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2022年09月07日

CGM(持続血糖測定)は1型糖尿病の人の人生を変える 糖尿病のマネジメントを革新

 英国の国民医療サービス(NHS)は、1型糖尿病の人が持続血糖モニター(CGM)を利用しやすくするために変革を進めている。

 よりリーズナブルな費用でCGMを使えるようにようした結果、英国の1型糖尿病の人の5分の3近くが、すでにCGMにアクセスしているという。

 「CGMは革新的なテクノロジーであり、1型糖尿病の人の人生を変えるものです」としている。

1型糖尿病の人の人生を変える新しいテクノロジー

 英国の国民医療サービス(NHS)は8月、1型糖尿病の人はすべて、持続血糖モニター(CGM)にアクセスできるようするべきだと発表した。CGMは、1型糖尿病の人の人生を変える新しいテクノロジーだとしている。

 持続血糖モニター(CGM)は、連続して皮下の間質液のグルコース濃度を測定し、血糖値を推定するデバイス。血糖の上下動などをリアルタイムでモニターでき、血糖自己測定(SMBG)だけでは発見しにくい、夜間や早朝の低血糖や、食後の高血糖なども分かる。日本でも、1型糖尿病の人と、血糖管理の難しい2型糖尿病の人が利用している。

 NHSは、英国の国営医療サービス事業を展開しており、患者の医療ニーズに対して公平なサービスを提供することを目標に活動している。

よりリーズナブルな費用でCGMを利用できるよう改革

 これまで、CGMやインスリンポンプは、血糖管理を改善するのに効果的であることは明らかになっているものの、医療費が高額になりやすく、利用できる患者は限られていた。

 そこで、NHSはCGMを提供している企業と交渉し、費用対効果がより高い新しい契約に合意するのに成功した。英国の公的医療サービスでは、CGMは医師の処方により、よりリーズナブルな医療費で提供されるようになった。

 NHSの最近の調査によると、1型糖尿病の人の5分の3近くが、すでにCGMにアクセスし、恩恵を受けられるようになったという。NHSの長期計画では、当初は20%という目標が掲げられていたが、これを大きく上回っている。

CGMで糖尿病の管理を改善できれば医療費も減らせる

 「CGMにより血糖管理と糖尿病治療を改善できれば、将来の合併症のリスクを減らすことができ、糖尿病に関連する入院などのリスクも少なくなり、より健康的な生活をおくれるようになります」と、糖尿病と内分泌学が専門の医師でNHSの糖尿病分野のアドバイザーを務めるパーサ カー氏は言う。

 「CGMは、糖尿病患者さんが自分の状態をより適切に管理するのに役立ちます。その結果、NHSの医療費の負担を減らすことができれば、国にとっても大きなメリットがあります」。

 NHSは糖尿病治療に年間におよそ1.6兆円(100億ポンド)を費やしており、糖尿病や糖尿病の合併症を予防・改善するプログラムは、長期的にNHSのリソースへの負担を減らすことにつながるとしている。

テリーザ メイ前首相「1型糖尿病にとって大きな前進」

 英国の首相を務めていたテリーザ メイ氏は、英国で2人目の女性の首相として話題になったが、実は2012年に1型糖尿病と診断されており、世界ではじめて首相に就任した1型糖尿病患者でもあった。

 テリーザ メイ前首相は、「これは、1型糖尿病の治療にとっても、NHSにとっても、重要な一歩です。CGMは、糖尿病患者さんに大きな変化をもたらします」とコメントしている。

 「NHSが、CGMを利用できる人々の数を大きく伸ばし、長期計画の目標をすでに上回っていることを嬉しく思います。医療でやるべきことはまだたくさんありますが、これは大きな前進です」としている。

CGMは人生を変えた 糖尿病のマネジメントが向上

 56歳のアンディ ラベンダー氏は、2歳で1型糖尿病を発症し、2019年には「インスリン50年賞」を受賞。現在は、英国糖尿病学会(Diabetes UK)で活動するほか、NHSのコーディネーターも務めている。

 「CGMは私の人生を変えました。私は以前、1日に14回の血糖測定を行っていましたが、いまではスマートフォンを見るだけで、そのときの血糖値がすぐに分かるのです」と、ラベンダー氏は言う。

 「糖尿病の人の多くは、公共の場やコーヒーショップなどで血糖測定をするのをためらい、トイレに隠れて測定している人もいます。いまでは、スマホの画面をちらりと見るだけで、血糖値のチェックができます。CGMは痛みが少なく、ストレスも少なく、糖尿病のマネジメントをするうえで、とても優れています」としている。

 ウェスト ヨークシャー州の地域包括ケア拠点で働くエリス フェザーストーンさんとロッシェル フェザーストーンさんは、25歳の双子の姉妹で、2人とも1型糖尿病だ。2人は2019年にCGMを使いはじめた。

 「CGMのような新しいテクノロジーは、人生を変え、健康を劇的に改善し、糖尿病に関連するネガティブな暗示を軽減するのに役立ちます」と説明している。

ウェアラブル技術の進歩は糖尿病治療に変革をもたらす

 NHSが今回合意した、費用対効果の高い新しい契約で提供されているCGMは、8月から英国で医師の処方により利用できるようになった、Dexcom社の「Dexcom One」だ。

 「Dexcom One」は、皮下のセンサーによりグルコース値を連続で測定し、5分ごとにスマートフォンのアプリに血糖値を送信する。センサーは最長10日間の使用が可能となっている。

 グルコース値の高/低に応じてアラートを発信する機能なども備えていて、耐水性があるので、シャワーや水泳でも使える。

 英国ではさらに、FGM(フラッシュグルコースモニタリングシステム)である、「FreeStyleリブレ」も利用されている。

 「このようなウェアラブル技術は、糖尿病治療に変革をもたらし、患者さんのQOL(生活の質)と糖尿病治療の転帰を改善します」と、英国糖尿病学会のヘレン キラーン氏は述べている。

NHS to roll out life-changing glucose monitors to all Type 1 diabetes patients (英国国民医療サービス 2022年8月2日)
NHS Long Term Plan (英国国民医療サービス)
New continuous glucose monitor available on prescription today (英国糖尿病学会2022年8月2日)
Dexcom ONE real-time Continuous Glucose Monitoring (rt-CGM) System available on prescription in the UK, improving access to rt-CGM for people with diabetes (Dexcom 2022年8月1日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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