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2022年05月30日
「糖尿病予備群」の段階で心臓病リスクは上昇 45歳以下も油断できない 食事と運動で対策
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病予備群 糖尿病合併症

心筋梗塞や狭心症などの心臓病のリスクは、「糖尿病予備群」の段階で上昇することが、18~44歳の780万人以上の若い人を対象とした調査で明らかになった。
糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が高くなっている糖尿病予備群の人は、将来に2型糖尿病を発症するリスクが高いだけでなく、心臓病のリスクも上昇している。
「健診で"血糖値が高い"と指摘されたら、それは新たな行動を起こすための"アラート(注意報)"だと理解するべきです。45歳以下の若い人も、油断するべきではありません」と、研究者は述べている。
心臓病リスクは糖尿病予備群の段階で上昇
心筋梗塞や狭心症などの心臓病のリスクは、「糖尿病予備群」の段階で上昇することが、18~44歳の780万人以上の若い人を対象とした調査で明らかになった。これは、米国心臓学会(AHA)の2022年度年次学術会議で発表されたもの。 糖尿病予備群(前糖尿病)は、糖尿病と診断されるほど血糖値は高くはないが、通常より高い場合に判定される。米国では、空腹時血糖値が100~125mg/dLであると、糖尿病予備群とされる。*
* 日本では、空腹時血糖値が110~125mg/dLであったり、糖負荷試験を行った場合の2時間値が140~199mg/dLであると、「境界型糖尿病」と判定される。なお、空腹時血糖値が100~109mg/dLの場合は、「正常高値」とされる。
成人の3分の1以上が糖尿病予備群
糖尿病予備群は、将来に2型糖尿病を発症するリスクが高く、その数は多い。米国国立衛生研究所(NIH)によると、米国成人8,800万人が糖尿病予備群で、これは米国の成人の3分の1以上に上る。 「糖尿病予備群を、治療をしないで放置していると、健康に大きな影響がもたらされます。2型糖尿病に進展する可能性が高いだけでなく、糖尿病予備群の段階で、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが上昇することが分かってきました」と、マーシーカトリック医療センターの内科医であるアクヒル ジャイナ氏は言う。 「米国では、若い人の心臓病の発症が増えています。糖尿病予備群の段階から、対策をすることが必要です」としている。糖尿病予備群の段階で心臓病リスクが7倍以上に上昇
研究グループは、米国の最大の入院患者のデータベースである「National Inpatient Sample」のデータから、2018年の18~44歳の成人の心臓病に関連する入院の記録を調べた。 その結果、2018年に入院した780万人以上の成人のうち、0.4%にあたる3万1,000人以上が、血糖値が高く、糖尿病予備群に該当した。心臓病の発生リスクは、血糖値が正常な人では0.3%だったが、糖尿病予備群では2.15%と7倍以上に上昇した。 また、糖尿病予備群では、コレステロール値が高い人が68.1%に上り(正常な人では47.3%)、肥満も48.9%と多かった(正常な人では25.7%)。"血糖値が高い"と指摘されたら放っておかないことが大切

心疾患を予防するために糖尿病などの治療をしっかり行うことが重要
日本でも、若い年代で心疾患を発症する人は増えつつある。心疾患は、日本人の三大主要死因(がん、心疾患、脳卒中)のひとつになっている。心疾患は日本人の死因の2位、脳卒中は3位で、これらの総数は1位のがんとほぼ並ぶ。
心臓は、全身に血液をおくりだすポンプのような働きをしており、心臓自身も多くの血液を必要とする。この心臓に血液を送っているのが「冠動脈」。心筋は、心臓にまわりにある冠動脈から酸素や栄養をうけとっている。
この冠動脈が動脈硬化などによってつまってしまうのが「心筋梗塞」。心筋梗塞では、つまった冠動脈の周囲が壊死におちいる。また、冠動脈の内側が狭くなり、血液が流れにくくなり、心筋が酸素不足となるのが「狭心症」。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などがあり、それらの病気のコントロールが良くないと、心疾患のリスクは高くなる。心疾患を予防するために、そうした基礎疾患の治療をしっかり行うことが重要となる。
Go Heart-Healthy (米国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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