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2022年09月15日

糖尿病合併症は「HbA1c 7%未満」に管理すれば予防できる 1型糖尿病の発症後30年以上にわたり追跡調査

 1~2ヵ月の血糖値を反映するHbA1cの値により、1型糖尿病の人が眼と腎臓の合併症を発症するリスクを正確に予測できることを、スウェーデンのリンショーピング大学が明らかにした。

 HbA1c値を7.0%未満に管理できていると、将来に糖尿病性腎症や糖尿病網膜症を発症するのを防ぐことができるという。

 研究は、1型糖尿病を発症した人を、発症後30年以上にわたり追跡して調査したもので、スウェーデン小児糖尿病財団とオステルゴットランド財団基金の支援を得て行われた。研究成果は、「Diabetes Care」に掲載された。

HbA1cを7.0%未満に維持できていれば糖尿病合併症を防げる

 1~2ヵ月の血糖値を反映するHbA1cの値により、1型糖尿病人が眼と腎臓の合併症を発症するリスクを正確に予測できることを、スウェーデンのリンショーピング大学が明らかにした。

 糖尿病の人が、血糖管理が良好でなく、血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病合併症が引き起こされる。原因は、血液中のブドウ糖が過剰に増えたことで、さまざまな臓器の血管が損傷を受けることだ。

 目が悪くなる糖尿病網膜症、腎臓が悪くなる糖尿病性腎症、神経が悪くなる糖尿病神経障害の3つが代表的な糖尿病合併症とされている。

 血糖値を適切に管理することで、合併症を予防でき、糖尿病のない人と変わらない生活をおくれると考えられている。

 しかし、1型糖尿病の人が、眼や腎臓に深刻な損傷があらわれるのを避けるために、HbA1c値をどれくらいに管理していれば良いのだろうか。

 「今回の研究で、1型糖尿病とともに32年以上生きている人も、HbA1c値を7.0%未満に維持できていれば、糖尿病合併症を防げることが明らかになりました」と、リンショーピング大学の生物医学・臨床科学の名誉教授で、この研究のリーダーを務めたハンス アルンクヴィスト氏は言う。

 「糖尿病網膜症や糖尿病性腎症は、血糖値が高くなるにつれて、発症のリスクが高まります。適切な血糖管理ができていれば、血管の損傷から生じる合併症を回避できることが示されました」としている。

1型糖尿病の診断後32年~36年、眼や腎臓の血管の損傷を追跡調査

 「VISS(スウェーデン南東部血管性糖尿病合併症)研究」は、1983年~1987年に1型糖尿病を発症し、スウェーデン南東部の医療機関で治療を受けている35歳未満のすべての子供と成人を対象に追跡している研究。

 研究グループは、VISS研究に参加している447人の患者に提供されている糖尿病治療と、HbA1c値について追跡して調査した。追跡期間は、1型糖尿病の診断後32年から36年におよび、その間の眼や腎臓の損傷の進行について調べた。

 糖尿病網膜症は、眼球の奧にある網膜と呼ばれる部分にはりめぐらされた細い血管に、高血糖による障害が起こる疾患。1型糖尿病の人はほぼすべてが、視力に影響を及ぼさない程度の網膜の血管の小さな出血を経験しているという。

 糖尿病網膜症が進行すると、網膜の血管がつまり、その部分をバイパスするために血管(新生血管)ができる。この状態は「増殖網膜症」として知られており、適切な治療を行わないと失明につながるおそれがある。

 そのほかにも、ものを見るうえで重要な、網膜の中の黄斑という部分にむくみが起きることがあり、これは「糖尿病黄斑浮腫」と呼ばれている。糖尿病黄斑浮腫があると、視力低下が起きる原因になる。

糖尿病がある人は血液検査や尿検査を受けることが重要

 腎臓は眼に比べると高血糖に対し敏感ではないが、重要な細い血管が集まっていて、それが高血糖により損傷を受ける可能性がある。腎臓は血液をろ過し、尿として体の外に排出している。この働きをになっているのが腎臓にある糸球体だ。

 その糸球体が高血糖によってダメージを受け、腎臓の働きが徐々に低下するのが糖尿病腎症。腎臓の損傷を放置していると、最終的には腎機能の障害につながり、深刻な場合には腎不全に進行する。腎不全になると、血液を人工的にろ過する透析療法が必要になり、腎臓移植を受ける人もいる。

 腎症は無症状で進行することが多いため、症状のあるなしにかかわらず、糖尿病がある人は尿検査や血液検査を定期的に受けることが重要になる。

 糖尿病性腎症を早期発見するには、尿中アルブミン検査が有効だ。腎症のごく早期から、タンパクの一種であるアルブミンが尿に漏れる。尿に出てくるアルブミン、タンパク質が多いほど、腎臓が傷んでいるということになる。

良好な血糖管理により糖尿病合併症を予防 課題も明らかに

 VISS研究によって示された、糖尿病合併症を予防するための目標となるHbA1c 7.0%未満は、米国糖尿病学会(ADA)が推奨する血糖マネジメントの目標値と一致している。

 「私たちの研究では、良好な血糖管理を長期的に維持することで、糖尿病合併症を予防できることが明らかになりました。このことは、血糖管理に毎日取り組んでいる人を励まし、治療の動機付けを高めるものです」と、アルンクヴィスト氏は言う。

 「しかし、糖尿病とともに生きる人が、低血糖や高血糖の問題を抱えている場合、血糖値を厳密に管理するのは難しくなります。そうした人を支援する新たな治療の開発も必要です」。

 さらに、研究グループによる前回の追跡調査は、1型糖尿病の発症から20年後に実施された。30年後の現在、20年後のときよりも低い血糖値で糖尿病合併症を発症することがあることも示された。

 糖尿病の治療は進歩しており、血糖管理をより行いやすくなっている。しかし、血糖値が以前よりも高くないにもかかわらず、糖尿病合併症を経験する患者は少なくない。

 「つまり、時間が経過するとともに、合併症を発症する閾値が徐々に下がっていくようです。このことは、この研究で、診断後30年以上が経過した1型糖尿病患者の血糖管理の目標について、結論を出すことができないことを意味しています」と、アルンクヴィスト氏は指摘している。

Recommended blood sugar levels to avoid diabetes-related damage
Impact of HbA1c Followed 32 Years From Diagnosis of Type 1 Diabetes on Development of Severe Retinopathy and Nephropathy: The VISS Study
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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