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2013年08月15日

1型糖尿病の新しい治療薬を開発 自己免疫を抑えβ細胞を保存

 診断されて間もない1型糖尿病を対象とした新しい治療法の開発が、米国で進められている。1型糖尿病の進行を抑える治療薬の第2相臨床試験が行われ、良好な結果を得られたと発表された。研究成果は米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes」オンライン版に発表された。
自己免疫疾患を抑制しβ細胞を守る治療薬を開発
 1型糖尿病は、主に自己免疫疾患が原因でインスリンを分泌するβ細胞が壊され発症するタイプの糖尿病だ。多くの患者ではβ細胞は徐々に破壊されていくが、診断された時点ではかなりの数のβ細胞が存在していると考えられている。

 米国で開発が進められている「teplizumab」という治療薬は、初期の段階で自己免疫疾患を抑えて、1型糖尿病の進行をブロックする治療薬だ。

 研究を主導しているカリフォルニア大学糖尿病センターのジェフリー ブルーストーン氏(免疫学)らは、体内の異物を排除するための役割をもつ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまう「自己免疫疾患」がなぜ起こるのかを研究していた。

 「自己免疫疾患によってβ細胞がすべて破壊され、インスリン分泌が枯渇してしまうと、血糖変動が大きくなりインスリン療法も難しくなります。できるだけβ細胞を残す治療が求められています」と、ブルーストーン氏は話す。

 そして、副作用のない自己免疫を抑制する治療薬の開発を目指して、1987年にteplizumabを開発した。

 T細胞の表面にある「CD3」分子は、T細胞を補助する受容体の働きをし、免疫メカニズムで重要な役割を担っている。自己免疫反応はCD3を標的として起こる。Teplizumabには、T細胞に結合しCD3に働きかけ、β細胞が免疫機構によって破壊されるのを防ぐ作用がある。

 米国の1型糖尿病の有病数は約300万人で、年間に1万5,000人の子供と1万5,000人の成人が発症し、1日に80人が新規に1型糖尿病と診断されている。原因は不明だが、1型糖尿病患者は年間3%ずつ増え続けているという。

 研究は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)や国際若年性糖尿病研究財団(JDRF)などの支援を受けて行われている国際臨床研究グループ「免疫寛容ネットワーク(NIH)」のプロジェクトとして行われている。

次は...インスリン産生レベルの低下が75%改善

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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