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2019年01月29日
糖尿病と骨の健康 骨が分泌する「若返りホルモン」は運動で増やせる
糖尿病があり血糖コントロールが良好でないと骨が弱くなる。糖尿病の方は、そうでない方と比べて骨折の危険が大きい。
運動を習慣として続けると、骨を作るホルモンの分泌が活発になり、骨が丈夫になる。加えて「若返り効果」も得られることが、最新の研究で明らかになった。
運動を習慣として続けると、骨を作るホルモンの分泌が活発になり、骨が丈夫になる。加えて「若返り効果」も得られることが、最新の研究で明らかになった。
糖尿病の人は骨が弱くなりやすい
加齢とともに、人はだんだん骨が弱くなる。皮膚の老化や血管の老化と同じように、骨も老化する。骨の強さには、骨の量の目安となる「骨密度」と「骨質」が関係している。骨粗鬆症になると、骨密度が低下し、骨質が劣化する。
高血糖や高血圧、脂質異常症などがあり、適切な治療をしないでいると、骨量が低下しやすいので早めの対策が必要だ。インスリンには骨を作る「骨芽細胞」を増やす作用がある。インスリンがうまく働かない状態にあると、骨芽細胞が不足し、骨を作る働きが低下する。
また、慢性腎臓病があると、カルシウムを体内に吸収させるのに必要なビタミンDの活性化が低下し、血液中のカルシウムが不足するようになる。それを補うために骨からカルシウムが溶け出し、骨量が減少しやすい。
閉経後の女性も注意が必要だ。女性ホルモンには骨密度を保つ働きがある。女性は、閉経を機に女性ホルモンの分泌量が減少するため、骨量が減少しやすい。
人生でもっとも骨量が多いのは男女とも20歳頃で、20〜40歳代の前半までは、骨量は平坦に推移するが、40歳の半ばを過ぎるとだんだん落ちていく。20歳頃に骨量が少ない人は、高齢になるとさらに骨が弱くなるおそれがある。
骨から分泌されるオステオカルシンは「若返り物質」
骨を丈夫にするために運動は欠かせない。骨には、運動などの負荷をかけると強くなり、逆に負荷をかけないと弱くなるという性質がある。骨を丈夫にするために効果的な運動は、衝撃や負荷の大きい運動だ。
逆に、寝たきりの状態の人や、無重力で過ごす宇宙飛行士などでは、骨密度が急激に減少する。運動には転倒予防の効果があり、骨折予防のために重要だが、運動の効果はそれだけではない。
運動により骨に力をかけると、骨を作る細胞が新しくできてくるだけでなく、「オステオカルシン」というホルモンの分泌も促されることが、岡山大学の研究で明らかになった。
オステオカルシンは、骨芽細胞で産生される骨基質タンパク質で、血中にもある。カルシウム代謝と関わりが深く、運動による筋肉増強、認知機能の改善、精力のアップなどにも関わっている。
関連情報
オステオカルシンはインスリンの分泌と感受性も促している
骨は単なる体の支柱ではなく、重要な臓器のひとつだ。骨の主な成分はコラーゲン線維とそこに沈着しているリン酸カルシウムだが、そのほかにも「オステオカルシン」や「オステオポンチン」などの微量な成分が含まれていて、骨の硬さを調節したり、骨の細胞が接合しやすい足場を作ったりしている
最近の研究では、これらの微量成分は、骨から溶け出して全身の臓器に働きかけるメッセージ物質として機能していることが分かってきた。
とくに骨芽細胞から分泌される「オステオカルシン」は大切なメッセージ物質で、脳、精巣、筋肉、膵臓などに働きかけ、記憶力、筋力、精力などをアップする「若返り物質」として働くことが知られている。
九州大学の研究によると、「オステオカルシン」は、インスリン分泌および感受性も促し、全身の糖代謝をコントロールしている。一方、インスリンは、骨芽細胞内のインスリン受容体を介して骨吸収を活発させる。
運動で骨に力を加えるとオステオカルシンの分泌が増える
岡山大学の研究グループは今回の研究で、骨に力をかけると、新しく骨を作る細胞が増えてくるだけでなく、それらの細胞が「オステオカルシン」を作るタイミングが早まることを発見した。運動により若さを保つ方法を発見できる可能性がある。
骨は運動や重力などで力が加わると太く丈夫になり、逆に運動不足や微小重力下では細く弱くなる。骨の継ぎ目(縫合部)を広げるように伸展力を加えると、広がった縫合部を埋めようと、骨を作る細胞が新しくリクルートされてきて急速に骨を作る。
研究グループはネズミを使った実験で、骨縫合部に伸展力をかけると、引っ張られた方向に新しい骨が急速に作られ、このとき骨を作る骨芽細胞が増えるだけではなく、通常より早いタイミングで「オステオカルシン」を分泌する骨芽細胞があらわれることを発見した。
今回の研究では、運動で骨に力を加えることで、骨の全身に及ぼす働きに違いが出てくることが示された。今後の研究で、骨と運動という観点から、寝たきりで骨が失われるのを防ぐなど超高齢化社会を健康で若々しく生き抜くためのヒントがみつかる可能性がある。
研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科口腔形態学分野の池亀美華准教授と岡村裕彦教授、朝日大学歯学部の江尻貞一教授らによるもの。詳細は、米国の細胞組織発生学の雑誌「Journal of Histochemistry & Cytochemistry」オンライン版に発表された。
Expression of Noncollagenous Bone Matrix Proteins in Osteoblasts Stimulated by Mechanical Stretching in the Cranial Suture of Neonatal Mice(Journal of Histochemistry & Cytochemistry 2018年8月16日)
Osteocalcin Induces Release of Glucagon-Like Peptide-1 and Thereby Stimulates Insulin Secretion in Mice(PLOS ONE 2013年2月20日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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