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2016年03月17日
よく噛んで食べるとエネルギー消費量が増加 満腹感を得やすくなる
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- 食事療法

食事をとると体に吸収された栄養素の一部が体熱となって消費される。そのため食事をした後は、安静にしていても代謝量が増える。この代謝の増加を「食事誘発性熱産生」という。
栄養素の中で食事誘発性熱産生が多いのはタンパク質だ。食事はタンパク質をバランス良く含んだものの方が良いことは、エネルギー消費の点でも明らかだ。
研究チームは、平均年齢23歳の12人の成人に参加してもらい、パスタ、ヨーグルト、オレンジジュースという合計621kcalの食事をとってもらった。早く食べた場合と、ゆっくり食べた場合の、食後3時間の食事誘発性熱産生を比較した。
その結果、ゆっくりとよく噛んで食べた時にはエネルギー消費量は30kcalだったが、早く食べた場合は15kcalだった。咀嚼の回数を増やすとエネルギー消費量に2倍の差が出ることが明らかになった。
また食後に15分間ガムを噛むと、エネルギー消費量は6~8kcal増加し、この増加はガム咀嚼後40分程度続いたが、食事をよく噛んで食べた場合のエネルギー消費量に匹敵するほどの影響は出なかった。
研究は、東京工業大学大学院社会理工学研究科の林直亨教授らによるもので、医学誌「Obesity」に発表された。
「噛む行為が食後のエネルギー消費量を増やす要因になることが分かりました。ゆっくりよく噛んで食べることをベースにしたダイエット法の開発にもつながる成果です」と林教授は説明する。
2013年度国民健康・栄養調査によると、肥満者(BMI25以上)の割合は、男性28.6%、女性20.3%だった。肥満の割合は男性では40歳代でもっとも多く、女性では年齢が上がるにつれて高くなる。
日本肥満学会の「肥満治療ガイドライン」では、「咀嚼法」が肥満治療における行動療法のひとつとして明記されており、1口で20~30回以上噛むことが推奨されている。
よく噛んで食べることのメリットは、食事誘発性熱産生の増加に加えて、▽満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防げる、▽よく噛むことで視床下部からヒスタミンが分泌され、食欲を抑制できる、▽よく味わって食べることで、薄味や少量でも満足感を得やすくなる――などがある。
岡山大学の研究チームが2014年に発表した1,314人の若者を対象に行った研究でも、「早食い」の人は、「ゆっくり食べる」人に比べ、肥満リスクが4.4倍に上昇することが確かめられている。
「日本人では年齢が上がるとともに肥満が増える傾向があります。若いうちから、咀嚼の回数を増やす習慣を身に付けることが、将来の生活習慣病を予防するうえで重要です」と、林教授は述べている。

Effect of postprandial gum chewing on diet-induced thermogenesis(Obesity 2016年2月17日)
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