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2018年02月15日
日本発のバイオマーカー 尿中L-FABPを活用した腎疾患管理
尿中L-FABPの活用方法
院内での迅速診断も可能に
ところで、我々が尿中L-FABPの研究に着手したころは測定に時間がかかる酵素免疫測定法のみであった。しかし最近およそ10分で結果がわかるラテックス凝集比濁法という測定法が使えるようになった。
この測定法は所要時間が短いことに加え、多くの医療機関に導入されている汎用自動分析装置を使用できることや、クレアチニンを同時に測定しその比もみることができるなどの利点がある(表1)。外来で腎機能に少し不安を感じる患者を診た時、その日のうちに尿中L-FABPを測定し適切に対処することが可能だ。
測定原理 | ラテックス凝集比濁法 | 従来法 (酵素免疫測定法) | |
---|---|---|---|
定量性 | 定量 | ||
測定範囲 | 1.5 〜 200 ng/mL | ||
検査装置 | 汎用自動分析装置 | 専用機(マイクロプレート リーダー)を使用 | |
測定時間 | 約10分 | 約130分 | |
操作性 | 前処理の必要性 | 不要 | 要 |
クレアチニン補正 | 同一検体で同時測定可 | 検体ごとに別の装置で測定 |
具体的な使い方
さて、私が考える尿中L-FABPの使い方を述べてみたい(図8)。AKIに関しては、AKIを発症する前にそのリスクを捉えたり発症後にCKDへ移行する症例を判別して介入の程度の判断に使えるだろう。
CKDに関してはその疑い症例の診断や腎機能低下が速いハイリスク患者の抽出、および定期的なモニタリングに用いられる。外来で尿中L-FABPを診て、数値が高ければ通院間隔を狭くするという柔軟な対応も可能になろう。
また何かしらの薬剤を投与後に血清クレアチニンが上昇した時、それが腎障害の生じた結果なのか、薬剤の影響で一時的に尿細管からのクレアチニン分泌が低下しているだけなのかの判断に尿中L-FABPが有用であることも経験する。尿中L-FABPの使い勝手を生かし、その活用法はさらに拡大できるのではないだろうか。
参考文献
1) 透析会誌 51:1-51,2018
2)「平成27年度 国民医療費の概況」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/15/index.html)(2019年1月15日に利用)
3) Circulation 108:2154-2169,2003
4) 糖尿病 57:529-534,2014
5) Diabetes Care 36:3655-3662,2013
6) Clin Exp Nephrol 18:305-312,2014
7) Lancet 292:363-366,1968
8) PNAS 98:2323-2328,2001
9) Am J Pathol 165:1243-1255,2004
10) PLoS ONE 10:e0126990,2015
11) Scand J Med Sci Sports 28:152-160,2018
12) Diabetes Care 34:691-696,2011
13) Diabetes Care 36:1248-1253,2013
14) Diabetologia 60:1782-1790,2017
15) N Engl J Med 365:327-336,2011
16) J Anesth 30:89-99,2016
17) Eur J Clin Invest 42:557-563,2012
18) Crit Care Med 39:2464-2469,2011
19) Biomarkers 22:5-13,2017
20) Clin J Am Soc Nephrol 11:21-29,2016
初 出
第64回 日本臨床検査医学会学術総会、第29回 世界病理臨床検査医学会連合会議(WASPaLM2017) ランチョンセミナー(2017年11月17日、京都)
演題:日本発のバイオマーカー 尿中L-FABPを活用した腎疾患管理
座長:柳田 素子 先生(京都大学大学院医学研究科 腎臓内科学 教授)
演者:池森 敦子 先生(聖マリアンナ医科大学 解剖学機能組織 教授)
共催:積水メディカル株式会社
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