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2022年04月05日
生活スタイル改善は若い頃から開始する必要が 30代の高血糖や脂質異常は認知症リスクを高める
30代の人は、健診でコレステロール値や血糖値が高めと指摘されても、「まだ若いから」と油断をして、また毎日を忙しく過ごしているので、食事や運動などの生活スタイルの改善に取り組むのをためらってしまう傾向がある。
35歳という早い時期に血糖値が高かったり、善玉のHDLコレステロール値が低かったり、中性脂肪値が高いと、年齢を重ねるとアルツハイマー病の発症リスクが上昇することが明らかになった。
心臓病のリスクを高める不健康な生活スタイルは、脳卒中やアルツハイマー病などの脳の疾患のリスクも高めることも分かった。
「認知機能の低下や認知症を予防したり進行を遅らせるために、若いうちから対策をすることが重要です」と、研究者は述べている。
30代の高血糖や脂質異常が将来のアルツハイマー病リスクと関連
30代は、仕事のキャリアアップ、恋愛、結婚、新たな家族の誕生など、人生で変化に満ちた時期だ。それだけに希望をもっている人も多い。 しかし、健診で示されたコレステロール値や血糖値を無視して、30代を考えなしに過ごしていると、年齢を重ねてから認知症を発症するリスクが高まるおそれがある。 米ボストン大学医学部の研究によると、35歳という早い時期に血糖値が高かったり、善玉のHDLコレステロール値が低かったり、中性脂肪値が高いと、数十年後にアルツハイマー病の発症リスクが上昇する。アルツハイマー病は、認知症のなかでもっとも多い脳の疾患だ。 研究では、51~60歳のときに血糖値が高かった人も、高齢になるとアルツハイマー病のリスクが高いことも分かった。 「アルツハイマー病は次第に進行していきますが、現在はまだ治療によって根本的に治すことができません。若い頃から、将来にアルツハイマー病を発症するリスクについて注意深くなり、生活スタイルの改善を心がけるべきです」と、ボストン大学遺伝バイオメディカル部のリンゼイ ファラー氏は言う。 「食事や運動など、健康的な生活をおくり、健診で異常値が出ている人は、治療を受けて管理をすることで、アルツハイマー病だけでなく、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを下げることができます。生活スタイルを変えるのに、早過ぎたり遅過ぎたりすることはありません」としている。 関連情報血糖値やコレステロール値が高いとアルツハイマー病のリスクが上昇
今回の研究は、米国で1940年代から行われている、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるための大規模研究である「フラミンガム研究」で得られたもの。詳細は、「Alzheimer's & Dementia」に掲載された。 研究グループは、4,932人を対象に、年齢により3群(35~50歳、51~60歳、61~70歳)に分類したうえで、血清脂質値、血糖値、血圧などとアルツハイマー病発症との関連を追跡して調査した。 研究開始時に35~50歳だった群は、平均35.2年の期間に、5.5%がアルツハイマー病を発症した。51~60歳の時点で、さらにはそれよりも若い35~50歳のときに、検査で異常値が出ていると、将来にアルツハイマー病を発症するリスクが上昇することが示された。 血糖値については、51~60歳時点で15mg/dL高いごとに、アルツハイマー病のリスクが15%上昇するという関連がみられた。 善玉のHDLコレステロールについては、35~50歳の時点の値が15mg/dL高いごとに、リスクは15%低下し、51~60歳の時点では、リスクは18%低下した。また、35~50歳時点で中性脂肪値が高いと、リスクは33%上昇した。 「これまでも、コレステロール値や血糖値が高いことが、将来にアルツハイマー病を発症するリスクの上昇と関連していることが報告されています。2型糖尿病や、そのリスクを高める生活スタイルが、アルツハイマー病の発症と関連があるという報告もあります」と、ファラー氏は言う。 「しかし、今回の研究ではその関連は、考えられていたよりも、人生のはるかに早い時期に始まることが示されました。若い頃から、改善が可能なリスク因子を減らし、必要のある人は治療をきちんと受けるべきです。脂質や血糖コントロールを改善する治療は進歩しています」としている。心臓に良いことは脳にも良い 若いうちから対策を
認知症を予防するための生活スタイル
▼血圧をコントロールする、
▼糖尿病などのある人は治療を受ける、
▼健康的な体重を維持する、
▼健康的な食事をする、
▼運動を習慣として行う、
▼タバコを吸わない、
といった健康的な生活スタイルは、心臓だけでなく脳を守るためにも必要だ。 139件の研究をメタ解析した研究によると、中年期に高血圧があると、年齢を重ねてから認知障害を経験する可能性が5倍高く、アルツハイマー病を発症する可能性が2倍高いという。 また、最大42年間の追跡調査を行った縦断研究のメタ解析によると、肥満の人は認知症を発症するリスクが3倍高い。さらに、37件の前向き研究をメタ解析した研究では、喫煙する習慣のある人は、アルツハイマー病や血管性認知症を発症するリスクが30~40%高いことが示された。 心不全や心房細動、冠状動脈性心疾患などの心臓病のある人も、認知症を発症するリスクが高いという。これらの病気のある人は、適切な治療を受けることが大切だ。
心臓と脳の健康には深い関連がある
「心血管疾患と同じように、アルツハイマー病などの認知症は、世界中で多大な負担となっており、患者さんやご家族などの生活の質(QOL)を低下させる大きな原因になっています」と、ハーバード大学医学部とベス イスラエル ディーコネス医療センターの心臓病専門医であるコニー ツァオ氏は言う。 「心臓の病気があると、脳の病気を発症する可能性も高くなります。つまり、心臓と脳の健康には深い関連があるのです」。 「革新的な研究を通じて脳科学を進歩させることは、認知障害や認知症の原因解明につながるだけでなく、心臓と血管の健康にも関わり、予防・治療法の開発に新たな光を当てることにつながります。脳の健康や、年齢と血管の健康の関連についてより良く理解することが、全体的な健康と幸福を高めるために重要です」としている。Midlife lipid and glucose levels are associated with Alzheimer's disease (Alzheimer's & Dementia 2022年3月23日)
What's good for the heart is good for the brain (米国心臓学会 2022年1月26日)
Heart Disease and Stroke Statistics--2022 Update: A Report From the American Heart Association (Circulation 2022年1月26日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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