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2019年06月26日

糖尿病は「脂肪肝」の危険因子 食事と運動でNAFLD・NASHに対策

 肝臓に脂肪がたまる脂肪肝を発症する人が増えている。脂肪肝が原因となり起こる「NAFLD」や「NASH」といった病気が注目されている。
 放っておくと動脈硬化が進行しやすくなり、肝臓の機能悪化や、肝硬変などの深刻な病気に進展する。
 糖尿病や肥満のある人は、とくに脂肪肝になりやすい。早く気が付いて対策することが必要だ。
エネルギーが余ると肝臓に脂肪がたまっていく
 肝臓は、腸で消化・吸収した栄養素を取り込んで分解したり新たに合成したりして、バランスよく全身に供給する役割を担っている。

 食事でとった糖分は、通常はグリコーゲンとして一時的に貯蔵されるが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまる。食事で余分にとった脂肪分も、タンパク質が分解されてできるアミノ酸も、過剰な分は脂質に変換される。

 食べ過ぎや運動不足などがあり、食事で摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になる。肝臓に運ばれて処理されなかった中性脂肪は、どんどん肝臓にたまっていき脂肪肝になる。

関連情報
脂肪肝があるとインスリン抵抗性が進行
 脂肪肝は初期には自覚症状はあまりなく、本人も気づかないうちに忍び寄り、進行する。脂肪肝があると、狭心症や心筋梗塞など心疾患のリスクが上昇するだけでなく、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が進行しやすくなる。

 インスリンには肝臓などに作用して血糖値を低下させる作用があるが、その臓器に脂肪が蓄積すると、インスリン抵抗性が生じる。肥満でなくとも肝臓や骨格筋といったインスリンが作用する臓器に脂肪が蓄積するとインスリン抵抗性が生じる。その結果、高血糖や高インスリン血症になりやすくなる。

 脂肪肝が悪化すると、全身が肥満体質になりやすくなるという研究も発表されている。肝臓の脂肪量が多いほど骨格筋のインスリン抵抗性が高くなり、脂肪肝の悪化が、肝臓だけでなく全身のインスリン抵抗性の悪化に影響を及ぼす。
肝機能の検査にはどんなものがあるか?
 健診で超音波検査やCT検査などを受けて、「脂肪肝があって、肝臓の数値が少し上がっていますね」と言われたことのある人は多いのではないだろうか。脂肪肝は受診者の約3割で指摘される。

 2型糖尿病の人は、生命を脅かす肝硬変や肝がんを早期発見するために、定期的に肝機能の検査を受けるべきだ。肝臓が健康に働いているかどうかは、肝機能を調べる血液検査で知ることができる。肝機能を調べる検査はいくつかあるが、もっとも広く行われている検査はALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPだ。

 AST(GOT)は、肝臓の細胞中に含まれる酵素。肝臓の細胞が壊れると、血液中に流れ出てきて高値になる。ALT(GPT)も肝臓の細胞中に含まれる酵素。肝臓の細胞が壊れると、ALTが血液中に流れ出てきて高値になる。ALTはASTと違い肝臓以外にはほとんどないため、数値が高いと肝臓の障害が疑われる。

 2つの酵素のそれぞれの値とともに、どちらがより高いか(AST/ALT比)も大切だ。ASTがALTよりも高値のときは、肝硬変、肝がん、アルコール性肝炎などが疑われる。ALTがASTより高値のときは、急性肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎などが疑われる。

 γ-GTPは肝臓での解毒作用に関与している酵素。アルコールに敏感に反応し、アルコール性肝障害の指標になる。また、胆汁の流れが悪いときにも上昇する。
脂肪肝を放置しておくと深刻な病気が
 脂肪肝を放置しておくと、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」や「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」といった病気に進展するおそれがあるので、注意が必要だ。

 NAFLDやNASHを放置していると、生命を脅かす危険な状態になるおそれがあるため、早期に診断して治療を行う必要がある。肝臓は"沈黙の臓器"といわれることが多く、多少の負担がかかってもすぐには症状はあらわれない。しかし、肝臓が限界を超えて壊れてしまうと、もとには戻せなくなる。

