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2021年12月20日

牛乳を毎日1杯飲むと脳卒中リスクが低下 認知症リスクも低下 牛乳に血圧を下げる効果が?

 日本人女性は、牛乳を1日にコップ1杯程度飲むと、脳梗塞を予防する効果が高まる可能性がある。

 牛乳を1日にコップ1杯程度(週に7~12杯)飲んでいる女性は、週にコップ2杯未満の女性に比べ、脳梗塞の発症リスクが47%低下することが、岩手医科大学による研究で明らかになった。

日本人が牛乳を飲む習慣が定着したのは第二次世界大戦後

 岩手医科大学は、岩手県北地域コホート研究の10年間の追跡データを用いて、牛乳摂取頻度と脳卒中発症リスクとの関連を解析し、牛乳摂取による脳梗塞予防効果を明らかにしたと発表した。

 牛乳・乳製品は洋食の主要な構成要素であり、欧米人の牛乳摂取による健康影響については数多く報告されている。一方、日本人が牛乳を飲む習慣は、第二次世界大戦後に、学校給食への導入を機に全国に広まった比較的新しい食習慣だ。

 現在もなお、日本人成人の牛乳摂取量は欧米人に比べとても少ない。また、日本人と欧米人が発症しやすい病気を比べると、欧米人では心筋梗塞のリスクが高いのに比べて、日本人では脳卒中のリスクが高い。

 これまで日本人を対象とした研究で、牛乳を飲む習慣が、脳卒中の発症にどのように影響を及ぼすかについては調べられていない。そこで研究グループは、牛乳の摂取量が少なく、脳卒中の発症が多い日本人集団で、牛乳摂取と脳卒中発症リスクとの関連を明らかにするために、岩手県北地域コホート研究の10年間の追跡データを用いて解析した。

 研究は、岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座の丹野高三特任教授、岩手県北地域コホート研究グループ(研究事務局:岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座)の研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。

牛乳を週に7~12杯飲んでいる女性は脳梗塞のリスクが47%低下

 研究グループは、岩手県北地域コホート研究に参加した1万4,121人を対象に、食物摂取頻度調査法を用いて、コップ1杯の牛乳を飲む頻度を調査した。

 回答結果にもとづき、参加者を「週2杯未満」「週2杯以上7杯未満」「週7杯以上12杯未満」「週12杯以上」の4グループに分けて比べた。脳卒中発症は、岩手県地域脳卒中登録事業のデータと研究参加者のデータを照合することで確認した。

 その結果、脳梗塞の発症リスクは、女性では牛乳の摂取頻度が週2杯未満のグループに比べて、週7杯以上12杯未満のグループで47%低下した。一方、男性では統計学的に有意なリスク減少はみられなかった。

牛乳の摂取頻度別の脳梗塞発症リスク

出典:岩手医科大学、2021年

なぜ牛乳を飲むと脳梗塞の予防につながるのか

 牛乳を飲む習慣のある女性は、脳梗塞の発症リスクが低下する理由として、研究グループは下記の2つを挙げている――。

  • 牛乳を飲む人の健康的な生活習慣・食習慣による影響
  •  今回の研究では、牛乳を飲む人では、牛乳を飲まない人(週2杯未満)に比べて、喫煙者や大量飲酒をする人が少なく、習慣的に運動していたり、魚・大豆タンパクや野菜・果実を多く食べている傾向がみられた。

     喫煙や大量飲酒は脳卒中の危険因子であり、運動習慣、魚・大豆タンパクや野菜・果実の摂取は脳卒中の予防因子となる。牛乳を1日1杯飲む人は、健康的な生活習慣・食習慣をもっている傾向があり、それが脳卒中のリスク低下に影響した可能性が考えられる。

  • 牛乳に多く含まれる栄養素による降圧作用などの影響
  •  牛乳に多く含まれるミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)は、血圧を下げる効果があることが知られている。研究に参加した人も、牛乳を飲む人では、血圧が低い傾向がみられた。

