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2012年12月07日

インスリン抵抗性の原因は小胞体ストレス メカニズムを解明

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医療の進歩
 金沢大学は、肥満状態の肝臓を調べ、細胞内にある品質不良のタンパクを分解する装置である「プロテアソーム」の機能異常が、小胞体ストレスとインスリン抵抗性の原因となることを、マウスと細胞実験からあきらかにしたと発表した。

 この研究は、金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学分野の篁俊成准教授、金子周一教授らによるもので、米国糖尿病学会誌「Diabetes」(オンライン版)に発表された。

 インスリンは糖の吸収やエネルギーの蓄積に重要な役割を担うホルモンだが、栄養過多や肥満の状態はインスリンの働きを妨げ、いわゆる「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態を引き起こす。

 インスリン抵抗性は、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、がんなどの生活習慣病を促進する。その発症メカニズムの解明に向けた研究が進められている。

 一方、細胞小器官のひとつである小胞体は、“タンパク質の加工工場”と呼ばれており、さまざまなタンパク質の合成に関わっている。小胞体の中に役割を終えて不要になったタンパク質や、異常なタンパク質が蓄積すると、機能障害を起こす。これが“小胞体ストレス”だ。

 研究チームは、インスリン抵抗性と小胞体ストレスの関連に着目した。小胞体ストレスが炎症を引き起こし、インスリン抵抗性の一因になっているという。

 細胞内の異常なタンパク質は、小胞体の外に引き出されて、「プロテアソーム」と呼ばれる“タンパク質の分解工場”で分解される。プロテアソームは、不要なタンパク質や有害なタンパク質を正常なタンパク質とを見分けて、正しく処置する働きをする。

 この品質管理のメカニズムが低下すると、品質不良のタンパク質は加工工場である小胞体に蓄積され、小胞体ストレスが生じることとなる。

 最近の研究で、肥満が小胞体ストレスを引き起こすことで、肝臓や脂肪組織でインスリン抵抗性が起こることが報告されている。しかし、肥満がいかに小胞体ストレスを誘導するかという分子メカニズムは不明のままだった。

 そこで研究チームは、肥満状態の肝臓で生じる変化を研究する中で、プロテアソームに着目し、以下の4つのことを遺伝子改変マウスと培養肝細胞の実験からあきらかにした。
(1)肥満状態ではプロテアソーム機能が低下する
(2)このために品質不良タンパクが分解されずに小胞体に蓄積する
(3)これが小胞体ストレスを生み、インスリン抵抗性をもたらす
(4)小胞体ストレスを消去する治療がプロテアソーム機能低下によるインスリン抵抗性を改善する

 これらの結果について、研究グループでは、「プロテアソームでの品質不良タンパクの分解力低下が、これまで不明であった肥満と小胞体ストレスの間をつなぐ現象であることを解明した」と説明している。

 今後はプロテアソーム機能を高める治療や薬剤を開発することで、2型糖尿病や肥満症に対する治療につながると期待を示している。

金沢大学

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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