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2020年05月28日
「受動喫煙」が糖尿病リスクを高める タバコは家族の糖尿病の発症も増やす
自分が喫煙の習慣がなくとも、受動喫煙でタバコの煙を吸い込む頻度が高いと、5年後や10年後に糖尿病を発症するリスクが上昇することが、日本人女性2万5,000人を対象とした調査で明らかになった。
これまでの多くの研究で、喫煙によりインスリン抵抗性や血糖の上昇が誘導されることが分かっている。受動喫煙でも同じことが起きている可能性がある。
これまでの多くの研究で、喫煙によりインスリン抵抗性や血糖の上昇が誘導されることが分かっている。受動喫煙でも同じことが起きている可能性がある。
家庭や職場での「受動喫煙」は糖尿病に影響する
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。
これまでの多くの研究で、喫煙が2型糖尿病のリスクを上昇させることが明らかになっているが、受動喫煙についてははっきりとは分かっていなかった。
とくに夫が喫煙者である女性は、自分に喫煙をする習慣がなくても、家庭で受動喫煙の影響を受けていると考えられる。また、受動喫煙は、職場など家庭以外の場所でも起きていると考えられる。
そこで研究チームは、JPHC研究の一環として、1990年と1993年に、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に在住していた40~69歳のタバコを吸わない女性約2万5,000人を対象に、同居する配偶者の喫煙状況や、職場など家庭以外の場所での受動喫煙と、その後の糖尿病発症との関連を調べた。
夫の喫煙状況や職場などの、家庭以外の受動喫煙の状況を詳しく調べ、その後の糖尿病の発症に影響を及ぼすかどうかについて調査した。
関連情報
受動喫煙の頻度が高いほど糖尿病リスクは上昇
夫の喫煙習慣の有無は、夫のアンケート回答結果から判断した。女性の職場など家庭以外の場所での受動喫煙は、女性に研究開始時に行ったアンケート調査で把握した。糖尿病の発症は、研究開始から5年後と10年後に行ったアンケート調査で、糖尿病と診断されたことがある場合とした。
解析では、地域、年齢、追跡期間、肥満度、高血圧、親の糖尿病歴、余暇の身体活動、コーヒーおよびアルコール摂取といった要因を調整し、これらの影響をできるだけ取り除いた。
その結果、研究開始から5年間で、タバコを吸わない女性のうち334名が糖尿病を発症し、さらに続く5年間で374名の女性が糖尿病を発症した。
夫が吸う1日あたりのタバコの本数が多いほど、女性の糖尿病発症のリスクは高くなることが明らかになった。夫が1日に40本以上タバコを吸っている女性は糖尿病の発症リスクが1.34倍に上昇した。
夫がタバコを吸っている女性は糖尿病の発症リスクが上昇する
夫が吸うタバコの本数が多いほど糖尿病リスクは高くなる
さらに、職場などで受動喫煙が毎日ある女性では、糖尿病の発症リスクが上昇することも分かった。
タバコを吸わない女性のうち、仕事をしている女性に限り分析したところ、職場など家庭以外の場所で受動喫煙がないと答えた女性に比べ、毎日あると答えた女性は、糖尿病発症のリスクが1.23倍に上昇した。
夫が吸うタバコの本数が多いほど糖尿病リスクは高くなる
出典:国立がん研究センター 社会と健康研究センター、2020年
職場などで受動喫煙の頻度が高いと糖尿病リスクは上昇する
出典:国立がん研究センター 社会と健康研究センター、2020年
自分と家族を守るために節煙・禁煙を
今回の女性を対象とした研究では、本人にタバコを吸う習慣がなくても、夫が吸っているタバコの本数が多いと、女性でもその後の糖尿病のリスクが上昇することが示された。
また、職場など家庭以外の場所で、受動喫煙により糖尿病リスクが上昇することも、統計学的に有意なものではないにしても示された。
これまでの多くの研究で、喫煙によりインスリン抵抗性や血糖の上昇が誘導されることが分かっている。受動喫煙でも同じことが起きている可能性がある。
「日本では男性の喫煙率が女性よりも高く、タバコを吸わない女性であっても、家庭で配偶者から受動喫煙の影響をうけている場合があります。家族の健康を守るためにも、ヘビースモーカーの男性は、まず毎日吸うタバコの本数を減らし、その後の禁煙へつなげることが望まれます」と、研究者は述べている。
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループPassive Smoking and Type 2 Diabetes Among Never-Smoking Women: The Japan Public Health Center-based Prospective Study(Journal of Diabetes Investigation 2020年3月30日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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