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2022年05月17日

「ファストフード」が糖尿病の原因? 健康的な食事に切り替えると糖尿病リスクは減少

 ハンバーガー・ホットドッグ・ピザ・フライドチキン・ドーナツなどのファストフードが糖尿病リスクを上昇させるという研究が発表された。

 健康的な食事スタイルに切り替えると、メンタルヘルスも改善する。食事などの生活スタイルを改善することで、糖尿病の遺伝リスクも減らせるという研究も発表されている。

ファストフードは不健康?

 ファストフードとは、短時間で調理でき、注文してからすぐ食べられる手軽な食品のこと。ハンバーガー・ホットドッグ・ピザ・フライドチキン・ドーナツ・丼もの・ラーメン・お好み焼きなどがある。

 健康志向の高まりを受けて、ファストフードにも健康的なメニューは増えているものの、依然としてその多くはポーションサイズが大きく、高カロリーで、脂肪・糖質・塩分が多く、栄養価が低い。

 たまに利用するのなら良いが、ファストフードを中心とした食事スタイルは健康に悪いことが、世界中の多くの研究で示されている。

 ファストフードをよく利用している人は、それに含まれるカロリーを大幅に過小評価してしまう傾向があり、容易にカロリーを摂り過ぎてしまうという調査結果も報告されているので、注意が必要だ。

ファストフードが糖尿病リスクを高める

 米ミネソタ大学医療センターの研究で、ファストフードを多く摂る食事スタイルは、2型糖尿病や心臓病のリスクを高めることが示されている。研究グループは、シンガポールに在住している約5万2,000人の中国人の食生活を、1993年から16年間にわたり調査した。

 その結果、ファストフードを週に1回以上利用している人は、利用していない人に比べ、心臓病で死亡するリスクが20%高く、利用頻度が週に2~3回に増えると、リスクは50%高くなり、さらに週に4回以上になると、リスクは80%近くまで上昇することが分かった。

 また、ファストフードを週に2回以上食べていると、2型糖尿病の発症リスクが27%上昇することも示された。

 「米国や西洋からはじまったファストフードは、グローバリゼーションの高まりを受けて、世界中に広がっています。その多くは、健康に対して悪影響をもたらしています。伝統的なより健康的な食事スタイルの価値を見直すべきです」と、ミネソタ大学公衆衛生学部のアンドリュー ウーデゴール氏は述べている。

関連情報

ファストフード店が多いと糖尿病リスクが上昇

 ファストフードを利用しやすい環境にいることも、糖尿病リスクを上昇させるという調査結果も発表されている。これは、2018年~2020年にバングラデシュとスリランカの約1万2,000人の住民を対象に、環境マッピング調査と横断的健康調査を実施したもの。

 その結果、自宅の近くにファストフード店が1つ以上あると、糖尿病と診断される割合が16%増加することが分かった。家の近所のファストフード店の密度が高いほど、糖尿病と診断される割合は上昇し、血糖値の上昇とも関連しているという。

 「環境を対象とした介入が、糖尿病を予防・改善するのに効果的である可能性があります。健康的な食品を入手しやすい環境は、糖尿病リスクを減らすのに有用であると考えられます」と、英国のロンドン インペリアル カレッジ ビジネス スクールのマリサ ミラルド氏は言う。

 「南アジアでは、成人の11人に1人が糖尿病で、年間に74万7,000人の早期死亡を引き起こしていますが、これらは予防が可能です」としている。

健康的な食事に切り替えるとメンタルヘルスも改善

 オーストラリアのシドニー工科大学の研究によると、ファストフード中心の不健康な食事をしていた男性が、健康的な食事スタイルに切り替えると、うつの症状が改善する。

 研究グループは、18~25歳の男性72人を対象に、12週間のランダム化比較試験を実施。半数は従来通り、ファストフード中心の食事を続けたが、半数は栄養士の指導を受け、カラフルな野菜、豆類、全粒穀物、青魚、オリーブオイル、無塩のナッツ類などを豊富に摂る、健康的な食事スタイルに切り替えた。

 その結果、うつ病などのメンタルヘルスを測る尺度や、生活の質(QOL)を測る尺度は、健康的な食事に切り替えたグループでは大幅に改善した。

 「ファストフード、糖質の多い食品、脂肪の多い加工肉などの摂取量を減らしながら、新鮮なホールフードを中心とした質の高い食事に切り替えることは、心の健康の改善にも役立つことが示されました」と、同大学保健学部のジェシカ ベイズ氏は言う。

 「栄養士の指導を受けた男性の多くは、新しい食事スタイルに取り組むことに意欲的でした。短期間で食事の内容を大幅に改善することができました」。

 「食事がメンタルヘルスに影響をもたらす理由はたくさんあります。たとえば、私たちが幸福を感じるのを助ける化学物質であるセロトニンの多くは、腸内細菌によって腸内で作られることが知られています」と、ベイズ氏は説明している。

 「野菜や全粒穀類、豆類、大豆などの食物繊維が豊富に含まれる食品を摂ることで、腸内環境の改善も期待できます」としている。

生活改善で糖尿病の遺伝リスクも減少できる

 2型糖尿病の発症には、食べ過ぎや運動不足、ストレスといった環境的な因子も関わっているが、遺伝的な因子も大きく影響することが明らかになっている。たとえば体質としてインスリンの分泌量が少なめの人は、糖尿病になりやすいことが知られている。

 そうした遺伝的に糖尿病になりやすい人でも、健康的な食事スタイルを続けることで、糖尿病リスクを低下できることが、米国人を対象とした大規模な調査で示されている。

 「遺伝的な因子と食事の質は、それぞれ独立して2型糖尿病に影響します。今回の大規模な調査で、健康的な食事は、糖尿病の遺伝的リスクのある人でも、糖尿病リスクを低下させることにつながることが明らかになりました」と、マサチューセッツ総合病院のジョルディ メリノ氏は述べている。

 研究は、米国の医療従事者など約3万6,000人が参加した3件のコホート研究のデータを分析したもの。その結果、遺伝的リスクに関係なく、不健康な食事スタイルは、健康的な食事スタイルに比べて、2型糖尿病のリスクを30%上昇させることと関連していた。

Consumers largely underestimating calorie content of fast food (BMJ-British Medical Journal 2013年5月23日)
Consumers' estimation of calorie content at fast food restaurants: cross sectional observational study (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2013年5月23日)
Fast food intake increases risk of diabetes and heart disease in Singapore (米ミネソタ大学医療センター 2012年7月2日)
Western-Style Fast Food Intake and Cardiometabolic Risk in an Eastern Country (Circulation 2012年7月2日)
Living near fast food restaurants in South Asia may increase risk of Type 2 diabetes (PLOS 2022年4月26日)
Food environment and diabetes mellitus in South Asia: A geospatial analysis of health outcome data (PLOS Medicine 2022年4月26日)
A better diet helps beat depression in young men (シドニー工科大学 2022年5月9日)
The effect of a Mediterranean diet on the symptoms of depression in young males (the "AMMEND" study): A Randomized Control Trial (American Journal of Clinical Nutrition 2022年4月20日)
Poor diet associated with increased diabetes risk across all gradients of genetic risk (PLOS 2022年4月26日)
Polygenic scores, diet quality, and type 2 diabetes risk: An observational study among 35,759 adults from 3 US cohorts (PLOS Medicine 2022年4月26日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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