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2019年10月02日

糖尿病の治療をしないと腎機能が低下 リスクは4年後に8倍超に上昇

兵庫県豊岡市の腎臓病重症化予防の取り組み
 公立豊岡病院内分泌・糖尿病内科が兵庫県豊岡市の特定健診データを解析した研究で、糖尿病患者で、血糖コントロールの指標であるHbA1cの高値と、善玉のHDLコレステロールの低値が、腎症のリスクを上昇させており、とくに治療を受けていないHbA1c 8%以上の糖尿病の人で腎機能低下が進行し、腎機能障害を有する比率が4年後には8倍に上昇することが分かった。
糖尿病性腎症の重症化予防は全国的な課題

 豊岡市は、コウノトリの野生復帰の取り組みなどで知られるが、高齢化率は2017年に31.9%となり、2025年には34.5%に達すると予測されている。全国平均を上回り高齢化が進んでいる地域で、都市部に比較して公共交通機関が少なく、自動車による移動が多いなどの特徴がある。

 同市で糖尿病有病者は増えており、人口の8%が糖尿病と推定されている。そこで市は「豊岡市糖尿病・糖尿病性腎症重症化予防事業」を2018年に立ち上げ、市民の腎不全や人工透析の導入を抑制する対策をしている。

 そこで公立豊岡病院内分泌・糖尿病内科の岸本一郎氏らは、4年間の豊岡市国民健康保険特定健診データにもとづき縦断コホート研究を行い、腎機能低下の進行と関連する因子を解析した。詳細は、日本糖尿病学会の機関誌「糖尿病」62巻6号に発表された。

 糖尿病は全国的な課題となっており、腎症の重症化予防など市町村が実施する保健事業は注目されている。健診で糖尿病や腎症と判定されても治療につながっていなかったり、治療を受けていても腎症の診断や治療が十分に行われていないケースが少なくない。
治療を受けないと腎機能障害のリスクが8倍超に上昇
 2012~15年の4年間の特定健診受診者(40~74歳)を対象に、血清クレアチニン値の4年目と1年目の比を求め、血清クレアチニン値の1.2倍化をエンドポイントとして生存時間分析を行い、腎機能低下と関連する因子を解析した。初年度(2012年)の受診者数は5,169人だった。

 その結果、血圧、血糖、肥満(メタボリック症候群)、喫煙、身体活動、タンパク尿などが腎機能低下の関連因子であることが明らかにった。

 なかでも糖尿病と高血圧の影響が大きく、それぞれの疾患がある場合は、腎臓病のリスクが約2倍に上昇することが判明した。

 さらに、治療を受けていないHbA1c 8%以上の人で腎機能低下が進行し、治療を受けている人に比べ、腎機能障害を有する割合は4年後には8.15倍に上昇することが分かった。
「高血糖を放置していると危険」と呼びかけ
 なお、糖尿病を合併する腎臓病の中に、糖尿病性腎症では典型的とみられるアルブミン尿が確認されない症例があり、「糖尿病性腎臓病(DKD)」として注目されている。

 今回の研究では、糖尿病あり群において蛋白尿陰性者は11.1%であったが、この集団においてはHDLコレステロール(低値)のみが腎機能低下と有意に関連していた。

 同病院では、これらの研究結果をまとめたリーフレットを作成し、「高血糖を放置していると大変に危険です」「放置していると1、2年で腎機能低下の危険性が高まります」と注意を促している。

 「豊岡市でも糖尿病になっておられるにも関わらず未受診の方やそもそも健診を受けていない方が多くおられますので、早目に健診や診察を受けていただくことがとても重要です」と、腎症の重症化予防の必要性を説いている。

豊岡市国民健康保険特定健診データを用いた糖尿病性腎臓病重症化関連因子の解析(糖尿病 62巻6号)
公立豊岡病院 内分泌・糖尿病内科
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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