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2022年09月05日

糖尿病と心臓病はとくに危険な組み合わせ 糖尿病と心不全のより良い管理が必要

 糖尿病の人が心筋梗塞や狭心症などの発作を起こすと、糖尿病のない人に比べ、心不全や死亡のリスクが高くなるという調査結果が、欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表された。

 「研究は、健康的な食事により肥満や過体重を改善し、運動をして身体的に活動的であるなど、より良い生活スタイルにより糖尿病に対策することが重要だとあらためて強調するものです」と、研究者は指摘している。

糖尿病の人が心臓発作を起こすと心不全のリスクが上昇

 糖尿病の人が心筋梗塞や狭心症などの発作を起こすと、糖尿病のない人に比べ、心不全とその後の死亡のリスクが高くなるという調査結果が、欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表された。

 心臓は1日に約10万回、血液をおくりだす、ポンプのようや働きをしている。そのため、心臓にも常に酸素や栄養の含まれる新鮮な血液が必要になる。心臓の筋肉に血液をおくっている冠動脈が細くなったり、つまったりすると、心臓への血液の供給が足りなくなる。

 心臓発作は、冠動脈に突然に異常が起こり、血流が途絶え、十分な酸素を供給できなくなるために起こる、生命に重大な危険をおよぼす状態だ。高齢者に多いものの、若い人に起こることもあり、安心はできない。

 心臓発作の原因は、狭心症や心筋梗塞、さらには不整脈による心停止など。心臓の筋肉の機能は完全には低下していないが、心臓への血のめぐりが悪くなるのが狭心症。冠動脈がさらに完全につまったり、細くなったりして、心臓の筋肉細胞が死んでしまい機能が低下するのが心筋梗塞。

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心臓発作で入院した1万2,660人の患者を調査

 「研究は、健康的な食事により肥満や過体重を避け、運動をして、身体的に活動的であるなど、より良い生活スタイルにより糖尿病に対策することが重要だとあらためて強調するものです」と、フランスのパリ-ジョルジュ ポンピドゥー欧州病院のニコラ ダンチン教授は言う。

 「糖尿病とともに生きる人には、とくに冠動脈疾患や心臓発作を経験したことのある患者さんには、血糖値の管理を良好に保ち、心不全のリスクを低下させる治療が必要です」としている。

 研究は、フランスで実施された全国調査のデータを使用したもので、2005年~2015年に心臓発作で入院した1万2,660人の患者が対象になった。研究グループは、糖尿病の人が糖尿病ではない人に比べ、入院中および翌年に心不全を発症する可能性が高いかどうかを分析した。

 糖尿病患者では、心臓発作の翌年に非致死性心不全で再入院した患者と、心不全を発症しなかった患者の、5年間の死亡率を比較した。

動脈硬化を改善・予防するために生活スタイルの改善が必要

 糖尿病の適切な治療を受けず、血糖値が高い状態が続くと、血管が傷ついて、将来的に心臓病や、腎臓病、失明、足の切断といった、糖尿病の合併症が起こりやすくなる。

 高血糖は血管の老化を促し、血管が硬くなったり、狭くなる「動脈硬化症」を進める原因にもなる。

 血管の内膜に悪玉のLDLコレステロールがたまり、血液の通り道が狭くなる「アテローム動脈硬化」は、血液が十分に流れている状態であれば自覚症状はあまりない。しかし、必要な血液が流れない状態になってくると、狭心症や心筋梗塞があらわれる。

 高血糖のほかに、高血圧や、LDLコレステロールが高かったり、中性脂肪(トリグリセリド)が高いなどの脂質異常症、肥満なども、動脈硬化症につながる。

 動脈硬化を改善・予防するために、「食事」「運動」「ストレス対策」といった生活スタイルの改善が必要になる。

糖尿病と心臓病が重なると心不全や死亡のリスクが上昇

 「研究では、10年間に急性心筋梗塞で入院した患者さんの約25%は、自分が糖尿病であることを知っていました。心臓発作を起こした患者で糖尿病が多いことは、ほとんどの心臓専門医は知っており、今回の調査でも一致していました」と、ダンチン教授は言う。

 心不全とは、心臓の機能が低下し、十分な血液を全身におくりだせなくなった状態。

 心筋梗塞で入院したときに、糖尿病の人の32%が心不全を発症したのに対し、糖尿病ではない人では17%となり、糖尿病の人は心不全を発症するリスクが56%高いことが示された。

 また、心臓発作を経験し生き延びた人では、糖尿病の人の5.1%が、翌年に非致死性の心不全で入院したのに対し、糖尿病でない人で入院したのは1.8%にとどまり、糖尿病の人は心不全のリスクが44%高いことが示された。

 さらに、心臓発作を経験した1年後に生存していた糖尿病の人のうち、その年に心不全で入院した患者の56%が、その後の4年間に死亡したのに対し、心不全のない患者で死亡したのは21%だった。

 心不全により、5年間の死亡リスクは73%上昇することが示され、リスクの増加は、インスリンを必要としている糖尿病患者でとくに顕著であることも分かった。

糖尿病と心不全のより良い管理が必要

 「糖尿病の人は、心臓発作を経験した後に、心不全を発症するリスクがかなり高いことが明らかになりました。さらに、心臓発作を経験した後に心不全を発症した糖尿病患者さんはその後、死亡リスクが高いことも分かりました」と、ダンチン教授は言う。

 「糖尿病を良好にマネジメントするために、さらなる努力が必要です。心臓発作を起こした糖尿病の人は、心不全や有害な長期的影響を避けるために、より良い管理が必要となります。糖尿病の人には、食事や運動などの生活スタイルの改善が求められます」としている。

Diabetes and heart attack is a particularly risky combination (欧州心臓病学会 2019年9月3日)
Management of patients with acute ST-elevation myocardial infarction: Results of the FAST-MI Tunisia Registry (PLOS ONE 2019年2月22日)
Increased mortality risk in diabetic patients discharged from hospital with insulin therapy after an acute myocardial infarction: Data from the FAST-MI 2005 registry (European Heart Journal: Acute Cardiovascular Care 2017年7月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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