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2022年07月04日

心臓発作の4つの警告サイン 糖尿病の人は心臓発作で強い痛みを感じないことも

 米国心臓学会(AHA)は、心臓発作を起こした人の命を迅速に救うために、心臓発作の警告サインを公開している。
 心臓の健康を最適に保てている人は、5人に1人しかいないという調査結果も発表した。
 心臓病や脳卒中を予防するために、「7つの生活スタイル(ライフ シンプル 7)」を提唱している。

心臓発作の警告サイン こんなときはすぐに受診を

 心臓発作は、心臓の心筋に酸素をもたらす血流が大幅に減少するか、完全に遮断されたときに発症する。

 心臓発作を起こした人の命を迅速に救うためには、すぐに治療を受けることが重要で、そのために心臓発作の警告サインを知っておく必要がある。

 米国心臓学会(AHA)によると、心臓発作の警告サインとして多いのは、▼胸部の不快感、▼上半身の他の部分の不快感、▼呼吸困難、▼冷たい汗、吐き気、立ちくらみなどの兆候だ。

 「こうした兆候がある場合は、迷わず911(米国の緊急通報ダイヤル、日本の119番にあたる)に電話して、すぐに病院に行ってください」と、AHAでは呼びかけている。

心臓発作の警告サイン

胸部の不快感
 ほとんどの心臓発作は、胸の中心部の不快感が数分以上続く。いったん症状が消えても、また戻ってくる場合もある。不快な圧力や圧迫、膨満感、痛みを感じることもある。

上半身の他の部分の不快感
 片方または両方の腕、背中、首、あご、または胃の痛みや不快感が起こることがある。

呼吸困難
 胸部の不快感の有無にかかわらず、息切れや呼吸困難が起こる可能性がある。

その他の兆候
 その他の考えられる兆候としては、冷たい汗、吐き気、立ちくらみなどがある。

出典:米国心臓学会「Warning Signs of a Heart Attack」

心臓発作の原因は?

 心臓発作は、狭心症や心筋梗塞などにより、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給する冠動脈への血液供給が激減したり、途絶えてしまうことによって起こる。

 狭心症は、冠動脈で硬化が進行し血流が低下する(心筋虚血)ことによって起こる。運動などをきっかけにして、上記のような胸部の痛みや圧迫感などの症状があらわれる。

 さらに硬化が進み、血栓(血の塊)などで、冠動脈が完全に詰まってしまうと、血流が断たれた部位の心筋は急速に壊死におちいる。これが急性心筋梗塞で、通常は激しい胸痛や症状があらわれる。

糖尿病の人は心臓発作が起きても、強い痛みを感じないことも

 ところが、糖尿病で神経障害が進行している人では、狭心症や心筋梗塞の発作を起こしても、強い痛みを感じない場合もある。

 最近、息切れとむくみがひどくて病院に行ったところ、心筋梗塞を起こしていると診断され、すぐ入院になったという糖尿病の人もいる。心臓の血管が詰まっていたのに、胸の痛みを感じることはなかったという。

 これは、「無痛性心筋梗塞」と言われるもので、心筋梗塞が起きると胸痛が出るのが一般的だが、心臓神経に障害があるため、痛みの症状が出ない場合をさす。上記の人は、「こんな深刻な病気になっていたとは、気が付かなかった」と語っている。

 神経障害は糖尿病の合併症のひとつ。血糖値が高い状態が続くと、しびれや痛みを感じたり、その逆に感覚がなくなり、それほど強い痛みを感じなるなどの障害を起こすことがある。

 糖尿病神経障害は、高血糖による神経細胞の変化と、動脈硬化を介した神経細胞への血流不足から生じる。そのため、神経障害を予防するために、血糖コントロールと動脈硬化予防の両方を行うことが重要となる。

心臓の健康が最適の人はわずか5人に1人

 米国心臓学会(AHA)の調査によると、心臓の健康を最適に保てている米国人は、5人に1人しかいないという。

 研究グループは、心臓と脳の健康を測定するために、AHAが指標としている心血管健康スコアを適用し、2013年~2018年の米国健康調査に参加した2万3,400人超の米国人のデータを解析した。

