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2022年03月18日

タンパク質をバランス良く摂ると高血圧リスクが66%減少 「動物性」と「植物性」のバランスが大切

 タンパク質をいろいろな食品から摂り、「動物性」と「植物性」のバランスを良くすると、高血圧を発症するリスクが66%減少することが、中国に住む1万2,200人の成人を対象とした調査で明らかになった。

 「食事のバランスを調整することは、高血圧と戦うために簡単にアクセスできる効果的な方法です」と、研究者は述べている。

タンパク質は「動物性」と「植物性」をバランス良く

 タンパク質は、肉・卵・牛乳・魚などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、野菜・全粒穀物・大豆・豆類、ナッツなどに含まれる「植物性タンパク質」に分けられる。

 筋肉はタンパク質でできており、合成と分解が常に繰り返されているので、食事でタンパク質をしっかり摂ることが必要だ。

 タンパク質が不足して筋肉が減ると、ブドウ糖の消費が減って血糖値が上がってしまう。また、筋肉には余分なブドウ糖を貯蔵する働きもあり、筋肉が減るとそれができなくなり、血糖値が上がりやすくなる。

 筋肉を維持するためには、1日に体重1kgあたりタンパク質を1g以上摂りたい。日本人の食事摂取基準によると、1日に必要なタンパク質の推奨量の平均は、18~64歳の男性は65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は50gとなっている。

 しかし、注意したいのは、動物性食品を食べ過ぎないようにし、バランス良く摂った方が良いということだ。肉類などの動物性食品はアミノ酸スコアが高く、良質なタンパク源になる。とくに高齢者では、フレイルやサルコペニアを予防するために、良質なタンパク質を摂取することは重要となる。

 しかし、肉を食べ過ぎると、飽和脂肪酸やコレステロールが増えてしまうおそれがある。飽和脂肪酸を摂り過ぎると、血液中に悪玉コレステロールをとどこおらせ、動脈硬化の原因となる。

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タンパク質をいろいろな食品から摂ると高血圧リスクは減少

 肉・魚・牛乳・チーズ・卵などの動物性食品だけでなく、大豆・全粒穀物・野菜・マメ・ナッツなどの植物性食品を含めて、さまざまな供給源からタンパク質を摂ることで、高血圧のリスクを減少できることが、中国の1万2,200人の成人を対象とした研究で明らかになった。

 多様な供給源から、タンパク質などの栄養をバランス良く摂ることで、成人が高血圧を発症するリスクを減少できる可能性がある。研究成果は、米国心臓学会(AHA)が刊行する医学誌「Hypertension」に発表された。

 世界保健機関(WHO)などの調査によると、世界の高血圧人口は過去30年間で倍増し、11億人超に達した。世界の男性の4人に1人、女性の5人に1人が高血圧とみられている。日本でも高血圧(最高血圧が140mmHg以上)の人の割合は、男性で30%、女性25%だ。

 高血圧を治療しないで放置していると、心臓・脳・腎臓などの病気のリスクが高まり、早期死亡の原因になる。高血圧と糖尿病があわさると、動脈硬化がより進行しやすくなり、これらの病気のリスクはさらに高くなる。

 糖尿病に高血圧が加わると、血糖や血圧が正常な人に比べ、心筋梗塞や脳卒中の発症率が6~7倍に高まるという報告がある。

日本でも「主食・主菜・副菜」を推奨

 「食事の栄養を調整することは、高血圧と戦うために簡単にアクセスできる効果的な方法になる可能性があります。タンパク質は、脂肪と炭水化物と並ぶ、三大栄養素のひとつです」と、中国の国立腎臓病臨床研究センターのXianhui Qin氏は言う。

 日本を含め世界中で、穀類や野菜の摂取が減少し、動物性食品の摂取は増加し、バランスの良くない食事が増えている。多様な食材をバランス良くとりいれることが大切で、日本でも「主食・主菜・副菜」をそろえることが推奨されている。

 不健康な食事を続けていると、心血管疾患や心血管疾患による死亡のリスクが上昇する。AHAは、血管の健康を改善するために、タンパク質を動物性食品だけでなく、植物性食品からも摂るようアドバイスしている。

タンパク質をバランス良く摂ると高血圧リスクが66%減少

 研究グループは、1997年~2015年に実施された中国健康栄養調査に参加した、中国に住む約1万2,200人の成人を、平均6年追跡して調査した。参加者の調査開始時の平均年齢は41歳で、47%が男性だった。

 24時間の3回の食事や家庭の食品貯蔵などについて調べ、食事摂取量を推定した。さらに、全粒穀物・精製穀物・加工肉・未加工肉・鶏肉・魚・卵・マメ類という、8種類のさまざまなタンパク質の供給源についても調査し、「タンパク質スコア」を作成した。

 最高血圧が140mmHg以上および/または最低血圧が90mmHg以上の場合や、血圧降下薬を服用している、医師が高血圧と診断した場合に、高血圧と判定した。

 その結果、参加者の35%が、追跡期間中に高血圧を発症した。解析したところ、タンパク質の供給源がもっとも多様な群(スコアが4以上)では、もっとも画一な群(スコアが2未満)に比べ、高血圧を発症するリスクが66%減少した。

 また、タンパク質の摂取量の総量についても調べたところ、摂取量が最も少ない人ともっとも多い人で、高血圧の発症リスクが上昇することが分かった。

 「心臓の健康を守るために、タンパク質の供給源が多様で、バランスのとれた食事を摂ることが、高血圧の発症を防ぐのに役立つ可能性があります。また、タンパク質の摂取量は、少な過ぎても、多過ぎても、高血圧に悪い影響があらわれます。タンパク質は必要な量を摂ることが重要です」と、Qin氏は述べている。

Eating protein from a greater variety of sources may lower risk of high blood pressure (米国心臓学会 2022年3月10日)
Inverse Association Between Variety of Proteins With Appropriate Quantity From Different Food Sources and New-Onset Hypertension (Hypertension 2022年3月10日)
Hypertension (世界保健機関)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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