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2022年10月04日

「心身リラックス」で糖尿病の人の血糖値が下がる 孤独はストレスに 世界メンタルヘルスデー

 10月10日は、世界保健機関(WHO)が協賛し正式な国際デーとなっている「世界メンタルヘルスデー(WMHD)」だ。

 この日に合わせて、さまざまなイベントが開催され、東京のシンボルでもある東京タワーなどがシルバーにライトアップされる。メンタルヘルスケアの大切さが、世界規模で呼びかけられる。

 2型糖尿病とともに生きる人の血糖マネジメントに、自分の体と心の状態に対し注意深くなり、リラックスの方法を学び、ストレスなどに対処しやすくなるためのトレーニングが効果的と注目されている。

 糖尿病の人の3分の2は「糖尿病のせいで、気持ちが落ち込むことがある」と感じているという調査結果や、孤独が糖尿病リスクを2倍に上昇させるという研究も発表されている。

 糖尿病との付き合い方を学び、リラックスの方法を知り、ストレスなどに対処しやすくなるための取り組みが必要とされている。

自分の体や心の状態を意識しストレスに対策

 「マインドフルネス」は、日本の禅などの考え方や瞑想をベースにしたメンタルトレーニングとして米国で発達した。マインドフルネスを日本語に訳すと「気付くこと」「意識すること」という意味になる。

 マインドフルネスを簡潔にあらわすと「今、ここで起きていることを、ありのままに感じて、受け止めること」。自分の体や心の状態を意識することで、ストレスを受ける場面に遭っても、否定的な感情にとらわれることなく、平静を保てるようになるという。

 一方、「心身プラクティス」は、自分の体と心の状態に対し注意深くなり、リラックスの方法を学び、ストレスなどに対処しやすくなるためのトレーニング法。

 ゆっくりとした呼吸を取り入れたヨガや瞑想などが、代表的な心身プラクティスと考えられている。ウォーキングなどの適度な運動を習慣として行うことや、運動にストレッチなどを取り入れることも、ストレス対策になると考えられている。

 米国では心身プラクティスの実践は、健康増進に役立ち、2型糖尿病などの病気と闘うためのツールとして人気が高まっているという。

 「多くの人は、心身プラクティスが血糖管理に役立つと考えています。2型糖尿病の米国人の66%は、心身プラクティスに関心があり、実践を試みたことのある人も多いという調査結果があります」と、南カリフォルニア大学公衆衛生学部のファティマタ サノゴ氏は言う。

 しかし、心身プラクティスの実践により、実際に血糖値を下げられるかどうかは、これまで厳密に定量化されたことはなかった。

関連情報

糖尿病の人の3分の2は「糖尿病のせいで、気持ちが落ち込むことがある」

 そこで研究グループは、1993年~2022年に発表された、心身プラクティスに関連する、世界中で実施されたランダム化比較試験のデータを解析した。2型糖尿病の薬物療法などに加えて、心身プラクティスを取り入れた28件の研究が対象となった。

 薬物療法のみに取り組んだ患者に比べ、心身プラクティスを行った患者で、血糖管理にどのような影響が出たかを調べた。

 糖尿病の治療は多くのストレスをともなう。糖尿病とともに生きる人の多くが、糖尿病はメンタルヘルスに大きな影響を与えていると実感しているという調査結果がある。

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)の調査では、糖尿病の人の3人に2人(64%)は、「糖尿病のせいで、気持ちの落ち込みを感じることが、ときおりまたは頻繁にある」と回答。3人に1人(33%)が「糖尿病のために生活スタイルを変えなければならず、家族にも迷惑をかけている」と感じていることが判明した。

 糖尿病の人の5人に3人がメンタル面での心理的な問題を抱えた経験をもっている一方で、「自分は糖尿病を確実にコントロールしている」と感じている人は10人中3人(30%)と少なかった。

心身プラクティスは薬と同じくらい効果がある

 研究グループは、瞑想、ヨガ、気功、マインドフルネスにもとづくストレッチなど、ストレス軽減につながる行動が、血糖値にどう影響するかを調べ、心身プラクティスが血糖値の大幅な低下につながりえることを明らかにした。

