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2020年10月14日
「骨粗鬆症」は糖尿病の合併症 骨折をこうして防ぐ 骨を丈夫にする秘訣とは
糖尿病の人は骨粗鬆症のリスクが高い。糖尿病の人の骨に何が起きているのか?
最近の研究で骨を丈夫にする運動や食事などの秘訣が分かってきた。
最近の研究で骨を丈夫にする運動や食事などの秘訣が分かってきた。
糖尿病の人は骨の強度が低下しやすい
骨粗鬆症とは、骨強度の低下を特徴とする、骨折のリスクが増大する骨格疾患。
2型糖尿病や肥満・メタボなどのある人は、骨の強度が低下し、骨粗鬆症を発症する危険性が高いことが分かっている。
大腿骨近位部の骨折のリスクは、1型糖尿病の人では3~7倍に、2型糖尿病の人では1.3~2.8倍に上昇するという報告がある。
高血糖により糖尿病で骨質が低下する原因として、(1)糖化にともなう酸化ストレスや最終糖化産物(AGEs)の増加、(2)骨でのビタミンB6欠乏によるコラーゲン強度の低下、(3)酸化ストレスの亢進、(4)ビタミンDの欠乏などが考えられている。
良好な血糖コントロールで骨折を防ぐ
血糖を下げるインスリンは、骨芽細胞の増殖を促し骨形成にも欠かせないホルモンだ。インスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性があると、骨形成が抑制させ、骨が弱くなってしまうと考えられている。
ひとたび骨折を起こすと、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下し、生命予後が悪化するおそれがある。要介護となった主な原因では、「骨折・転倒」が第4位に挙げられている。
まず、骨折を起こさないこと(1次骨折)、さらに骨折が起きてしまった場合には次の骨折を予防すること(2次骨折)が重要となる。そのためには、骨粗鬆症を治療する必要がある。
糖尿病の人では、良好な血糖コントロールを維持することも必要。1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1cが7.5%以上の2型糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べ、骨折リスクが1.47倍に上昇するという報告もある。
カルシウムとビタミンDで骨を丈夫にする
骨粗鬆症の治療の目的は、骨折を防ぐことだ。そのためには、骨密度を増やして骨を丈夫にすることと、骨折の原因となる転倒をしない体づくりが大切になる。
治療の基本は、運動と食事の改善で、必要に応じて薬を使う。
骨粗鬆症の予防と治療では、毎日の食事が大切。健康な骨を作るのに必要な栄養素としてカルシウムが知られているが、それだけではない。カルシウムに加えて、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、ビタミンB群なども必要になる。
カルシウムは、乳製品、大豆製品、緑黄色野菜、海藻、魚、ナッツ類などに多く含まれる。また、ビタミンDは、カルシウムの腸での吸収を助ける働きがあるので、カルシウムと一緒にとると効果的だ。ビタミンDは、魚やキノコに多く含まれる。
ビタミンDは、日光に当たることで自分の体内で作り出すこともできる。冬は1日1時間、夏は日陰で30分程度の日光浴をするのが目安だ。
健康な骨を作るのに役立つ食品
体に衝撃を加える運動で骨を強くする
運動は骨を丈夫にするために欠かせない。運動によって骨密度が増加することが分かっている。運動には骨折を予防し、転倒を予防する効果がある。
骨には、運動などの負荷をかけると強くなり、逆に負荷をかけないと弱くなるという性質がある。骨を丈夫にするために効果的な運動は、衝撃や負荷の大きい運動だ。
ウォーキングなどの有酸素運動は、上下動(飛んだり飛び跳ねる動き)をともなうものが多く、骨や体に「力(衝撃)」が加えられる。
運動で生じる骨への衝撃は、骨だけでなく体のほとんの臓器や組織でも、炎症や老化に関わるタンパク質の活性を抑制する効果がある。
東京都健康長寿医療センターなどの研究では、ウォーキングなどの運動時に骨に加わる衝撃が、骨の健康を維持するために重要であることが明らかになっている。その衝撃で生じる骨内の組織液の流動により、骨細胞での炎症の抑制や抗老化の作用が得られるという。
「健康維持のために、ウォーキングなどの体に衝撃を与える運動を、1日10分以上行うことが必要です」と、研究者は強調している。
どの年齢でも運動は効果がある
骨から「若返り物質」が出ている
運動により骨に力をかけると、骨を作る細胞が新しくできてくるだけでなく、「オステオカルシン」というホルモンの分泌も促されることが分かっている。
米国のコロンビア大学の研究によると、骨は単なる体の支柱ではなく、体にとって重要なホルモンを分泌する内分泌系の器官でもある。
オステオカルシンは、骨芽細胞で産生される骨基質タンパク質。カルシウム代謝と関わりが深く、運動による筋肉増強、認知機能の改善、精力のアップなどにも関わっており、「若返り物質」として働くと考えられている。
