ウイルス感染で糖尿病リスクが上昇

　新型コロナの経験者は、新型コロナと診断されたことのない人に比べて、診断後に1型あるいは2型糖尿病を発症するリスクが66%高いことが、米ペンシルベニア州立大学医学部による過去最大級の研究で明らかになった。

　研究グループは、400万人超の新型コロナ患者と、新型コロナと診断されたことのない4,300万人超の対照群のデータを最終的に分析した。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。

　過去の研究でも、新型コロナの経験者で糖尿病の発生率の増加につながる可能性が示唆されている。ウイルスがインスリンを産生する膵β細胞の死を誘発し、インスリンレベルに影響をもたらすことが主要な原因と考えられているが、一般集団と比べた研究は少なく、詳しくは分かっていなかった。

　研究グループによると、新型コロナを引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2は、膵臓・小腸・腎臓にみられる細胞を含む、多くの臓器や組織の表面にある酵素受容体に結合する。

　同大学公衆衛生学部のパディ セントンゴ氏は、「新型コロナが糖尿病を引き起こすと断定するのには、現時点ではエビデンスが不足しています。この関連性を説明する生物学的メカニズムについてさらに研究が必要です」としながらも、「ムンプスウイルス、ロタウイルス、サイトメガロウイルスなどが糖尿病の発症に関連することは分かっており、SARS-CoV-2も同様に体内の複数のシステムに影響をもたらしている可能性が考えられます」としている。

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新型コロナ経験者は糖尿病にも注意をはらう必要が

　研究グループは今回、新型コロナと糖尿病の関連性についての過去最大級のメタ分析、あるいは既存の研究の包括的なレビューを実施した。

　2019年12月～2022年10月中旬に公表された850件超の研究から、8件の研究を選択。計427万747人の新型コロナ患者と、新型コロナと診断されたことのない計4,320万3,759人の対照群のデータを最終的に分析した。

　その結果、新型コロナ経験者が糖尿病を発症するリスクは、新型コロナウイルスと診断されたことのない人に比べ、1.66倍に上昇することを明らかにした。これは、新型コロナ経験者は、新たに糖尿病を発症するリスクが66%高いことを示している。

　「現在までに、世界の6億6,000万人以上が新型コロナに対し陽性反応を示しています。新型コロナを経験した人と、医療従事者は、糖尿病に対してとくに注意をはらうことが重要です」と、同学部のジブリル バ氏は言う。

　なお、今回の研究の対象となった対照群に含まれる一部の人々は検査を受けていないため、新型コロナに感染していたが無症状の軽度の状態であったため、分類に誤りが含まれる可能性を指摘している。そのため、新型コロナと糖尿病の関連性の強さが過小評価されているおそれがあるという。

　また、ワクチン接種を受けていることが転帰にどのように影響をもたらすかについてもよく分かっていない。今回の研究では、そうしたデータを入手できなかったとしている。

　「公衆衛生上の予防・管理を効果的に推進する戦略を開発するために、今後の研究では、新たに糖尿病を発症した人の、健康・社会的要因を調べる必要があります」と、研究グループでは述べている。

　さらには、「糖尿病リスクの上昇を説明する生物学的原因についても解明する必要があります。ゲノミクスデータを用いて、糖尿病を発症するリスクのもっとも高い新型コロナ経験者を早期に特定できれば、効果的な対策を行えるようになります」としている。

COVID-19 survivors may have higher risk of developing diabetes (ペンシルベニア州立大学 2023年2月13日)
Association of COVID-19 with diabetes: a systematic review and meta-analysis (Scientific Reports 2022年11月23日)