 心身プラクティスの実践は全体として、過去1~2ヵ月の血糖が反映されるHbA1cの平均0.84%の低下と関連しており、もっとも多く研究されていたヨガについては、HbA1cの約1%の低下と関連していた。

 「驚くことに、心身プラクティスを良好に行うことは、医師より処方された治療薬と同じくらいの効果を期待できることが示されました。心身プラクティスには利益があるだろうと考えていましたが、これほどとは予測していませんでした」と、サノゴ氏は言う。

 サノゴ氏によると、米国でもっともよく処方されている糖尿病治療薬であるメトホルミンは、2型糖尿病患者のHbA1cを平均して1.1%低下させる。HbA1cの1%低下は注目に値するとしている。

心身プラクティスを糖尿病の補完的な治療法に発展

 「ストレスを軽減するための瞑想やヨガ、ストレッチなどは、費用もかからず、自宅や職場でもどこでも行えます。副作用の心配もありません」と、同大学公衆衛生科学部の生理学・神経科学のリチャード ワタナベ教授は言う。

 「心身プラクティスの実践を、2型糖尿病患者の薬物療法以外の、補完的な治療法に発展できる可能性があります。おそらく、糖尿病の予防手段としても活用できると考えられます」としている。

 糖尿病合併症を予防するための血糖管理の目標となるのは「HbA1c 7%未満」だ。しかし、この目標を達成できているのは、2型糖尿病患者の約半数のみだという。

 「2型糖尿病は、世界中で多くの人の健康を脅かしている慢性疾患です。2型糖尿病をより良く管理するために役立つ新しい効果的な方法が必要です。さらに、米国では糖尿病予備群の数が、ここ数十年で3倍に増えています」と、ワタナベ教授は述べている。

孤独は糖尿病リスクを2倍に上昇させる

孤独は大きなストレスになる

 2型糖尿病とともに生きる人にとって、孤独や孤立は大きなストレスになっており、糖尿病のリスクを2倍に高めているという研究が、英国糖尿病学会(EASD)の公式ジャーナルである「Diabetologia」に発表された。

 これは、ノルウェー科学技術大学などが2万4,024人を対象とした調査で明らかにしたもの。心理的ストレスと糖尿病リスクの上昇は関連しており、とくに孤独は身体の生理的ストレス反応を悪化させるおそれがあるとしている。

 「多くの研究で、心理的ストレスと2型糖尿病のリスクとの関連が指摘されています。慢性的な孤独は、生理的ストレス反応を活性化し、ときには長期にわたる苦痛を作り出します」と、同大学看護学部のロジャー ヘンリクセン氏は言う。

 「正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、孤独は、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを上昇させ、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病に悪影響をもたらすと考えられます」としている。

 このプロセスにより、脳による摂食行動の調節がうまくいかなくなり、炭水化物に対する食欲の増加と血糖値の上昇も引き起こされる。過去の研究では、孤独と糖質の多い食品や飲料の摂取の増加の関連が指摘されている。

糖尿病の人の孤独に対しても支援・サポートを

 研究クループは、ノルウェーで実施されているコホート研究である「HUNT」研究に参加した、2万4,024人のデータを解析した。

 20年間の追跡期間中、参加者の4.9%が2型糖尿病を発症した。参加者の12.6%がさまざまな程度の孤独感を報告し、もっとも孤独を感じている人は、孤独を感じていない人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2.19倍高いことが明らかになった。

 「この研究では、孤独が2型糖尿病のリスクを高める要因のひとつである可能性が示されました。2型糖尿病の人に対する支援では、孤独についても支援・サポートをすることが望まれます」と、ヘンリクセン氏は言う。

 「2型糖尿病に対する孤独の影響が、うつ病によるものなのか、それとも睡眠障害により媒介されるものなのか、今後さらなる研究で調べる必要があります」としている。

世界メンタルヘルスデーJAPAN2022特設サイト~つながる、どこでも、だれにでも~ (厚生労働省)
知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス (厚生労働省)

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Mind- and Body-Based Interventions Improve Glycemic Control in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-Analysis (Journal of Integrative and Complementary Medicine 2022年9月7日)

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The future of diabetes 報告書(英国糖尿病学会 2017年11月14日)

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Loneliness increases the risk of type 2 diabetes: a 20 year follow-up - results from the HUNT study (Diabetologia 2022年9月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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