また、骨芽細胞にはインスリン受容体があり、インスリン感受性を促し、全身の糖代謝にも影響している。そのため、インスリンの作用が不足している糖尿病の人は、骨が弱くなり骨折のリスクが上昇する。
スクワットなどのレジスタンス運動も効果的
骨粗鬆症を防ぐための運動
米国の理学療法士であるマーガレット マーティン氏は、骨粗鬆症を予防・改善するための運動をビデオで解説している。
米国の理学療法士であるマーガレット マーティン氏は、骨粗鬆症を予防・改善するための運動をビデオで解説している。
運動を始めるのが遅すぎることはない
米国のミズーリ大学の研究では、男性がスクワットなどの荷重のかかるレジスタンス運動を習慣として続けると骨密度が上昇することが明らかになっている。
中年期以降に運動をはじめてた人でも、活発なウォーキングや筋力トレーニングを行うと、骨密度が改善することが分かった。
「重要なことは、ウォーキングやレジスタンス運動は、年齢を重ねてから始めても効果があるということです。運動を始めるのが遅すぎるということはありません」と、ミズーリ大学栄養・運動生理学部のパメラ ヒントン氏は言う。
「若い頃から運動を続けていればより効果的ですが、中年期以降にやめてしまう人が多くみられます。運動には全年代において骨を強くし骨粗鬆症を予防する効果があり、続けなければ効果を得られません」。
立って行うものでは片足立ちやスクワットも効果があり、片足立ちを継続して行った場合は、行わなかった場合より転倒する人が減るという研究結果も出ている。
いずれの運動を行う場合も、定期的な骨密度の評価を行ったうえで実施することが、安全のためには重要となる。糖尿病などの基礎疾患のある人や、骨折経験や腰痛などの関節痛がある場合は、医師に相談してから運動することが大切だ。
東京都健康長寿医療センター研究所Mechanical regulation of bone homeostasis through p130Cas-mediated alleviation of NF-κB activity(Science Advances 2019年9月25日)
Mechanical Regulation Underlies Effects of Exercise on Serotonin-Induced Signaling in the Prefrontal Cortex Neurons(iScience 2020年1月31日)
Mechanical regulation of bone homeostasis through p130Cas-mediated alleviation of NF-κB activity(Science Advances 2019年9月25日)
Which Exercise Regimen Protects Bone Health in Older Adults with Obesity?(Wiley 2019年12月4日)
Effect of Aerobic or Resistance Exercise, or Both, on Bone Mineral Density and Bone Metabolism in Obese Older Adults While Dieting: A Randomized Controlled Trial(Journal of Bone and Mineral Research 2019年12月4日)
Could diabetes be in your bones? Link between metabolic disease, bone mass; Breakdown of bone keeps blood sugar in check(Cell Press 2010年7月22日)
Insulin Signaling in Osteoblasts Integrates Bone Remodeling and Energy Metabolism(Cell 2010年7月23日)
Insulin Receptor Signaling in Osteoblasts Regulates Postnatal Bone Acquisition and Body Composition(Cell 2010年7月23日)
Exercise Recommendations for Osteoporosis(MelioGuide)
Lifelong Physical Activity Increases Bone Density in Men(ミズーリ大学 2016年2月11日)
Physical Activity-Associated Bone Loading During Adolescence and Young Adulthood Is Positively Associated With Adult Bone Mineral Density in Men(American Journal of Men's Health 2014年9月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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