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2023年03月09日

「緑茶」で糖尿病を改善 日本茶を飲むスタイルが心臓病や脳卒中のリスクを低下

 日本食が健康的な食事として世界的に人気が高い理由のひとつは、カテキンなどが豊富に含まれる緑茶を飲む食事スタイルであること。緑茶は日本では、古くは薬のように扱われていた歴史もある。

 緑茶に、肥満・2型糖尿病・心臓病・脳卒中・認知症などの予防・改善効果があることが、世界のさまざまな研究で明らかにされている。

緑茶の健康効果は世界中で注目されている

 緑茶の健康効果は注目されている。緑茶に含まれる栄養素のうち、数多くの生理作用が報告されているのが、渋味成分であるカテキン類だ。

 緑茶葉にはカテキン類を含む茶ポリフェノールが含まれているが、その多くを占めるのが「エピガロカテキンガレート(EGCG)」。

 緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があり、とくにEGCGの抗酸化力は強力だ。カテキンを摂取し続けると、血圧や体脂肪、脂質の調節や、血糖値の改善効果を期待できるという報告がある。

 緑茶には、グルタミン酸、テアニン、アルギニンなどの旨味成分となるアミノ酸も含まれている。

緑茶を飲んでいる人は心臓病の死亡リスクが低下

 緑茶に肥満や2型糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、認知症などの予防・改善効果があることが、世界のさまざまな研究で明らかにされている。

 緑茶を毎日飲む人では、心臓病や脳卒中などで死亡するリスクが低い傾向があることが、国立がん研究センターなどが実施している多目的コホート研究「JPHC研究」で示されている。

 研究グループは、日本に在住している40~69歳の男女9万914人を対象に、18.7年間追跡して調査した。

 その結果、緑茶を1日に3~4杯飲んでいた群と、1日5杯以上飲んでいた群では、1日1杯未満しか飲まないグループに比べ、心臓病の死亡リスクは男性で26%、女性で26%低下した。脳卒中などの死亡リスクも男性で29%、女性で14%低下した。

 緑茶を1日に3~4杯飲んでいた群では、1日1杯未満しか飲まない群に比べ、全死因による死亡リスクも、男性で12%、女性で13%低かった。

緑茶を飲んでいる人は、飲まない人に比べ、死亡リスクが低下

出典:国立がん研究センター、2015年

緑茶を飲んでいる人は心臓病や脳卒中のリスクが20%低下

 緑茶の健康効果は、海外の研究からも報告されている。

 中国で、生活習慣と心臓病リスクの関連を調べることを目的に、大規模な「中国PAR」プロジェクトが1998年から実施されている。

 研究グループは、プロジェクトに参加した10万902人を対象に、(1) お茶を飲む習慣のある人(週に3回以上)、(2) お茶をほとんど飲まない、飲む習慣のない人(週に3回未満)の2つのグループ分け、7.3年追跡して調査した。

 その結果、お茶を飲む習慣のあるグループは、お茶を飲まないグループと比べて、心臓病や脳卒中のリスクが20%、致死性の心臓病と脳卒中のリスクが22%、全死因死亡リスクが15%低いことが明らかになった。

 とくにお茶を飲む習慣のある50歳以上の人では、飲まない人に比べ、虚血性心疾患と脳卒中の発症が1.41年遅く、1.26年長生きすることが示された。

糖尿病の人が緑茶を飲むと死亡リスクが低下

 2型糖尿病の人が緑茶を毎日飲むと、死亡リスクの低下につながるという研究も発表されている。

 研究は、九州大学などが行っている前向きコホート研究「福岡県糖尿病患者データベース研究(FDR)」で明らかになったもの。研究グループは、平均年齢66歳の2型糖尿病の日本人4,923人を5年以上追跡して調査した。

 その結果、緑茶を飲むことと死亡リスクの低下は関連していることが分かった。緑茶を1日に2~3杯飲んでいる人は死亡リスクが27%低く、1日4杯以上飲んでいる人は40%低いことが示された。

 この研究は観察研究であるため、緑茶などが健康にもたらす効果やメカニズムについて、詳しくは解明されていないものの、「緑茶やコーヒーには、ポリフェノール、テアニン、カフェインなど、抗酸化作用や抗炎症作用のある化合物が含まれています」と、研究グループは指摘している。

「抹茶」にもメンタルヘルスを改善する効果が
脳内ドパミンの神経回路を活性化

 緑茶の一種である「抹茶」にも、健康効果があるとみられている。碾茶を粉末にしたものにお湯を加え、撹拌したのが抹茶。碾茶は、新芽に覆いをして栽培し、摘採後に蒸した葉を揉まないで作られるお茶。

 熊本大学は、抹茶にうつ症状を軽減する効果がるあることを解明した。日常生活でのメンタルヘルス不調や、ストレスなどに対する、抹茶を活用した健康増進プログラムを開発できる可能性があるという。

 研究で、社会集団から隔離され、1匹の状態で飼育された、強いうつ様症状があらわれているマウスに抹茶を飲ませたところ、抗うつ効果が認められたという。

 抹茶は、脳内ドパミン神経回路の活性化を高めることで、抗うつ効果を発揮すると考えられている。

 研究は、熊本大学大学院生命科学研究部の倉内祐樹准教授らの研究グループによるもの。

 「うつ病の発症を予防するためには、日常のさまざまなストレスに適切に対処するセルフケアを実践し、心や身体の健康を維持することが大切です。今回の研究では、食品である抹茶が、ストレス対処に有益な作用をもたらす可能性が示されました」と、研究者は述べている。

 「今後、日常生活での精神状態の違いや、ストレスに対する感受性の個人差を考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムが開発・実践されることが期待されます」としている。

Association of green tea consumption with mortality due to all causes and major causes of death in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study (JPHC Study) (Annals of Epidemiology 2015年7月)
Tea drinkers live longer (欧州心臓病学会 2020年1月9日)
Tea consumption and the risk of atherosclerotic cardiovascular disease and all-cause mortality: The China-PAR project (European Journal of Preventive Cardiology 2020年1月8日)
Drinking green tea and coffee daily linked to lower death risk in people with diabetes (BMJ 2020年10月2日)
Matcha Tea Powder's Antidepressant-like Effect through the Activation of the Dopaminergic System in Mice Is Dependent on Social Isolation Stress (Nutrients 2023年1月22日)
Additive effects of green tea and coffee on all-cause mortality in patients with type 2 diabetes mellitus: the Fukuoka Diabetes Registry (BMJ Open Diabetes Research & Care 2020年10月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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