     高血圧は脳卒中の最大の危険因子だ。牛乳に含まれるミネラルによって血圧上昇が抑制され、脳卒中の発症リスクが低下した可能性が考えられる。

 一方、男性では明確な関連がみられなかった。これについては、男性は女性に比べて、牛乳の摂取以外の脳卒中の危険因子(喫煙や大量飲酒)をもっている人が多く、牛乳摂取による脳卒中発症への影響があらわれにくかった可能性があるという。

日本人は牛乳を毎日コップ1杯飲むと健康効果を得られる

 今回の研究の結果では、日本人女性では「牛乳を週7杯以上12杯未満(1日あたり1杯程度)」飲むと、脳梗塞の発症を予防する効果を得られる可能性が示された。

 牛乳をどれだけ飲むと適切であるか明らかにするためにはさらなる研究が必要だが、「コップ1杯は通常150~200mLであるので、それを目安と考えるのが良いと思います」と、研究グループは指摘している。

 また、今回の研究の限界として、食物摂取頻度調査票では牛乳摂取量を定量的に見積もることができなかったことを挙げている。

 日本人は、欧米人に比べて牛乳の摂取量がいまだに少なく、また欧米とは異なる疾病構造をもっている。欧米人を対象とした牛乳摂取と脳卒中発症リスクについてのエビデンスが、日本人にそのまま当てはまるかどうかは明らかでない。

 日本人の牛乳の至適摂取量を明らかにし、男性での牛乳摂取と脳卒中発症との関連について確かめるために、さらなる研究が必要と研究グループは述べている。

牛乳の「短鎖脂肪酸」が認知機能の低下リスクを抑制

 牛乳などの乳製品には、他にも認知症予防の効果のあるとみられる栄養成分が含まれている。

 国立長寿医療研究センターは、牛乳などの乳製品に含まれる「短鎖脂肪酸」や「中鎖脂肪酸」に着目し、高齢者を対象に長期間調査し、認知症を抑制する効果との関連について調べた。

 その結果、牛乳などの乳製品を毎日摂ることで、認知機能の低下を抑制できることが分かった。牛乳コップ1杯を毎日飲むことで、認知機能低下リスクが15%下がるという。

 「短鎖脂肪酸」は、牛乳などの乳製品以外にはあまり含まれない特徴的な成分で、エネルギー源として利用されるほか、腸内の悪玉菌の増殖を防いだり、腸内の炎症を抑えるなどの働きがあるとみられている。乳製品には「中鎖脂肪酸」も含まれる。

 同センターは、認知機能の低下リスクが高まる60~70歳代の高齢者約1,100人を対象に、3日間の食事記録調査を行った。さらに、臨床心理士などの専門家により認知機能をスクリーニング検査し、医師による頭部MRI画像とあわせて認知機能を評価した。

 その結果、乳製品の摂取が1日当たり128g増えるごとに、認知機能の低下リスクが8年間に20%減少することが明らかになった。

 さらに、「短鎖脂肪酸」の1日の摂取量が297.3mg増えるごとに、認知機能の低下リスクが8年間に14%減少することが分かった。

主菜・副菜が少ない米飯だけの食事は認知症リスクを高める

 米飯や麺類などの穀類の摂取量が増加し、乳製品の摂取量が減少すると、認知機能が衰えやすくなる傾向も明らかになった。副菜が少ない穀類中心の食生活は、認知機能を低下させるリスクを上昇させるおそれがあり、とくに60歳代以上の女性で顕著だった。

 60歳代以上になると、肉や魚、乳製品などで摂取が減る傾向がある。高齢者の低栄養を防ぐために、主食(ごはん、パン、麺類)、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)、副菜(野菜、海藻類、キノコ類)がそろった、栄養バランスの良い食事を摂ることが、認知機能を維持するためにも望ましいことが示された。

 研究は、国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室の大塚礼氏らによるもので、詳細は「乳の学術連合」のホームページで公開されている。

岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座
Association between Milk Intake and Incident Stroke among Japanese Community Dwellers: The Iwate-KENCO Study(Nutrients 2021年10月25日)
牛乳・乳製品に特徴的に含まれる「短鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」と認知機能との関連
乳の学術連合
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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