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2019年02月01日
糖尿病とメンタルヘルス 5人に3人が悩みを抱えている ストレスに負けないための4つの習慣
糖尿病患者の5人に3人が感情的・心理的な問題を抱えた経験をもってるが、専門の訓練を受けたカウンセラーのサポートを受け、糖尿病の管理に役立てられたのは、5人に1人に過ぎないという調査結果が公表された。
「糖尿病とともに生きる人々がメンタルヘルスのサポートも受けられるよう、糖尿病の治療を変えていく必要がある」と、専門家は指摘している。
「糖尿病とともに生きる人々がメンタルヘルスのサポートも受けられるよう、糖尿病の治療を変えていく必要がある」と、専門家は指摘している。
糖尿病はメンタルヘルスに大きな影響を与える
英国糖尿病学会は2017年に英国の糖尿病患者9,000人以上を対象に調査を実施。調査の内容は、糖尿病がおよぼす心理的な負担に関するものだった。結果を報告書「糖尿病の未来(The future of diabetes)」にまとめた。
先が見えない不安や孤立感
「糖尿病とともに生きる人々の多くが、心理的な負担に苦しめられています。糖尿病ケアを効果的に進めるためには、体のケアだけでなく、心のケアも必要です。心理面でも糖尿病患者をサポートできるよう、糖尿病診療の体制を整備する必要があります」と、英国糖尿病学会のクリス アスキュー氏は言う。
参加者からは、「世界には糖尿病に対する偏見がはびこっています。この偏見をなくすことが、より良い療養生活に必要であることに、早く気付いてほしい」
「糖尿病ではないすべての人に、ほんの数分で良いから、糖尿病は本当はどのような病気であるかを説明する機会がほしい」 「糖尿病であることは大きな負担ですが、いまでは私の人生の一部。難しいことですが、糖尿病と折り合いを付けながら生活する方法を模索しています」 「インスリンポンプやCGM、フラッシュモニタリングなどの糖尿病医療の進歩に、もっと容易にアクセスできるようにしてほしい」
といった声が聞かれた。 「現在の医療では糖尿病を根治できません。糖尿病患者の多くは、先が見えないことによる不安や孤立感に苦しめられています。糖尿病は、適切な治療を行わないでいると、心臓病、脳卒中、腎臓病、網膜症、足病変などの合併症を引き起こす深刻な疾患です。しかし、初期の段階では自覚症症が乏しいために、放置しがちです。糖尿病とともに生きる人々がより良い人生を歩めるよう、糖尿病の療養のための適切なサポートを提供する必要があります」と、アスキュー氏は言う。 関連情報
糖尿病とストレス ストレスをためないための4つの対策
仕事や職場環境などが原因でストレスを感じ、心の不調を訴える人は多い。ストレスはうつ病や不安症(不安障害)といった心の不調を引き起こし、糖尿病にも影響を与える。
ストレスを感じると、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンの分泌が増える。これらホルモンは血糖値を上昇させる作用がある。ストレスはインスリン抵抗性を引き起こすホルモンの分泌も増やす。インスリン抵抗性は、血糖を下げるインスリンに対する感受性が低下した状態だ。
ストレスが慢性化すると、うつ病の発症が増え、さらに糖尿病が悪化するという悪循環におちいるおそれもある。ストレスと糖尿病の負のスパイラルは、糖尿病の治療を難しくする。早い時期からストレスに対処することが必要だ。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、糖尿病とともに生きる人がストレスに対処するために、次のことをアドバイスしている。
● ありのままを受容し、プラス面に目を向ける
自分が糖尿病であることや、治療がうまくいかないことを受け入れられないことが、ストレスの原因となっている場合もある。
本来はこうあるべきだという理想の状況や、他人との比較で自分の現状を考えた場合、自分の状況がそれらに及ばないと感じるとストレスが生じがちだ。ストレス対処方法として大切なのは、ありのままの現状を受容し、その上で現状のプラス面に目を向けることだ。
じっくり考えてみれば、現状には“それほど悪くない”という面もあるはず。糖尿病の医療は進歩を続けている。治療を続けられていること自体を、プラスとして考えられるはずだ。
● リラックスできる時間を見つける
ストレスと上手に付き合うために、生活スタイルを整えることが大切。バランスのとれた食事や良質の睡眠、運動習慣を維持することが、基礎固めになる。
また、ストレスがたまったときの対策として、リラックスできる時間を日常生活の中にもつことも大切。自分の時間をもつことで、リラックスやリフレッシュができるようになり、気持ちを新たにしてリブートすることが可能になる。
たとえば、温浴、読書、散歩、音楽鑑賞、大好きなテレビ番組を見る、ラジオを聴く、友人に電話をする、瞑想するなど、自分が楽しめる時間をもつことが大切だ。
ただし、お酒を飲んでつらさを紛らわせようとするのは、睡眠の質を低下させ、メンタルヘルスをさらに悪化させるおそれがあるので注意が必要だ。
● 相談できる友人や知人をもつ
自分でストレスに対処するよりも、他人に相談して援助を求める方が効果的な場合もある。友人、家族、同僚、地域や趣味の仲間など、日頃から気軽に話せる人をつくっておくと役に立つことがある。
友人や知人の相談相手がいない場合は、患者同士が集まった支援グループの集会に出て、同じ経験をもつ者同士で話し合う方法がある。
患者同士で話すことで、同じ問題を抱えているのは、自分ひとりではないことに気づくことができる。問題の対処法について、他の人のやり方を知ることで、ヒントを学ぶことも可能だ。日頃から社会活動を充実させて、人間関係を広げておくことが大切だ。
● 主治医や専門家に相談する
自分で対応しきれない大きな問題を抱えた時には、自分ひとりで解決するにはかなりの時間と労力を要することになる。結果として心身の不調を招くことになりかねない。
そのような時には、信頼できる人や専門家に相談することが必要となる。「よく眠れない」「イライラすることが多くなってきた」「憂うつ感が強くなってきた」というのは、こころの不調としてのストレスのサインのひとつだ。
そうしたサインが出ている場合は、症状を詳しく主治医に話したり、早めに心療内科や精神科を訪れよう。主治医に相談しづらい場合には、療養指導士や医療スタッフなど相談しやすい人に相談する方法もある。
糖尿病とともに生きる人のためのメンタルヘルスケア
The future of diabetes 報告書(英国糖尿病学会 2017年11月14日)
Emotional and psychological support for people with diabetes(英国糖尿病学会 2018年7月)
Diabetes & Mental Health(米国疾病予防管理センター 2018年8月6日)
知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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