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2019年07月17日
「認知症施策推進大綱」にどんな具体策が盛り込まれたか? 糖尿病の人ではリスクが2~4倍に上昇
政府は認知症対策を強化するため、2025年までの施策を盛り込んだ新たな大綱を決定した。
「共生と予防を車の両輪として取り組みを強力に推進していく」と強調している。
「共生と予防を車の両輪として取り組みを強力に推進していく」と強調している。
認知症に関する施策の指針を決定
政府は認知症に関する施策の指針となる大綱「認知症施策推進大綱」を示した。団塊の世代が75歳以上となる2025年までを対象期間としている。
「認知症施策推進大綱」は、既存の国家戦略の延長線上にあり、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」のアップグレード版というべきものだ。
認知症になっても地域で安心して暮らせる「共生」と、認知症の発症や進行を遅らせる「予防」を車の両輪と位置づけている。
大綱では「認知症は誰もがなりうる疾患で、家族や身近な人が認知症になることを含め、多くの人にとって身近なものになっている」と強調。
九州大学が行っている「久山町研究」では、高齢糖尿病患者では認知症の合併が多いことが明らかになっている。糖尿病のある人ではそうでない人に比べ、アルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2~4倍に上昇するという。
関連情報
認知症の発症を1歳遅らせる
日本では2012年時点での認知症有病者数は462万人、軽度認知障害(MCI)の数は約400万人と推計され、65歳以上高齢者の4人に1人が認知症かその予備群とみられている。
団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年には、認知症有病者数は730万人に達し、高齢者の5人に1人となる見込みだ。
大綱では、認知症を「誰もがなりうる」として、予防については「認知症にならない」ではなく「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」と定義。
素案で「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」としていた予防に関する数値目標は参考値扱いにとどめられた。
「予防」と「共生」が車の両輪
認知症の「予防」については、(1)運動不足の改善、(2)糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防、(3)社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持――などが役立つ可能性を示唆されている。
認知症との「共生」を促進するために重点的に取り組む課題は次の通り――。
(1)認知症に関する正しい知識と理解をもって、地域や職域で認知症の人や家族を手助けする認知症サポーターを養成
(2)生活環境の中で認知症の人と関わる機会が多いことが想定される小売業・金融機関・公共交通機関等の従業員など向けの養成講座の開催の機会の拡大
(3)学校教育などにおける認知症の人などを含む高齢者への理解の推進
(4)地域の高齢者等の保健医療・介護などに関する総合相談窓口である地域包括支援センターおよび認知症疾患医療センターの周知の強化
認知症サポーターの養成、認知症疾患医療センターの設置
今年3月現在約1,144万人となっている「認知症サポーター」の養成数は、20年度までに1,400万人を目指す。企業・職域型の認知症サポーター養成数の目標は400万人。
認知症対応力向上研修受講者数の目標は、かかりつけ医9万人、認知症サポート医1.6万人とした。
「認知症疾患医療センター」の設置数を全国500ヵ所、2次医療圏ごとに1ヵ所以上整備することも目標に定めた。今年5月時点での設置数は449ヵ所。
本人と家族が地域で受ける医療・介護サービスの流れを示した「認知症ケアパス」の積極活用も打ち出し、市町村における作成率100%を目指す。
「通いの場」で保健師による健康相談
高齢者が集える公民館などの「通いの場」の拡充を重要政策のひとつに位置付けた。65歳以上の高齢者の参加率を4.9%から8%程度に増やし、自治体の取り組み状況に応じて配分を変える「インセンティブ交付金」を活用し、国が手引を作成するなど普及を促す。
こうした「通いの場」では、保健師や管理栄養士などの専門職による健康相談もあわせて実施する。
共生のために認知症の人本人からの発信の機会も増やす。「認知症本人大使(仮称)」を創設するなどし、地域で暮らす当事者とともに認知症の啓発に力を入れる。
認知症バリアフリーを推進
「認知症バリアフリー」は、認知症になっても住み慣れた地域で普通に暮らしていける環境が整っていること、生活の妨げとなる障壁が排除されていることと考えられている。
そこで、一定の規模を有する公共交通機関に対し、認知症の人への対応力を高める計画の作成、取り組み状況の報告・公表を義務付けると明記した。
安全運転の支援システムを搭載した自動車に限定して高齢者の運転を認める新制度の検討も進めており、大綱では年度内に同制度の方向性を決めると記載した。障害者などが安心して通行できる幅の広い歩道などの整備も推進する。
認知症の人が買い物しやすい環境の整備にも力を入れる。新しい技術を活かした決済方法の導入を支援するほか、当事者の意見をふまえて開発された商品・サービスを登録する仕組みを作る。
このほか、地域の見守りネットワークの強化に引き続き力を入れる。捜索ネットワークづくりや、ICTなどを活用した効率的な捜索システムの普及を後押ししていく。
認知症施策推進大綱(案)(内閣官房健康・医療戦略室 2019年6月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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