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2022年05月18日

座ったままの時間を減らすと糖尿病が改善 1日1時間減らしただけで効果がある

 毎日の座ったままの時間を減らすことで、わずか3ヵ月で糖尿病や心臓病のリスクを減らす効果を得られる可能性があると、フィンランドのトゥルク大学が発表した。

 毎日座ったままの時間を約1時間減らし、軽めの運動や身体活動を増やすことで、血糖コントロールやインスリン感受性、肝臓の健康状態がそれぞれ改善した。

座ったまま過ごす時間が長い人が多い

 「2型糖尿病と心血管疾患は、世界でもっとも多くみられる慢性疾患です。これらの病気を発症するリスクは、とくに運動不足や不健康な食事によって高まります。過体重や肥満も、代謝障害につながることが多く、やはりリスクを高めます」と、トゥルク大学健康科学部のタル ガースウェイト氏は言う。

 運動を習慣として行うことは、体重コントロールや2型糖尿病の予防・改善に役立つことがよく知られている。しかし、多くの人は、仕事や家事、育児・介護などが忙しいという理由で、活発な運動や身体活動を週に計150分(1日に30分)行うという運動ガイドラインの推奨を満たしていない。1日の大半を、座ったまま過ごしているという人も多い。

 そこで、同大学のPET検査センターと健康増進研究センターのグループは、3ヵ月間の介入により、座りがちな時間を減らし、運動や身体活動を増やすことで、どのような健康上のベネフィットを達成できるかを調べる研究を行った。

 研究には、座りがちの生活をしており運動不足になっており、2型糖尿病と心血管疾患のリスクの高い、生産年齢の中高年64人が参加した。

座位時間を1日に50分減らすと血糖値やインスリン感受性が改善

 研究者は、参加者を2つのグループに無作為に分けて比較をした。1つは介入グループで、1日1時間座っている時間を減らし、立ったまま過ごす時間を増やし、軽めの運動や身体活動も増やすよう指導された。もう1つの対照グループで、従来通りの座りがちな生活を続けた。

 その結果、介入グループは、運動や身体活動を増やしたことにより、座りがちな時間を平均して1日に50分短縮することに成功した。3ヵ月間で、血糖コントロールやインスリン感受性が改善し、肝臓の健康状態も改善した。対照グループでは変わらなかった。

 「座っている時間を減らし、軽めの運動や身体活動の量を増やすだけで、健康上のベネフィットを得られるというのは心強い情報です。多くの人はそれくらいなら、毎日の生活で実行できるのではないでしょうか」と、ガースウェイト氏は言う。

 「今回の研究デザインがユニークなのは、両グループで、座りがちな時間と身体活動を3ヵ月の全期間を通じて、活動量計を身につけてもらい測定したことです。これまで研究は、開始時と終了時の数日間しか測定していないことが多かったのです」としている。

運動の時間や強度を増やしていくとさらに効果的

 「ただし、座ったまま過ごす時間をなるべく減らすことは、運動量を増やすための簡単な出発点であることに注意が必要です。糖尿病や心血管疾患の危険因子がいくつもある人の場合、ただ座りがちな時間を減らすだけでは、疾患を改善するためにおそらく十分ではありません」と、ガースウェイト氏は言う。

 「座っている時間を減らすことに加えて、運動や身体活動の量や強度を増やすことによって、より大きな利益を得ることができます」としている。

 研究グループは、次のステップとして研究期間6ヵ月に延長して、2型糖尿病と心血管疾患の危険因子に加えて、エネルギー代謝や体組成にどのように影響するかを調査することを計画しているという。

Reducing sedentary time mitigates the risk of type 2 diabetes and cardiovascular diseases (トゥルク大学 2022年5月2日)
Effects of reduced sedentary time on cardiometabolic health in adults with metabolic syndrome: A three-month randomized controlled trial (Journal of Science and Medicine in Sport 2022年4月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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