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2015年04月21日
スマホの健康アプリは糖尿病治療にも有用? 期待と課題が浮き彫りに
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 血糖自己測定(SMBG)

スマートフォンの健康アプリの多くは、体重をコントロールしたり、食事や運動の記録をとるなど、健康的な生活スタイルを促すために使われている。糖尿病や高血圧の患者が血糖値や血圧値などの自己管理に用いられるものも多数出ている。 パソコンなどで利用できる健康アプリが登場したのは10年以上前のことだ。市場調査会社によると、現在は1万点以上のアプリで出ており、スマートフォンなどで簡単にアクセスし利用できるようになっている。健康アプリはいまや、数千万のユーザーと数十億ドルの市場を形成しているという。
このデバイスとアプリは、以前からある歩数計に比べ容易に使用でき、パソコンやスマートフォンで記録結果を見ることができる。1日に終わりに燃焼したカロリーを確認することで、より活発に体を動かそうと思うようになり、「毎日がアクティブになった」という。
彼女はアルコールの摂取量を記録するアプリの利用もはじめた。6週間後にアルコールの摂取量は減り、夜は良く眠れるようになり、食事内容も改善したという。「健康アプリは健康管理の役に立っている」と、ワーマン氏は言う。
健康アプリには「検査値の改善度や合併症の発生率、死亡率など、臨床上の成果を向上させるポテンシャルがある」と、ウェイク・フォレスト医学大学院のイルティファット フセイン氏は言う。フセイン氏は、医師が健康アプリを評価するサイト「iMedicalApps.com」の編集者も務めている。
「健康アプリ自体は、全般に品質が急速に改善してきている」と、フセイン氏は指摘する。これには、2013年に米食品医薬品局(FDA)がガイドラインを発表したことが大きく影響している。
「既に多数の人が健康アプリを利用しているのは明白なので、医師による科学的な研究成果を待っている余裕はない」と、フセイン氏は言う。
一方で、健康アプリのほとんどは最近になって登場したため、使用実績が少なく、正確なアウトカムがない。健康アプリによる実害があるというエビデンスが報告されていなことは、欠点がないことを示すわけではなく、いくつかの研究では矛盾する結果も示されている。フィットネス系のアプリを使っても、運動改善効果を得られなかったという報告もある。
「健康アプリの品質を高めるためには、特にスマートフォンを医療機器として使用するような場合は、FDAのような機関が健康強調表示の許可などを管理し規制する必要があるだろう」と、フセイン氏は指摘する。
心拍数や血圧値などを測定するタイプのアプリは多くは、「害のないものがほとんどだが、有用でもない可能性もある」という意見も出ている。
「健康アプリの中には、医療の知識をもたない患者の脅迫観念を煽り、不安を増す可能性があるものがある」と、スコットランドの開業医であるデス スペンス氏は注意を促す。
磁気共鳴断層撮影(MRI)や血液検査といった医療テクノロジーが発達した結果、過剰診断が問題になっている。「我々は医療のテクノロジーに関してもっと懐疑的になるべきだ」、とスペンス氏は注意を促している。
米国のスクリップス トランスレーショナル科学研究所(STSI)は、スマートフォンを慢性疾患の治療に活用する研究を実施中だ。
患者にスマートフォンに連動する、血圧計や脈拍数モニター、血糖測定器などを提供し、高血圧や不整脈、糖尿病の記録をとってもらうという研究だが、スマートフォンのおかげ容易になっても、慢性疾患の患者がデバイスとアプリを使いこなせないという問題が出てきた。
「患者のコンプライアンス(遵守)を高めるのが難しい。疾患に合わせたスマートフォンとデバイスを提供しているのだが、多くの人は面倒がってしまう」と、STSIのシナモン ブロス氏は言う。
「治療に対するコンプライアンスを向上するのが難しいために、巨額の医療費が使われている。医療における共通の課題だ」と、iMedicalApps.comのフセイン氏は語っている。
Can healthy people benefit from health apps?(BMJ 2015年4月14日)
STSI’s State-of-the-Art Science Review on Mobile Health is Now Available(スクリップス トランスレーショナル科学研究所 2015年4月16日)
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