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2023年03月08日

運動で糖尿病を改善 ウォーキングは1日15分でも効果がある 運動でメンタルヘルスも守れる

 運動をするのが有益であることは分かっていても、仕事や育児、家事、介護などで毎日忙しくて、運動をする時間をつくれないという人は多い。

 そんな人に良いニュースがある。ウォーキングなどの運動を1日にわずか15分行うだけでも、高血圧・糖尿病・心臓病・脳卒中・がんなどの予防・改善につながり、早期死亡のリスクを減少できるという。

 運動はメンタルヘルスを改善するためにも役立つ。うつ病などのメンタル不調を改善するのに、運動は薬よりも効果的だという。

1日15分のウォーキングで死亡リスクは23%減少

 糖尿病とともに生きる人に対し、運動は多くのベネフィットをもたらす。

 ウォーキングなどの有酸素運動により、筋肉への血流が増えると、ブドウ糖がどんどん細胞のなかにとりこまれ、血糖値が下がる。また、運動を続けていると、筋肉が増え、血糖値が下がるインスリンの効果が高まり、血糖値はさらに下がりやすくなる。

 運動ガイドラインで推奨されている運動量は、ウォーキングなどの活発な運動を1日30分(週に150分)行うというもの。

 しかし、これまで運動をする習慣をもたなかった人は、この目標を達成するのは難しいことが多い。仕事や育児、家事、介護などで毎日忙しくて、運動をする時間をつくれないという人も多い。

 そんな人に良いニュースがある。推奨されている運動量の半分を達成しただけでも、運動の効果はえられるという研究を、英ケンブリッジ大学が発表した。

 ウォーキングなどの活発な運動を1日15分(週に75分)行うだけでも、高血圧・糖尿病・心臓病・脳卒中・がんなどの予防・改善につながり、早期死亡のリスクを23%減少できるという。

 1日15分のウォーキング。これくらいの運動量であれば、毎日の生活で工夫すれば取り組める。続けるのも苦にならないという人は多いのではないだろうか。

自分ができる運動をみつけることが大切

 「何か運動をすることは、それが少ない運動量であっても、何もしないよりはずっとましです。とにかくご自分ができる運動を何かみつけて、なるべく長続きさせることが大切です」と、同大学医学研究評議会(MRC)疫学ユニットのソーレン ブラージ氏は言う。

 研究グループは今回、94件の大規模なコホート研究を対象とした196件の査読済み論文に対し、系統的レビューとメタ分析を行った。対象となった参加者の数は、3,000万人以上に上るという。

 その結果、ウォーキングなどの中強度の運動を1日15分間行うだけでも、心血管疾患の発症リスクを17%、がんの発症リスクを7%減らすことができることが示された。

 がんの部位別にみると、1日15分間の運動により、肺がん・肝臓がん・子宮体がん・結腸がん・乳がんなどのリスクは3~11%低下した。頭頸部がん・骨髄性白血病、骨髄腫、胃の噴門部のがんのリスクは14~26%低下した。

 「運動を毎日10分しかできないという人でも、それだけの運動を続けていれば、心臓の健康を改善し、がんのリスクを減らすのに役立ちます」と、MRC疫学ユニットのジェームズ ウッドコック教授は指摘する。

楽しみながら体をアクティブに動かす機会を増やす

 「ただし、1日15分のウォーキングであっても、なるべくきびきびと、早歩きすることを心がけることが大切です。慣れてきたら、少しずつ運動の時間と強度を上げていくと、さらに効果を高められます」と、ブラージ氏はアドバイスしている。

 運動は、早歩き・ダンス・サイクリング・テニス・ハイキングなど、自分が取り組みやすいもので良い。運動強度の目標としては、心拍数が上がり呼吸が速くなるが、会話はできるくらいが目安になるという。

 日常生活を見直して、「職場や買い物に行くときは、車に乗る代わりに、歩いたり自転車に乗る」「子供や孫と積極的に遊ぶようにする」といった、楽しみながら体をよりアクティブに動かす機会を増やすことも役立つ。

メンタルヘルスを改善するのに運動は薬よりも効果的

 南オーストラリア大学による別の研究では、運動はメンタルヘルスを改善するための、優れたアプローチにもなることが示された。メンタルヘルスを改善するのに運動は薬よりも効果的だという。

 研究グループは今回、97件の研究と1,039件の試験を解析した。対象となった参加者の数は、13万人近くに上る。

 その結果、ウォーキングなどの運動は、うつ病、不安症、精神的な苦痛など、メンタルヘルス不調の症状を改善するのに非常に有益であることが示された。

 運動を12週間(3ヵ月)行っただけで、うつ病などのメンタル症状を軽減する効果を期待できるという。

運動によるメンタルヘルスも改善できる

あらゆる種類の運動が有益 自分に合った運動を

 「ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、筋力トレーニング、ピラティス、ヨガなどを含む、あらゆる種類の運動が有益であることも分かりました」と、同大学の主任研究員であるベン シン氏は言う。

 メンタルヘルスを改善するための運動は、短時間であっても、強度を適度に高めるのが効果的だという。短時間であっても、職場や家のまわりを早歩きをするだけでも、効果を期待できる。

 「運動がメンタルヘルスを改善するのに有用であることは広く知られていますが、多くのエビデンスがあるにもかかわらず、精神疾患の治療法の第一選択としては採用されていません」とシン氏は指摘している。

 「臨床医が患者のメンタルヘルス障害に対応するときは、運動療法を考慮することが必要かもしれません。今回のレビュー研究は、うつ病や不安症を治療するための重要なアプローチとして、運動プログラムを作成する必要性を強調するものです」としている。

Daily 11-minute brisk walk can cut risk of early death, say University of Cambridge researchers (ケンブリッジ大学 2023年3月3日)
Non-occupational physical activity and risk of cardiovascular disease, cancer and mortality outcomes: a dose-response meta-analysis of large prospective studies (British Journal of Sports Medicine February 2023年2月28日)
Exercise more effective than medicines to manage mental health (南オーストラリア大学 2023年2月24日)
Effectiveness of physical activity interventions for improving depression, anxiety and distress: an overview of systematic reviews (British Journal of Sports Medicine 2023年3月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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