ニュース
2020年09月15日
女性の命を守るHPVワクチンをもっと知って 子宮頸がんの予防を呼びかける運動が活発化
- キーワード
- 糖尿病とがん 糖尿病の検査(HbA1c 他)
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、女性の子宮頸がんや男性に多い中咽頭がんなど、さまざまな病気を引き起こす。
子宮頸がんによる死亡者は約3,000人に上るが、日本人女性のHPVワクチンの接種率は1%未満と危機的な状況が続いている。
HPV感染症の予防方法を啓発する運動が活発化している。
子宮頸がんによる死亡者は約3,000人に上るが、日本人女性のHPVワクチンの接種率は1%未満と危機的な状況が続いている。
HPV感染症の予防方法を啓発する運動が活発化している。
女性の子宮頸がんは乳がんに次いで多い
子宮頸がんの日本の年間の罹患数は約1万1,000例、年間死亡者数は約3,000人とされており、女性特有のがんの中では乳がんに次いで多い。
罹患年齢は20代にも広がるなど若年化が進んでおり、20代から30代の女性では、罹患率はすべてのがんの中で第1位になっている。
定期的に子宮頸がん検診を受けていれば、がんになる前の状態で発見することが可能だが、日本で検診を受けている人の割合は約40%と低い。欧米諸国では70%~80%に上り、日本の女性の受診率の低さは際立っている。
日本のHPVワクチンの接種率は1%未満
さらに日本では、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐHPVワクチンの接種率が極めて低い状況が続いていることが、深刻な社会問題になっている。
世界の80ヵ国以上で、HPVワクチンの接種を広く提供するために、国の公費助成が実施されている。日本でも公費助成が行われており、小学校6年生から高校1年の女子は公費で定期接種を受けられる。
しかし、世界の多くの国で60%以上の高い接種率が実現されており、接種率が80~90%の国も少なくないにも関わらず、日本では、10年前のワクチン導入時は70%だったのが、現在は積極的勧奨が行われておらず、接種率は1%未満と危機的な状況にある。
HPVワクチンの有効性と安全性を啓発
女性のHPVワクチンの接種率を引き上げようと、民間の動きが活発化している。
産婦人科・小児科・公衆衛生学などの専門家が力を合わせて、8月28日に開始したのが「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」だ。
同プロジェクトを運営する「一般社団法人 HPVについての情報を広く発信する会」(稲葉可菜子・代表理事)のミッションは、▼すべての国民にヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に関する正確な知識を伝えること、▼科学的な根拠にもとづきHPVワクチンの有効性と安全性について啓発することなどだ。
代表の稲葉可奈子氏は産婦人科医。HPVワクチンの積極的勧奨の再開を、厚生労働省へ再三にわたり要望したが、事態が変わらない状況にある。
子宮頸がんのために20~30代で子宮を失うことになった女性や、命を失った女性を多く見てきた。「産婦人科医としてこのまま見過ごすことはできない」と思い立ったという。
産婦人科・小児科・公衆衛生学の力を合わせて情報発信
同社団法人の活動として、(1)小児科外来でのリーフレット配布や、SNSでの情報発信などを通じて、子宮頸がんとHPVワクチンについての認知向上をはかる、(2)医師監修のWebサイトなどを通じた、HPVワクチンに関する正確・詳細な情報の提供、(3)産婦人科医や小児科医による、具体的な接種方法などについての情報提供――などを展開する。
HPVはありふれたウイルスで、性交渉によって感染すること、女性の子宮頸がんの原因となることはよく知られている。
しかし、男女ともに中咽頭がんや肛門がんを引き起こすこと、男性の陰茎がんなど、さまざまながんの原因となることはあまり知られていない。
また、性感染症でありながらコンドームでは完全に予防できないことから、誰もが感染のリスクがあり、がんを発症するリスクがあることを知らない人も多い。
一方、HPVワクチンは、HPVに感染する前に接種することで、感染を防ぐ効果があることが十分に確認されている。
しかし日本では、HPVワクチンを接種後に副反応を生じた症例が報告されたことから、積極的な接種の勧奨が差し控えられている状況にある。
クラウドファンディングを開始 1日で目標を達成
クラウドファンディング
「がん」を予防するワクチンを当たり前に!
