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2023年02月21日

「孤独」は糖尿病リスクも高める コロナ禍で孤独な人が増えている こうして解消

 日本を含み世界中で、新型コロナの感染が拡大した影響で、孤独を感じている人は増えている。孤独は、うつ病の発症にも影響する。

 50歳以上の成人を対象とした調査で、孤独感のある人は、2型糖尿病のリスクが1.4倍以上に高まることも示されている。

 一方、座ったまま過ごす時間を減らし、運動をして体を活発に動かすようにすると、孤独を感じにくくなるという報告もある。

 他人に利益となるようにはかったり、他者や社会とのつながりや交流を充実させることで、糖尿病リスクも減少できる可能性がある。

孤独によりうつ病リスクが4~5倍に上昇

 日本を含み世界中で、新型コロナの感染が拡大した影響で、孤独を感じている人は増えている。孤独は、うつ病の発症にも影響する。

 コロナ禍で、疎外感・孤立感・社会的な交流の欠如など、さまざまな側面で孤独を経験している人は、うつ病の発症などのリスクが4~5倍高いことが、カナダのトロント大学が2万人以上の高齢者を対象とした調査で明らかになった。

 研究グループは、パンデミック中の高齢者のうつ病の要因として、▼収入や貯蓄の不足、▼孤独、▼慢性的な痛み、▼医療へのアクセスの困難、▼子供時代の不幸な経験の記憶、▼家庭内の不和や対立などを指摘している。

 「新型コロナのパンデミックは、日常生活のとても多くの面でネガティブな影響をもたらしました。それらは、うつ病のリスクのある人には大きな打撃となりました」と、同大学神経科学科のサプリヤ バーク氏は言う。

 「メンタルヘルスの不調を抱えやすい人を、人生のなるべく早い段階でみつけだし、適切な対処をする必要があります」としている。

孤独を感じている人は糖尿病リスクが高い

 他者や社会とのつながりや交流を充実させることで、2型糖尿病のリスクを減少できる可能性があるという別の研究も発表されている。研究成果は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行している医学誌「Diabetologia」に発表された。

 孤独が健康にどのように影響しているかについて関心が高まっており、これまでの研究では、孤独と心臓病や死亡リスクとは関連があることが示されている。

 そこで、英国のキングス カレッジ ロンドンの研究グループは、孤独感が2型糖尿病にもたらす影響について調査をした。

 研究では、50歳以上の成人4,112人を対象とした英国縦断研究の2002~2017年のデータを分析した。データ収集時に、すべての参加者は糖尿病を発症しておらず、血糖値は正常だった。

 その結果、12年間で264人が2型糖尿病を発症した。孤独を感じている人は、2型糖尿病の発症リスクが1.41倍に高まることが明らかになった。

 「もしもあなたが孤独を苦痛に感じ、ストレスになっているのなら、他者との前向きな関係を築き、お互いの助け合いを経験することが、2型糖尿病を予防・改善するために有用なツールになる可能性があります」と、同大学精神医学研究所のルース ハケット氏は指摘している。

健康的な食事や運動により孤独を解消

 米国のジョージ メイソン大学による別の調査によると、座ったまま過ごす時間が長かったり、運動をして体を活発に動かすことが少ない人は、孤独を感じやすくなる傾向がある。

 「孤独は、過体重や肥満、バランスの偏った食事、運動不足など、不健康な生活スタイルと相互に関係していると考えられます」と、同大学保健福祉学部のローレンス チェスキン氏は言う。

 社会的に孤立している人では、▼喫煙量が多い、▼アルコールの飲み過ぎ、▼睡眠障害が多い、▼活発な運動や身体活動にあまり参加できていない、といった共通する特徴もみられるという。

 「孤独を減らすための介入により、日常での活動にも良い影響があらわれ、健康増進にプラスの効果がもたらされる可能性があります」としている。

 研究グループは、264人の学生を対象に調査し、孤独感が高い人では、「1日の座位時間が長い」(19.2%)、「体を活発に動かさず、運動不足になっている」(53.8%)といった特徴があることを明らかにした。

ボランティア活動に参加すると孤独を軽減できる

 孤独を解消するために、どのような工夫をすると良いだろうか?

 ボランティア活動に参加したり、他人にとって助けや利益になる行動をすると、地域社会で支援している人たちとのつながりができたり、新たな出会いにもつながりやすいことが、英国のキングス カレッジ ロンドンの研究で明らかになっている。

 他人に利益となるようにはかったり、他人の幸福を願うことは、自身のメンタルヘルス対策にもなるという。地域社会に役立つ行動をすることも、高い達成感や充実感、さらには自尊心の高まりにつながる。こうした利他行動が、孤独を軽減するのに役立つとしている。

 研究グループが、21ヵ国の約20万人を対象とした28件の研究のデータを解析した結果、健康状態のすぐれない家族などの介護や世話をすることは、より高いレベルの孤独と関連していることが分かった。

 一方、ボランティア活動などに参加することは、50歳以上の人の孤独のレベルを低減することも分かった。

他者を助けたりケアすることが喜びや達成感に

 「孤独は、人を孤立させ、他者から切り離されたと感じさせるものであり、身体と精神の健康にさまざまな悪影響をもたらします」と、同大学精神医学研究所のサミア アクター カーン氏は言う。

 「他者を助けたりケアすることは、しばしば愛情のこもった働きかけになり、深い喜びと達成感をもたらすことがあります。中高年や高齢者に、有意義な貢献をしたいという意欲のある人は多くいます」。

 「孤独を感じやすい人を特定し、そうした人の孤独を防いだり、軽減するための的を絞った解決策を開発することが求められています」としている。

1 in 8 older adults experienced depression for the first time during the COVID-19 pandemic (トロント大学 2022年11月24日)
Incident and Recurrent Depression among Adults Aged 50 Years and Older during the COVID-19 Pandemic: A Longitudinal Analysis of the Canadian Longitudinal Study on Aging (International Journal of Environmental Research and Public Health 2022年11月15日)
Loneliness predicts development of type 2 diabetes(キングス カレッジ ロンドン 2020年9月16日)
Loneliness and type 2 diabetes incidence: findings from the English Longitudinal Study of Ageing(Diabetologia 2020年9月15日)
Study finds new association between social isolation and dementia risk factors (PLOS 2023年2月1日)
Social isolation is linked to classical risk factors of Alzheimer's disease-related dementias (PLOS ONE 2023年2月1日)
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Loneliness is associated with unhealthful dietary behaviors and physical inactivity among US college students (Journal of American College Health 2022年11月17日)
Volunteering and caring for grandchildren protects from loneliness for the over 50s - Vast review of current research internationally shows (Taylor & Francis Group 2022年11月23日)
Caregiving, volunteering, and loneliness in middle-aged and older adults: a systematic review (Aging and Mental Health 2022年11月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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