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2023年02月17日

「玄米」で糖尿病を改善 白米から置き換えて血糖上昇を抑制 食欲も抑えられる?

 玄米を食べる食事スタイルが、糖尿病のリスクを減少するのに効果的であることを解明した研究をご紹介する。

 白米を玄米に置き換えることで、2型糖尿病のリスクは低下するという。週に白米を5回以上の食べている人が、うち2回を玄米に置き換えるだけでも効果がある。

 最近の研究で、玄米に含まれる成分が健康増進に役立つメカニズムが、より詳しく分かってきた。

玄米が糖尿病リスクを低下

 食物繊維などが豊富に含まれる玄米や全粒粉パンなどの全粒穀物を食べていると、糖尿病のリスクが低下することを示した研究は多い。

 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、ふすま、胚芽、胚乳などの部位を取り除いていない穀物。

 未精製の穀類として、玄米、分づき米、麦ごはん、雑穀、ライ麦パン、全粒粉パンなどがある。

 このうち玄米は、不足しがちな食物繊維・ビタミンB群・マグネシウム、さらには健康に有用な働きをする植物成分であるフィトケミカルが、白米よりも多く含まれている。

 食物繊維が豊富に含まれる玄米を食べることで、食後の血糖値の上昇を抑えられると考えられている。

 食物繊維は腸内細菌のエサにもなる。白米の代わりに、より食物繊維が豊富に含まれる玄米や麦などをとり入れると、腸内環境が良くなり、炎症が軽減され、血糖を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性も改善するという研究も発表されている。

白米を玄米に置き換えると糖尿病発症が減少

 米国のハーバード公衆衛生大学院の研究によると、白米を玄米などの全粒穀物に置き換えると、糖尿病リスクが低下する。

 研究グループによると、1日に1食分の3分の1に相当する50gの白米を、同量の玄米に置き換えると、2型糖尿病のリスクは16%低下するという。

 週に白米を5回以上の食べている人が、うち2回を玄米に置き換えることで、2型糖尿病のリスクを下げられる可能性があるという。

 研究グループは、米国の3万9,765人の男性と15万7,463人の女性が参加した大規模調査のデータを解析した。

 「白米などの精白された穀物を、玄米などの全粒穀物に置き換えることは、2型糖尿病のリスクを下げるのに役立つと考えられます。米国でも米の消費量は、この数十年で劇的に増えています」と、同大学院栄養疫学部のチー サン氏は述べている。

 米は日本を含むアジア地域でよく食べられているが、玄米を食べることは、民族性とは関係がなく、より健康志向の高い食事スタイルになりえるとしている。

 米国政府が策定した食事ガイドラインでも、米を含む穀物を炭水化物の主要な供給源として、半分以上は全粒穀物を摂ることが推奨されているとしている。

関連情報

玄米食が健康に良い理由が次々と解明されている

 最近の研究で、玄米に含まれる成分が健康増進に役立つメカニズムが、より詳しく分かってきた。

玄米を食べると食欲を抑えられる?

 琉球大学医学部などは、米ぬかに含まれる玄米特有の成分であるγ-オリザノールに、肥満や糖尿病を抑制する作用があることかを明らかにしている。

 γ-オリザノールには、膵臓でインスリンを産生するβ細胞に働きかけて、高血糖を改善する作用や、腸内細菌のバランスを改善する効果があるという。

 さらに、γ-オリザノールは、脳内報酬系に働きかけて、食事のおいしさや満腹による幸福感を受け取るドパミン受容体の機能を高め、食事で満足しやすい脳に変える働きもある。

 高脂肪食を食べ過ぎると、脳(視床下部)で小胞体ストレスが亢進しやすくなるが、玄米のγ-オリザノールがこれを低下させ、高脂肪食への依存性も軽減するという。

 研究は、琉球大学大学院医学研究科の益崎裕章教授らによるもの。

玄米を食べて脂肪肝を予防・改善

 東京農業大学は、肥満などが原因で発症する非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が、玄米を食べることで、予防・抑制できることを明らかにしている。

 2型糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などは、脂肪肝とも関連が深い。脂肪肝は、食事などの生活スタイルや遺伝的要因、腸内細菌叢の変化など、さまざまな要因が関わり発症するとみられている。

 脂質代謝は、ビタミンAの代謝に大きく左右されることが知られている。高脂肪食を食べ過ぎると、肝臓中のビタミンA代謝が抑制され、脂肪肝になりやすくなると考えられている。

 玄米を食べることで、ビタミンAの誘導体であるレチノイン酸の生合成が高まり、ビタミンA代謝が亢進、脂質代謝の改善が促されるとしている。

 研究は、東京農業大学応用生物科学部の山本祐司教授らによるもの。

玄米の成分に細胞を保護する作用が

 また、岡山大学は、玄米に含まれる植物ステロールとポリフェノールのハイブリッド化合物が、玄米の健康機能をになっている可能性があると発表している。

 この化合物は、米の胚芽などに含まれるポリフェノールであるγ-オリザノールのひとつで、酸化ストレスから細胞を保護する強力な作用があり、代表的な抗酸化物質であるビタミンE類よりも効果は高いとしている。

 酸化ストレスは、体を傷つける活性酸素が過剰になり、それを消去する抗酸化システムとのバランスが崩れた状態。

 酸化ストレスにより、細胞が傷つけられ、動脈硬化が促される。その原因は、生活スタイル、ストレス、加齢などさまざまだが、糖尿病とも関連が深いとみられている。

 研究は、岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の中村宜督教授らによるもの。

 研究グループはこれまで、玄米に含まれるビタミンEに、肝細胞を保護する作用があることや、白米や玄米に含まれるエタノール抽出物にも似た作用があることも明らかにしている。

Impact of Germinated Brown Rice and Brown Rice on Metabolism, Inflammation, and Gut Microbiome in High Fat Diet-Induced Insulin Resistant Mice(Journal of Agricultural and Food Chemistry 2022年10月25日)
Replacing white rice with brown rice or other whole grains may reduce diabetes risk (ハーバード公衆衛生大学院 2010年6月14日)
White Rice, Brown Rice, and Risk of Type 2 Diabetes in US Men and Women (JAMA Internal Medicine 2010年6月14日)
玄米による抗肥満効果のメカニズム解明 (琉球大学医学部 2012年7月25日)
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Brown Rice Inhibits Development of Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Obese Zucker (fa/fa) Rats by Increasing Lipid Oxidation Via Activation of Retinoic Acid Synthesis (Journal of Nutrition 2021年7月5日)
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Cycloartenyl ferulate is the predominant compound in brown rice conferring cytoprotective potential against oxidative stress-induced cytotoxicity (International Journal of Molecular Science 2023年1月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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