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2013年08月22日

10年後の認知症の発症を予測 8項目で簡単にチェック

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糖尿病合併症
 2型糖尿病患者が今後10年間で認知症を発症する危険性を、危険因子の数から簡単に予測できるリスクスコアを、米国とオランダの研究チームが開発した。
糖尿病患者の今後10年後の認知症リスク予測
 この研究は、米国の医療保険会社であるカイザーパーマネントとオランダのユトレヒト大学医療センターの共同チームによるもので、医学誌「ランセット 糖尿病・内分泌学」に発表された。

 「患者の年齢や健康問題、受けた教育などから、認知症の発症を高い精度で予測できることが分かりました。開発したリスクスコアは、認知症の予防と治療を早期に開始するために役立てられます」と、カイザーパーマネントのレイチェル ウィットマー氏は話す。

 研究チームは、60歳以上の2型糖尿病2万9,961人の検診データをもとに、スコアリングシステムを開発した。患者の17%が10年間以内に認知症を発症した。

 45項目のリスク要因を調査し、統計学的な解析によって、認知症の発症と関連の深いリスク要因を弾き出した。

 その結果、認知症の予測因子として特に重要なのは「低血糖」、「脳血管障害」、「うつ」で、「細小血管症」、「糖尿病足病変」、「心疾患血管」も関連が強いことが分かった。

 「このリスクスコアで、もっとも高いスコアをもつ患者は、もっとも低い患者に比べ、10年以内に認知症を発症する可能性が37倍に上昇することが分かりました」と、ウィットマー氏は言う。

 「認知症の効果的な予防介入のための臨床試験のデータは不足しています。このリスクスコアは臨床医のための効果的なツールとなる可能性があります」と、ユトレヒト大学医療センターのギァート ジャン ビーセルズ氏は説明する。

 2型糖尿病をもつ人はそうでない人に比べ、認知症を発症する危険性が2倍以上高いことが知られている。「リスクを1つでも減らすことで、認知症のリスクを低下させることができます」と、研究者は強調している。

 「2型糖尿病と認知症は、ともに患者数が増加しており、公衆衛生上の大きな課題となっています。高齢化にともない発症が増えることや、有効な対策をすることで予防・改善が可能である点が共通しています」(ウィットマー氏)。

 糖尿病の治療は認知症の予防にもつながる。認知症の原因となる疾患や病態の多くは、医師や医療スタッフによる治療や、生活習慣の改善などの患者の取り組みによって減らすことができる。

 このリスクスコアによって、早い段階から認知症を進展させる危険性の高い患者を治療できるようになると期待している。なぜ糖尿病が認知症のリスク上昇と関連するのを解明する助けにもなるという。

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Risk score for prediction of 10 year dementia risk in individuals with type 2 diabetes: a cohort study(ランセット 2013年8月20日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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