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2019年02月26日
糖尿病で筋肉が減少するメカニズムを解明 世界初「原因タンパク質を特定」
糖尿病により筋肉量が減少するメカニズムを世界ではじめて明らかにしたと、神戸大学の研究グループが発表した。高血糖の状態が特定のタンパク質に作用し、筋肉量を減少させるという。加齢により全身の筋力が弱まる「サルコペニア」の治療法の開発にもつながる成果だ。
血糖値の上昇が筋肉の減少を促すメカニズムを解明
筋肉の減少により活動能力が低下すると、さまざまな病気にかかりやすくなり、寿命の短縮につながる。糖尿病患者は高齢になると筋肉が減少しやすく、サルコペニアになりやすいことが知られているが、そのメカニズムには不明の点が多い。
研究グループは、血糖値の上昇が「WWP1」と「KLF15」という2つのタンパクの働きを通じて、筋肉を減少させることがをはじめて明らかにした。これらのタンパクに作用する薬剤を開発できれば、筋肉減少に対する治療薬になる可能性がある。
研究は、神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授らの研究グループによるもので、その成果は米科学誌「JCI Insight」オンライン版に掲載された。
関連情報
血糖値が上昇すると筋肉を減らす「KLF15」が増える
糖尿病の原因のひとつは、インスリンが体内で十分に働かなくなることだ。インスリンには血糖値を調整するだけでなく、細胞の増殖や成長を促す作用もある。インスリンの作用が十分でなくなると筋肉細胞の増殖や成長が妨げられて、筋肉の減少につながると考えられている。
研究グループは今回の研究で、血糖値の上昇自体が筋肉の減少を引き起こすという、これまで想定されていなかった糖尿病による筋肉減少のメカニズムを明らかにした。
研究グループは、糖尿病のマウスで、筋肉量の減少にともない、転写因子である「KLF15」というタンパクの量が筋肉で増えることを発見した。転写因子は遺伝子の発現を制御する働きをもつタンパク。KLF15の場合は筋の分解や筋萎縮を起こす遺伝子の発現を増加させることで筋肉の減少を促す。
筋肉だけでKLF15をなくしたマウスと正常のマウスと比較したところ、KLF15のないマウスは糖尿病になっても筋肉量が減らないことを確認した。糖尿病でKLF15の量が増えることが、筋肉減少の原因であることが示された。
新たな治療薬の開発につながる成果
糖尿病では、どのようなメカニズムでKLF15が増えるかも検討。その結果、KLF15は血糖値の上昇により分解を抑制され、筋肉に蓄積されることを明らかにした。さらにその分解制御に「WWP1」というタンパクが重要な働きをしていることも突き止めた。
WWP1は「ユビキチンリガーゼ」と呼ばれるタンパクのひとつで、ユビキチンという小さなタンパクを別のタンパクに結合させる作用をもつ。ユビキチンが多量に結合したタンパクは分解が速まる。
今回の研究では、細胞がもつ多くのユビキチンリガーゼの中で、WWP1が特異的にユビキチンをKLF15に結合させることを発見した。血糖値が上昇すると、WWP1の量が少なくなり、その結果としてKLF15のユビキチンの結合が少なくなり、KLF15の分解が抑制されるという。
Hyperglycemia induces skeletal muscle atrophy via a WWP1/KLF15 axis(JCI Insight 2019年2月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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