 このスコアは、8つの重要な要素[食事、身体活動、ニコチン曝露、睡眠時間、体重、血中脂質、血糖値、血圧値]にもとづき、心血管の健康を判定するもの。

 その結果、参加者の80%は、心血管の健康状態が最適以下と判定された。

 心血管健康スコアの平均は、成人では64.7だった。80以上のスコアは心血管の健康が「良い」と判定され、50~79のスコアは「中程度」、50未満のスコアは「悪い」と判定される。心血管の健康状態が「良い」と判定された成人は、わずか19.6%だった。

心臓病を防ぐ7つの簡単な方法(ライフ シンプル 7)

 AHAは、心臓病や脳卒中を予防するために、「7つの生活スタイル(ライフ シンプル 7)」を提唱している。

心臓病を防ぐための「ライフ シンプル 7」

(1) 血糖値を下げる
 糖尿病のある人が、血糖値が高い状態を放置していると、心臓病や脳卒中の危険性が高まり、腎臓、目、神経などにも障害がでてきます。血糖値をコントロールすれば、これらの合併症を防ぐことができます。
 2型糖尿病は食事や運動の影響を受けやすいので、生活スタイルを少しずつでも改善していき、かかりつけ医から処方された薬をしっかり飲むことが重要です。

(2) たばこを吸わない
 喫煙は心臓病や脳卒中だけでなく、がんや、慢性肺疾患、呼吸器疾患などの発症率を高めます。たばこをやめるだけで、これらの病気のリスクを減らせます。たばこを吸う人はいますぐ禁煙を。望まない受動喫煙も避けましょう。

(3) 健康的な食事
 健康的な食事を続ければ、体重・血圧値・血糖値・コレステロール値を改善できます。カロリーの摂り過ぎを防ぎながら、必要な栄養素をバランス良く摂ることが大切です。
 そのために、1日3食をしっかりと食べ、全粒粉、野菜や果物、海藻、大豆食品、魚類などを増やすことが勧められます。飽和脂肪酸、塩分、動物性食品、高カロリーのお菓子や清涼飲料は減らしましょう。

(4) 運動をする
 運動を習慣として続ければ、血糖値・血圧値が下がり、血中の過剰な中性脂肪が減り、骨が丈夫になり骨粗鬆症の予防にもなります。がんの発症リスクも下げられます。ストレス解消にもつながり、夜はよく眠れるようになります。長時間座ったまま過ごす時間をなるべく減らして、体を動かす時間を増やしましょう。

(5) 健康的な体重を維持する
 体重をコントロールし、体についている余分な脂肪や不要な体重を減らすと、心臓、肺、血管、骨格への負担が軽減されます。肥満に脂質異常や、高血圧、高血糖などが重なると、心臓の負担はさらに増えます。体重を減しただけでも、これらが改善することも多いのです。
 1日の食事で必要なカロリーを確かめて、それを超えて食べ過ぎないようにし、ウォーキングなどの運動を続ければ、体重を減らすことができます。

(6) 血圧を管理する
 高血圧は心臓病や脳卒中の主要な危険因子です。健康な体重を維持すること、塩分の摂取量を減らすこと、かかりつけ医に処方してもらった薬をきちんと飲むことが大切です。
 高血圧は自覚症状が乏しく自分では分からないので、定期的に検査をすることが重要です。家庭用血圧計を入手して、朝と夜寝る前に血圧を測ってみましょう。

(7) コレステロールを管理する
 コレステロールの異常は、死因の上位を占める心臓病や脳卒中の原因になります。運動を習慣化し、加工肉などの動物性の食品を控え、低脂肪の乳製品や体に良い植物油を選び、食生活を改善すれば、コレステロール値を改善できます。
 動物性脂質の多い食事を摂り過ぎると、血液中のコレステロールが異常に増えやすく、心臓病や脳卒中の原因になります。コレステロール値が気になるときは医師に相談しましょう。

米国心臓学会が公開しているポスター
心臓発作の警告サインを知っておきましょう

Only 1 in 5 people in the U.S. has optimal heart health (米国心臓学会 2022年6月29日)
Status of Cardiovascular Health in US Adults and Children Using the American Heart Association's New "Life's Essential 8" Metrics: Prevalence Estimates from the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES), 2013-2018 (Circulation 2022年6月29日)
Warning Signs of a Heart Attack (米国心臓学会)
Heart Attack Symptoms in Women (米国心臓学会)
Life's Simple 7 (米国心臓学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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