ニュース
2017年11月10日
ウォーキングなどの有酸素性運動が動脈硬化を3分の1以下に抑える
- キーワード
- おすすめニュース ライフスタイル 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症 運動療法
ウォーキングなどの有酸素性運動を習慣的に行うと、動脈硬化を抑えられることが、産業技術総合研究所(産総研)による10年間の追跡調査で明らかになった。
運動習慣がある場合、そうでない場合に比べて加齢による血管の老化を抑えられ、その進行の度合いは3分の1以下になるという。
運動習慣がある場合、そうでない場合に比べて加齢による血管の老化を抑えられ、その進行の度合いは3分の1以下になるという。
週に4〜5日の活発なウォーキングで効果が最大
産業技術総合研究所(産総研)は、動脈硬化の進行度合いの個人差を長期間追跡した結果、ウォーキングなどの有酸素性運動を習慣的に行うと、動脈硬化を抑制できることをはじめて実証したと発表した。
有酸素性運動による動脈硬化の抑制効果が最大になるのは、活発なウォーキングやジョギングなどを週に4〜5日、30〜60分程度行った場合だという。
そしてこの効果は短期間の急性的なものではなく、毎日の積み重ねによる継続的なものであることも判明した。少なくとも4週間、ウォーキングなどの有酸素性運動をすることで改善が期待できる。
動脈硬化の指標となる「動脈スティフネス」
心血管系疾患は、日本の死亡原因の第2位で、世界保健機構(WHO)の調査でも、世界の死亡原因の第1位になっている。そして、これらの疾患の発症リスクとして近年注目されているのが、動脈壁の硬さを示す「動脈スティフネス」だ。
動脈硬化には細い血管のつまりをもたらし、狭心症や脳梗塞を引き起こすタイプ(アテローム硬化症)と、動脈壁が弾性力を失い、硬くなるタイプ(中膜硬化症)がある。
「動脈スティフネス」は、後者を評価する動脈壁の硬さの指標で、動脈スティフネスが高い場合には、将来心臓病を発症するリスクが高いとされる。「動脈スティフネス」は、加齢に伴って上昇するが、習慣的に有酸素性運動を行うことで改善できることが分かっている。
「動脈スティフネス」は加齢とともに増大するため、これを改善することが、心血管系疾患発症の一次予防として重要視されている。
これまでに、有酸素性運動などの身体活動を習慣的に行っている人では、運動習慣のない同年代の人に比べて、「動脈スティフネス」が低い可能性があること、血管収縮を制御するエンドセリン受容体に関連する遺伝子多型のパターンによって、運動効果に違いがある可能性が報告されている。
PWV検査で動脈硬化の進行を測定できる
遺伝的なリスクがあると、動脈硬化は進行しやすい
研究では、baPWVと「エンドセリン受容体」の関連について調査した。エンドセリンは、血管内膜から産生される血管収縮をコントロールする物質で、エンドセリン受容体に結合することで、その機能を発現する。
ET-AとET-Bの2種類のエンドセリン受容体があり、血管系ではET-Aは血管収縮作用、ET-Bは血管拡張作用に関与しているとされている。
遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差である「遺伝子多型」で比較したところ、baPWVの10年間での増加量は、ET-A受容体の遺伝子多型が「T/T型」の人に比べ、「T/C型」と「C/C型」の人で有意に高く、ET-B受容体の遺伝子多型が「G/G型」の場合、「A/A型」や「A/G型」よりも有意に高いことが分かった。
また、これらの遺伝子リスクの保有数が増えるほど、baPWVの増加量は段階的に増大することも判明した。リスク保有数0の場合に比べて、リスク保有数2の場合では、10年間のbaPWVの増加量が2.5倍以上に上昇するという。
遺伝的なリスクがあっても、運動習慣があれば、動脈硬化を抑制できる
運動は毎日の積み重ねが大切
今回の研究では、過去1年間の運動習慣から有酸素運動量を推定したが、高活動群のほとんどは、過去10年間の間、運動量は維持か減少していると回答しており、有酸素性運動の効果は、比較的短期間の急性的な効果ではなく、日々の積み重ねによる継続的な効果であると考えられるという。
また、「15 METs×時間以上」の活動量で有酸素性運動の効果がみられた。これは、速歩やジョギングを1日30〜60分、4〜5日/週実施するのに相当する。米国スポーツ医学会・米国心臓病学会が心血管系疾患予防として推奨する身体活動量にほぼ相当しており、これまで推奨されていた身体活動量の有効性が、10年間の追跡調査により、はじめて実証された。
今回の研究は、産業技術総合研究所人間情報研究部門人間環境インタラクション研究グループの菅原順主任研究員、バイオメディカル研究部門バイオアナリティカル研究グループの野田尚宏研究グループ長、松倉智子研究員らによるもの。研究成果は、米学術雑誌「Journal of Applied Physiology」に発表された。
産業技術総合研究所人間情報研究部門Effects of Endothelin-related Gene Polymorphisms and Aerobic Exercise Habit on Age-Related Arterial Stiffening: A 10-year Longitudinal Study(Journal of Applied Physiology 2017年11月2日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
おすすめニュースの関連記事
- 歯磨きだけでは不十分?「歯間ケア」が良好な血糖管理に関係する可能性
- 科学的データで見る「ラーメンを食べる頻度」と「健康リスク」の関係
- 糖尿病の人の熱中症を防ぐための10ヵ条 猛暑は血糖管理を悪化させる? 十分な対策を
- 糖尿病の人は「サルコペニア」にご注意 筋肉の減少にこうして対策 何歳からでも予防・改善が可能
- 全ての人に知ってほしい現代医療の必須ワード『SDMって何?』を公開
- 【1型糖尿病の最新情報】発症からインスリン枯渇までの期間を予測 より効果的な治療を期待 日本初の1型糖尿病研究
- 肥満のある人が体重を減らすと糖尿病リスクは大幅減少 中年期の体重管理は効果が高い 血糖値を下げる薬を止められる人も
- 【熱中症予防の最新情報】糖尿病のある人は暑さへの備えが必要 熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 連休中は糖尿病の管理が難しい? 連休を上手に乗り切るための「8つのヒント」
- 加藤茶・綾菜夫妻が「おうち透析(腹膜透析)」について語る ヴァンティブがローンチイベントを開催

医療・健康情報グループ検索