「がん」を予防するワクチンを当たり前に!
子宮頸がん検診の受診率向上を目指すプロジェクトも
ロシュ・ダイアグノスティックスとDeNAの子会社であるDeSCヘルスケアは、子宮頸がん検診の受診率向上を目指す「Blue Star Project(ブルースタープロジェクト)」
その一環として、プロ野球の横浜DeNAベイスターズが「Blue Star Project Women's ナイター」を開催することを計画している。
今年は10月に横浜スタジアムで、対広島東洋カープ戦で「Blue Star Project Women's ナイター」の開催を予定。
子宮頸がんは、初めは自覚症状がなく、自分で気づくことができない。しかし、定期的な検診を受けていれば、がんになる前に早期発見ができる。
この冠試合の開催により、多くの野球ファンやスポーツファンに、「2年に1度、子宮頸がん検診に行きませんか」と呼びかけ、がん検診の必要性を知ってもらいたいとしている。
子宮頸がん検診は自治体が行うがん検診や、健康保険組合で行う職域検診として受けることができる。検診費用を助成(全額または一部)している自治体や職場も多い。
糖尿病の人はがん検診を受けることが大切
国内外で発表された研究によると、糖尿病の人はそうでない人に比べ、血糖コントロールが良好でないと、がんの発症リスクが高いことが報告されている。
日本人ではとくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが高いことが確かめられている。子宮頸がんについても、糖尿病の人は発症リスクが高く、発症すると生存率が低下しやすいことが海外で報告されている。
厚生労働省は、胃・子宮頸・乳房・肺・大腸についてのがん検診の受診を推奨している。がんは早期発見し治療を行うことが大切になる。
自分が住んでいる地域でのがん検診の予定を確認し、ぜひ検診を受けるようにしたい。
市町村で受けられるがん検診
種 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 |
---|---|---|---|
胃がん検診 | 問診および胃部エックス線検査 | 年1回 | |
問診、視診、子宮頚部の細胞診および内診 | 20歳以上 | 2年に1回 | |
肺がん検診 | 質問(問診)胸部エックス線検査および喀痰細胞診 | 40歳以上 | 年1回 |
乳がん検診 | 問診、視診、触診および乳房エックス線検査(マンモグラフィー) | 40歳以上 | 2年に1回 |
腸がん検診 | 問診および便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 |
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
糖尿病とがんの関連記事
- 糖尿病のある人は「がんのリスク」が高い 飲み薬のメトホルミンがリスクを減少 がん予防で必要なことは?
- タバコは糖尿病リスクを高める 禁煙すれば2型糖尿病のリスクが30~40%減少
- わずか5分のウォーキングで「がんリスク」は32%減少 無理なく続けられる「新しい運動療法」
- ハムやソーセージの添加物が糖尿病リスクを高める 「超加工食品」が糖尿病や肥満の原因?
- 糖尿病の人はがんリスクが高い 大腸がんリスクは2.4倍 予防のために何が必要?
- 糖尿病薬のDPP-4阻害薬は安全であることを確認 DPP-4阻害薬はもっとも利用されている薬
- 「超加工食品」の食べ過ぎでがんリスクが上昇 不健康な食事は糖尿病リスクも高める
- 糖尿病の人は「胃がん」リスクが高い 胃カメラ検査は効果が高い 定期的な検査が大切
- 低炭水化物ダイエットは糖尿病の人に勧められる? 動物性食品を食べ過ぎるとがんリスクが上昇
- 糖尿病の人の多くは「がん」を予防できる 糖尿病と肥満ががんの危険因子