ニュース

2021年03月11日

血糖トレンド委員会 オンライン患者座談会『今、知っておきたい!冬~春先の血糖対策』開催レポート-血糖トレンドで、あなたらしい毎日を

 血糖トレンドに関する正しい情報発信を行っている『血糖トレンド委員会』(代表世話人:東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 西村理明)は、2021年2月15日、「今、知っておきたい! 冬~春先の血糖対策」をテーマに、第2弾となるオンライン患者座談会を開催しました(共催:血糖トレンド委員会/アボットジャパン合同会社 協力:糖尿病ネットワーク)。


 座談会では冒頭、血糖トレンド委員会の世話人の一人、岡山済生会総合病院内科・糖尿病センター 副センター長 利根淳仁先生が、「知っておきたい血糖対策の基本~HbA1cだけで十分?血糖測定の意外な役割とその方法~」と題して、専門医の立場からミニレクチャーを行った後、3人の糖尿病患者が登壇。利根先生も加わって、「みんなはどう対策してる?血糖トレンド活用方法」をテーマに意見交換を行いました。

 血糖トレンドを活用して、生き生きとした生活を送るために、ぜひ知っておきたい考え方やコツをそれぞれの立場からご紹介いただきました。以下、ミニレクチャーと座談会の概要をレポートします。


1.糖尿病専門医ミニレクチャー
「知っておきたい血糖対策の基本
~HbA1cだけで十分?血糖測定の意外な役割とその方法~」

  岡山済生会総合病院 内科・糖尿病センター 副センター長 利根淳仁
(1)血糖値は冬に悪化する?

 冬から春先の血糖対策をお話しする前に、よく言われる「血糖値は冬に悪化する」とは実際にどうなのか?をみてみましょう。日本の糖尿病患者4,678人のデータを見ると、糖尿病患者の目標値とされるHbA1c7%未満の達成率は、夏(6~8月)が53.1%であるのに対し、冬(12月~2月)は48.9%と、やはり冬場に悪化していることがわかります。

 また、冬場にHbA1cの目標達成率が下がるのは、BMIが25以上の患者さん、罹病期間が10年以上の患者さんであることもデータで明らかになっています。冬に糖尿病が悪化する要因は、人によって様々考えられますが、年末年始の食事の乱れ、寒くなることによる運動不足、農業従事者の場合は農閑期となり運動量が減り、家で過ごすことが多くなり食事が増える、などの生活習慣と関連した要因や、元々冬は寒くて体の代謝そのものが落ち、インシュリンの効きが悪くなる-などが挙げられます。

(2)HbA1cと血糖値の関係

 それでは、血糖コントロールの指標とされるHbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何でしょうか?ヘモグロビンは、赤血球の赤い色素のことです。赤血球の寿命は120日間程度で、血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなります。一旦糖化したヘモグロビンは、ヘモグロビンの寿命が尽きるまで元に戻りません。HbA1cは、この糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかを%で表したもので、過去1~2カ月間の血糖値の平均を示していますので、直前の食事によって値が変わるということはありません。

 HbA1cが注目されるようになったのは、1990年代初頭、有名な大規模臨床研究の結果、HbA1cを7%未満に抑えると網膜症、腎症、神経障害といった糖尿病の合併症が起こりにくいことが明らかになったためです。以来、合併症予防の指標として、HbA1c7%未満というのが血糖コントロールの目標値として重要視されてきました。因みにHbA1cの正常値は6.2%未満で、食前の血糖値(単位はmg/dL)が110未満、食後2時間の血糖値が140未満に相当すると言われています。これに対して、HbA1c7%というのは、食前の血糖値を130未満、食後2時間後の血糖値を180未満にコントロールし続けていくと達成できる値と言われています。

 ところが、今から15年くらい前、このHbA1cをどんどん下げていくと、却って死亡率が上がるという臨床データが出てきました。原因は色々ありますが、大きなものは低血糖です。「低血糖を起こしてまでHbA1cを下げることは良くないのではないか」と言われるようになりました。例えば、HbA1cが同じ二人の患者さんの血糖の波を比べてみます。血糖の平均値は同じですが、一方は血糖の上がり下がりが小さく、波が穏やかで体への負担は小さく、片方は血糖の上がり下がりが大きく、低血糖を繰り返しており、体に良くないということが臨床試験のデータでも分かっています。従って、「HbA1cを見ているだけではダメだ」と言われ続けているのが、この10年くらいの流れであります。

(3)血糖測定で血糖トレンドを把握

 それでは何を見るのか、ということになりますが、それが、SMBG(Self Monitoring of Blood Glucose 血糖自己測定)とCGM(Continuous Glucose Monitoring 持続血糖モニタリング)という二つの血糖測定です。HbA1cよりもう少し短いスパンでしっかりと血糖の変化を把握しようというもので、重要性が増してきています。

 まずSMBGは1日3回から4回、指先の血液を採って血糖を測ります。この測定値の点を連続的に考えながら血糖値の流れを想像することで、例えば寝る前の血糖値が高いと思えば、夕食を調整してみることもできます。

