す。
CDCは、生後6ヵ月以上の全ての人に対して新型コロナのワクチン接種を推奨している。これまでに米国人口の81%が少なくとも1回は接種を受けているが、最新の2価ワクチンのブースター接種を受けた人はわずか17%だという。
ワクチン接種以外にも、「屋内の混雑した空間でのマスク着用、手指衛生の実践は良い習慣であり、継続すべきだ」とKhan氏は語る。
新型コロナ流行の動向監視も忘れてはならない。Malani氏は、「CDCはモニタリングを放棄したわけではないが、緊急事態の終了によりデータ収集方法が変化し、以前より報告が遅れることになるだろう」と話す。
ただ、Malani氏自身、「以前は毎日、検査陽性率などの指標を確認していたが、いまはもう見ることはない」と述べ、それらのデータの価値が時とともに低下しているとしている。
一方で、同氏はいま、下水中のウイルスレベルのモニタリングデータに注目しており、「多くの地域社会では依然として下水の監視が続けられていて、医療現場からの報告で症例数の増加が明らかになる前に、感染拡大を把握できるだろう」とのことだ。
Malani氏は、「ワクチン接種や新型コロナ感染によって免疫を有している人が増えたことを考えれば、人々がパンデミックの初期の頃ほど厳格に警戒する必要はないが、注意は必要であり、『前に進め。ただし、賢く行動せよ』というメッセージが適切ではないか」と語っている。
たとえば、混雑した空間で誰かが咳をした時に、すぐにマスクを着けられるように常時携帯するといった対策を提案している。またこのような対策とともに、外出を控え続けることによって社会的孤立の状態に陥り、健康上の懸念をかえって高めたりしないよう注意を呼び掛けている。
同氏によると、孤独感を訴える高齢者の割合は、いまだパンデミック以前の水準より高いという。
Malani氏はまた、新型コロナの感染リスクに配慮して人生の大事なイベントを取りやめるという判断は、今後は慎重に行うように呼び掛けている。
「誰もこの病気を永遠に避け続けることはできないし、家族との特別な行事、卒業式、結婚式などの重要なライフイベントを、感染リスクがあるから中止するという判断は適切でなく、そのときの状況によって判断すべき」と語る。
そして、「新型コロナのリスクは依然として残っているが、リスクをコントロールしながら人生に重要なことを行えるようにはなった。これは3年前にはできなかったことだ」と付け足している。
一方、Khan氏は、「新型コロナのパンデミックは、いくつかの重要な教訓をもたらした」と総括している。
具体的には、「第1に、ワクチン接種や定期的な医師の診察など、予防医療の重要性を明確に示したことであり、第2に、健康的なライフスタイルの重要性も以前に増して明確に示された。体に良い食事、習慣的な運動、十分な睡眠は全て、免疫システムの良好な状態の維持に役立つ」としている。
そのうえで同氏は、「しかし、おそらくもっとも強調されるべき点は、公衆衛生対策の重要性が再確認されたことだ。マスクの着用、ワクチン接種などが自分自身の安全を守るだけでなく、周囲の人々の安全にもつながることが明確になった」と述べている。
[American Heart Association News 2023年5月25日]
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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