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2023年02月24日

運動が苦手な糖尿病の人も「エクサゲーム」なら楽しく続けられる 家庭用ゲーム機に運動を取り入れ

 運動をする習慣のない人が、新たに運動をはじめて、続けるのは簡単なことではない。

 しかし、多くの家庭で普及しているゲーム機に運動の要素を取り入れた「エクサゲーム」であれば、運動に気軽に取り組め、楽しく続けられる可能性がある。

 エクサゲームに取り組むことで、体力が向上し、運動に対して意欲的になれるという研究が発表された。座ったまま過ごす時間を減らすのにも効果的だという。

エクササイズとゲームを組合せた「エクサゲーム」

 これまであまり運動をしてこなかった人にとって、新たに運動をはじめ、続けるのは簡単なことではない。また、運動が楽しくなるのに、かなりの時間がかかるかもしれない。運動ジムやプールなどに通うと費用もかかる。

 そうした人も、家庭用ゲーム機に運動や身体活動の要素を取り入れた「エクサゲーム(Exergame)」であれは、運動に気軽に取り組める可能性がある。

 エクサゲームとは、エクササイズとゲームを合わせた造語。10年以上前に「バランスWiiボード」や「ダンスダンスレボリューション」など、自分の体を使って遊べるゲームが人気を集めて以来、ゲーム機器やコンピュータを用して、運動や身体活動にゲームの要素を取り入れる試みは注目されている。

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WiiFitnessActiveが公開しているビデオ

「エクサゲーム」で座ったままの時間を減らせる

 市販されている「PlayStation」「Xbox」「Nintendo Switch」といった家庭用ゲーム機のほとんどに、アクティブなゲームのオプションが用意されている。

 これまでの研究でも、とくに座ったまま過ごす時間が長い人は、ゲーム機を使って運動をすることで、身体的なメリットを得られる可能性があることが示されている。

 米国のジョージア大学の研究によると、アクティブなエクサゲームは、運動に新たに取り組もうとしている人々を助けるのに役立つ可能性がある。エクサゲームは多様化しており、いまでは誰でも自分の関心に合ったゲームをみつけることができるという。

「エクサゲーム」なら運動を楽しく続けられる

 同大学の研究には、運動ガイドラインで推奨されている、1週間に150分の運動・身体活動を行うという基準を満たしていない、運動不足の18~24歳の男女55人が参加した。

 その結果、エクサゲームに取り組んだ群は、運動をしている時間をより楽しく過ごせたことが示された。さらには運動ルーチンに対して自分でコントロールできているという自信が高まり、運動を続けることに意欲的になり、他の運動に対してもよりオープンな気持ちになっている傾向が示された。

 一方、従来の運動クラスに割り当てられた群は、エクサゲームの群よりも活動量は多かったが、運動の継続に対するプレッシャーや義務感、ストレスなどを感じていることが示された。

 運動というと、ジョギングやランニング、筋力トレーニングなどを思い浮かべる人が多い。しかし、こうした運動を自分で行うのを魅力的に感じられない人も多い。そうした人も、アクティブなゲームの要素を取り入れたプログラムであれば、楽しく取り組めるようになる可能性がある。

 「たとえば運動ジムで運動に取り組むことにプレッシャーや退屈を感じる人でも、遊びの要素を含んだ運動であれば、迷わず足を踏み込めるようになります」と、同大学でキネシオロジーを研究しているホン ヨンジュ氏は言う。

EA Sports Active 2 - Real Fitness Trailer
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「エクサゲーム」でバランス能力を高める

 認知症の発症・重症化を予防するために、その前段階である「軽度認知障害(MCI)」の段階から早期介入を始めることが重要とされるている。

 認知症やMCIの患者の多くは、初期の段階で、歩行異常や転びやすいなど、バランス障害をともなうことが知られている。

 米国のユニオン大学の研究によると、エクサゲームを活用すれば、MCIの進行を抑制したり、遅らせることができる可能性がある。

 「アクティビティとインタラクションの両方の要素を取り入れたビデオゲームに取り組んだ高齢者は、従来の運動のみに頼る高齢者に比べ、認知障害を予防するためにより利点を得られることが分かりました」と、同大学心理学部のケイ アンダーソン-ハンリー氏は言う。

認知力と身体力を高めて認知症を予防

 MCIは55歳以上になると増えはじめ、米国アルツハイマー病協会によると、65歳までに15~20%でMCIの兆候がみられるという。この研究は、米国国立老化研究所の支援を得て行われた。

 研究には、100人以上の高齢者が登録され、うち平均年齢が78歳の14人に、エクサゲームに6ヵ月取り組んでもらった。

 その結果、エクサゲームに取り組んだ高齢者は、マルチタスクと意思決定を制御する実行機能が大幅に向上した。この能力は、その後の人生で自立した生活を維持するために重要だという。

アクティブなテレビゲームで肥満や2型糖尿病を予防
オーストラリアのクイーンズランド大学が公開しているビデオ

糖尿病の人がエクサゲームに取り組むと?

 スイスのバーゼル大学スポーツ運動健康学部は、座ったままの時間の長い、45~70歳の過体重や肥満の2型糖尿病患者12人に、エクサゲームに取り組んでもらう試験を行った。

 運動を習慣として行うことは、血糖コントロールを改善し、心血管疾患などの合併症のリスクを減らすために重要だ。すでに糖尿病の治療を受けている患者でも、運動をしていないと、心血管疾患などの合併症は56%の確率で起こるとしている。

 とくに働き盛りで毎日忙しく過ごしている患者は、運動に取り組んで体力を向上させることに意欲的になりにくい。

 しかし、ボクシング・障害物コース・サイクリング・体操などのエクサゲームに取り組んだ人は、心肺運動テストの結果が向上し、トレッドミルを使った従来の運動療法と同等の体力向上を得られた。

 エクサゲームに取り組むことは、座ったまま過ごす時間を減らすために効果的とした報告も発表されている。通信機能を使って仲間を作ったり、交流ができるゲームも作られているという。

 「ゲーム機を利用した運動であれば、2型糖尿病患者のための運動ガイドラインに合わせた運動強度を提供できる可能性があります。運動の強度を患者さんが自分で調整でき、体力に合わせた効果的なトレーニングを提供できるゲームもあります」と、研究者は述べている。

Active Video Games Provide Alternative Workout (ジョージア大学 2022年3月22日)
Short- and longer-term psychological and behavioral effects of exergaming and traditional aerobic training: A randomized controlled trial (International Journal of Sport and Exercise Psychology 2022年1月17日)
Move it and use it: Exergaming may help those at risk of Alzheimer's or related dementias (ユニオン大学 2018年5月14日)
The Aerobic and Cognitive Exercise Study (ACES) for Community-Dwelling Older Adults With or At-Risk for Mild Cognitive Impairment (MCI): Neuropsychological, Neurobiological and Neuroimaging Outcomes of a Randomized Clinical Trial (Frontiers in Aging Neuroscience 2018年5月4日)
Gaming Against Heart Disease in Diabetic Patients (バーゼル大学 2015年11月13日)
Cardiorespiratory Exertion While Playing Video Game Exercises in Elderly Individuals With Type 2 Diabetes (Clinical Journal of Sport Medicine 2016年7月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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