 次にCGMには大きく二つの種類があり、一つはrt-CGM(リアルタイムCGM)で、24時間データが送り続けられます。もう一つがis-CGM(間歇スキャン式CGM)あるいはFGM(フラッシュグルコースモニタリング)と呼ばれるもので、読み取り機を当てた時だけデータを送ってくれるというものです。CGMはSMBGにおいて点で示されていたデータが線となって見えますので、これまで点と点の間を想像していたものが手に取るように分かります。但し、CGMは血糖そのものではなく、センサーが皮下組織の間質液中のブドウ糖濃度を測定する方式ですので、血糖値との間で10分ほどのタイムラグが生じます。数値も大事ですが、その数値がどちらに向かっているのかを見ながら、総合的に判断することが大切です。CGMを使う際には、①今を知ること(現時点)、②振り返ること(ここ数時間)、そして③予測すること(流れと方向)-の3つが大事になります。

 実際にCGMによって確認できる「血糖トレンド」はどのように活用されているのでしょうか。いくつかの事例をご紹介します。

  • SMBGでは血糖を良好にコントロールしているように見えていた患者さんの例ですが、CGMのデータを見て夕方に思いがけず血糖の山が出来ていることを発見し、昼食の取り方を注意するようになりました。
  • 日中の血糖自己測定データでは同じような動きを示す二人の患者さんのCGMのデータを比較して見た例では、一人は夜間就寝中に低血糖となり、その反動で朝、血糖値が上がる、いわゆる"ソモジー効果"を繰り返していました。他の一人は夜間の低血糖はないものの、午前3時から4時ごろに血糖が上がる、いわゆる"暁現象"を起こしており、夜間就寝中の血糖の動きが、人によって全く異なることがCGMによって明らかになりました。
  • 午前0時から3時頃の血糖が上がっていることをCGMで発見した患者さんの例では、血糖トレンドからの気づきを活かし、ガッツリ系の夕食を控えるようにすることで、血糖の上昇を抑えることが出来ました。

 このように血糖トレンドが把握できるCGMと血糖値を確認できるSMBGについて、実際にどのように利用するのか、活用法を知っておくとよいでしょう。

 以上、『HbA1cは大切な指標ですが、それだけでは自分で血糖を把握するには不十分であり、SMBGによる血糖測定やCGMによる血糖トレンドの把握をうまく活用することが重要である』ことをお話しさせていただきました。皆さんには、血糖トレンドを把握し、これから春先にかけての血糖変動を乗り切り、よりよい生活を送っていただきたいと思います。


2.糖尿病患者座談会
「みんなはどう対策してる? 血糖トレンド活用法」

  <登壇者> 
   國枝加誉(管理栄養士 2型糖尿病患者)
   相田幸二(料理研究家 1型糖尿病患者)
   大村詠一(元エアロビック競技日本代表、日本IDDMネットワーク副理事長、1型糖尿病患者)
   コメンテーター:利根淳仁
  *お断り:相田氏は都合により、コメントを紹介させていただく形でのご参加となりました。


 以下、出席者の主なご発言の要旨を紹介します。なお、文中の敬称は省略させていただきました。


―これから春先にかけて、血糖コントロールの悪化に繋がる要因が重なる時期でもありますが、一方で生活改善のきっかけにしている人もいらっしゃいます。そこで、この季節特にお勧めしたい血糖対策のコツを皆さんに伺います。まず食事面についてです。


 相田(コメントでの参加。以下同じ):忙しくなると、どうしてもコンビニ食が多くなりがちですが、健康志向のコンビニ総菜も増えているので、上手に活用し、おにぎりだけ、カップラーメンだけという食事を避けていけば、食事の質はかなり改善できます。例えば、から揚げ弁当には海藻サラダや酢の物を足してみる、カップラーメンなら野菜ミックスをレンジで加熱してトッピングしてみるなどの工夫をしてみましょう。

 また寒さが残るこの時期、鍋は野菜が摂れてたんぱく質も摂れるとても良い料理です。鍋と言っても、必ずしも数多くの食材を使用する必要はなく、トマトと鶏、豚肉とネギ、牛肉と春菊のような2品鍋、3品鍋で十分美味しくいただけます。但し、塩分過多になりがちですので、表記の分量より水分を多めにする、飲み干さないなどの工夫をしてみてはいかがでしょうか?味に物足りなさを感じたら、ポン酢、レモン、カボスなどの柑橘類、カレー粉やショウガ、ニンニクといったスパイス類を加えてみるのも良いと思います。

 國枝:血糖値というのは常に変動する「点」の数値で、瞬間風速のようなものです。これに対して血糖トレンドは「風の流れ方」を表す、傾向、矢印、線、波だと思ってください。血糖は変動するものですが、急な変動、激しい増減は避けて、変化を出来るだけ穏やかな「凪」にすることが大事なポイントです。