 NAFLDはアルコールを除くいろいろな原因で起こる脂肪肝の総称。その多くは、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧をともなっていて、メタボリックシンドロームのある人が発症することも多い。

 肥満と2型糖尿病の増加に合わせて、NAFLDは急速に増えている。世界の有病率は2010年までの10年間で15%から25%に上昇した。

 放置していると徐々に進行してNASHという深刻な肝臓病に進展する。NAFLDの80~90%は脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しないが、残りの10~20%の人は徐々に悪化して、肝硬変に進行したり、なかには肝不全や肝がんを発症することもある。
糖尿病や肥満は肝障害の危険因子
 2型糖尿病や肥満は肝障害の独立した危険因子だ。欧州に在住する8,200万人の成人を対象とした調査で、肝硬変や肝臓を発症した人の多くは、発見が遅れ、診断されたときにはすでに病状が進行した段階にあることが明らかになった。

 調査は英国のクイーン メアリー大学とグラスゴー大学によるもので、NAFLDとNASHの実態を調べるために行われた。

 高血圧や肥満、2型糖尿病のある人では、そうでない人に比べ、肝硬変を発症する割合が4.73倍に上昇することが明らかになった。肝がんのリスクも3.51倍に上昇した。

 しかもNAFLDやNASHといった腎疾患は、発見が遅れる傾向があり、適切な治療を開始できないでいる人が多いことが分かった。

 「調査では、NAFLD/NASHが見逃されている患者が多いことが判明しましたが、それを考慮した上でも、糖尿病は肝硬変や肝臓がんのもっとも強い危険因子であることが判明しました」と、クイーン メアリー大学の肝臓専門医であるウィリアム アラザウィ教授は述べている。
脂肪肝を改善するための対策
 「2型糖尿病や脂質異常症、高血圧のある人は、高度で生命を脅かす危険性の高い肝臓病のリスクが高いのです。脂肪肝を改善し、肝臓病を予防するための対策が必要です」と、アラザウィ教授は指摘する。

 脂肪肝の主な原因は、食べすぎや運動不足などによる肥満だ。脂肪肝を改善するためには、生活習慣の改善に取り組むことが大切だ。2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などのある人は、その治療をしっかり行うことが基本となる。

 食事療法と運動療法で適正体重にコントロールすることが必要となる。そのため、食事では、3度の食事をバランス良くとり、間食でカロリーの摂り過ぎにならないよう心がけ、高カロリーの甘い清涼飲料も控える。

 運動では、1日30分の活発なウォーキングが効果的だ。肝臓の脂肪は運動してから10分たたないと燃え出さないので、脂肪肝を改善するためにはウォーキングを少なくとも10分以上続けることが必要となる。
無理のない減量で脂肪肝を改善
 急激な体重減少も脂肪肝の原因になる。ダイエットによりタンパク質が不足すると、筋肉が減少して代謝が落ち、体が消費するエネルギー量が減ってしまう。その結果、肝臓に中性脂肪が溜まりやすい状態になってしまう。

 脂肪肝を防ぐためには、体重をゆっくり減らしていくことが大切だ。目安として、1か月に0.5~1kgずつ減らしていく。3ヵ月で1.5~3kg、1年では5kg程度のペースだ。

 日本肥満学会は、肥満やメタボリックシンドロームの対策として、食生活の改善と運動の増加をはかり、まずは3kgの減量、3cmのウエスト周囲径(へそまわり)の短縮を実現することを提案している。

 生活習慣を改善するために行動の目標を立てても、実行できないことで自己嫌悪に陥り、それがストレスとなってダイエットが続かない人もいる。そうならないために、無理なく続けられる目標を立てることも大切だ。

Fatty Liver and Type 2 Diabetes(米国糖尿病学会 2012年5月)
Many patients with potentially deadly liver cirrhosis and liver cancer are being diagnosed at late advanced stages of disease, according to a study led by Queen Mary University of London and the University of Glasgow(クイーン メアリー大学 2019年5月20日)
Risks and clinical predictors of cirrhosis and hepatocellular carcinoma diagnoses in adults with diagnosed NAFLD: real-world study of 18 million patients in four European cohorts(BMC Medicine 2019年5月20日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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