 次に、食品のことを考えてみましょう。皆さん、糖を非常に気にされていると思います。炭水化物の中には、血糖値を上げていく糖質と、その中でも非常に早く消化吸収され血糖値を上げやすい糖類があります。実は食物繊維も炭水化物の仲間なのですが、こちらは血糖変動に影響しません。栄養成分表示がある場合は、是非糖質、糖類に着目してみてください。

 ところで、「おやつや果物の糖は、血糖への影響はどうなのでしょうか?」というご質問をよく受けます。主治医や栄養士に相談いただきたいのですが、食べるのであれば、食事の最後に、食事と一緒に少量食べるようにしましょう。1回に食べて良い量を把握しておくことも大事です。また、果物の種類によって血糖値が上がりやすいものがありますが、これは、含まれる糖の種類と量が違うからで、例えば、血糖値の元になるブドウ糖を多く含む柿などは、一度にたくさん食べると血糖値が一気に上がりやすくなります。

 食事の仕方や食べる順番も大事です。例えば、ゴボウ、根菜類などの不溶性食物繊維はよく噛みます。ゆっくりよく噛んで食べることで、薄味でも他の風味と合わさる口中調味で美味しく食べることができます。一方、ドロッとしている水溶性食物繊維は、食べたものを腸までゆっくりと運んでくれます。こういうテクニックを使えば、同じものを食べても、糖が吸収され血糖値になるまでのスピードを遅らせることができるのです。また、たんぱく質・脂質・食物繊維を含むおかずと野菜を最初に食べることで、糖質の消化吸収が穏やかになり、血糖上昇も穏やかにすることができます。

 私の持論は、日常生活の7割はこのような工夫をして頑張ること、そして体を動かすことです。もっと動けば、好きなものをもう少し安心して食べられるようになりますし、筋肉を減らさないようにしっかり動いて、食べたいものも食べつつ上手に穏やかな血糖トレンドの波を実現できるのではないでしょうか。


―続いて運動についてです。コロナ禍という状況ではありますが、血糖管理という観点から効果的な方法はあるでしょうか?


 大村:私自身、コロナ禍で運動不足となり困っていました。そこでまず始めたのが、夜の散歩でした。日中の密を避ける意味もあり、夜、寝る前に行ったところ、血糖値を下げることができました。目標を決めて歩くほうが、継続できますね。

 今日は椅子に座ったままできるエクササイズをひとつ、ご紹介します。浅く腰かけた姿勢で、片脚ずつ膝を曲げたままゆっくりと引き上げる運動で、下半身の筋力アップになります。家事を行いながらのエクササイズもお勧めです。例えば洗濯物を干す時は体をひねりながら干す、掃除機をかける時は大股で足を広げて行うなどで運動量を稼ぐことが出来ますので、家事を普段のエクササイズとして取り入れてみてはいかがでしょうか。


―ここまで、患者の視点から様々な生活の工夫を伺ってきましたが、コメンテーターの利根先生は医師の目からご覧になって、いかがでしょうか?


 利根:食事と運動は、血糖に直結しており、血糖をコントロールして生活を豊かにするうえでも大切なことです。糖尿病治療というと、我慢した生活、何か制限されるようなイメージがあると思いますが、良いと思われることをいろいろ試してみて、治療を自分自身で作り上げていくことが大切ですので、今日の話を是非、お役立ていただければと思います。


―最後に、視聴している患者さんへのメッセージを、ひと言ずついただきたいと思います。


 相田日頃の生活にちょっとの運動習慣を加えたり、食事の質を見直したりするだけでも、血糖トレンドは変わっていくと思います。日々、新しい薬やデバイスが開発されているおかげもあり、血糖もコントロールしやすくなってきている時代です。私も今日の座談会の内容をうまく自分に取り込んで、今後の生活に生かしていきたいと思います。

 國枝:食事に関しては、事前、当日含めて大変多くのご質問をいただき、皆さん悩んでおられることを痛感いたしました。栄養士としても患者としても、いろいろお伝えしたいことはあるのですが、まずはお近くの病院の管理栄養士やお医者さんに、どんどん質問していただきたいと思います。皆さんから質問をいただくことで、私たち医療者も勉強になることが多いので、遠慮しないでお寄せいただければと思います。

 大村:血糖トレンドを見ることができるのか、血糖値は何回測れるのか―など、患者によって治療の状況は異なりますが、まずは検査をして、自分の状態を知ることが大事です。その状態を良くするために、医療従事者とのコミュニケーションを図りましょう。コロナ禍で悩んでいる方も多いと思いますが、日頃疑問に思ったことは是非メモにしておき、まとめて病院の管理栄養士や医師に相談するようにしてはどうでしょうか?運動に関する質問については理学療法士に、また、私宛にお寄せいただければお答えしたいと思います。


 以上で座談会は終了。この後、「みんなの疑問にお答えします!質問コーナー」と題して、事前に寄せられた質問に、登壇者の皆さんが回答しました。

 (質疑応答の内容は、前回座談会に寄せられた質問と合わせて、血糖トレンド委員会のWebサイト「お役立ちコンテンツ」内の「糖尿病・血糖トレンドに関するQ&A」のページにまとめられていますので、ご参照ください)


[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled ニュース記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