熊本大学代謝内科学分野と県、県栄養士会は、糖尿病患者やその予備群が安心して食べられる低カロリーメニュー「ブルーサークルメニュー」を展開している。総カロリー600kcal未満・塩分3g以下で、11月から県内約40ヵ所の飲食店やホテルで提供している。
産学官連携で低カロリーメニューを開発
熊本県の糖尿病推定患者数は14万1000人(20歳以上県民の9.6%)、予備群を含めると37万9000万人(20歳以上県民の25.8%)であり、糖尿病患者数は増加している。メタボリックシンドローム、高血圧症、脂質異常症のリスクが高い人の割合も全国平均に比べ高い。
生活習慣病の原因となる肥満が多く、食生活や運動習慣の改善が進んでいないことが一因だという。一方、健康的な食事は味が薄い、外食はカロリーが高い、外食ではカロリーは減らせない、糖尿病や高血圧のある人は外食を利用しずらいといった偏見が根強い。
糖尿病などをもつ患者だけでなく、体重管理が必要な人、腹囲が気になる人、健康に関心の高い人などが安心して利用できる、おいしくてカロリーの気にならない、しかも食べると健康増進が期待できる外食メニューの開発・普及が必要とされている。
そこで来年5月に熊本市で日本糖尿病学会年次学術集会が開催されるのを機に、熊本大学代謝内科学分野(荒木栄一教授)と県、県栄養士会は、糖尿病患者やその予備群が安心して食べられる低カロリーメニュー「ブルーサークルメニュー」を開発した。
「糖尿病対策」のシンボルであるブルーサークルを掲げ、健康的な外食メニューを「ブルーサークルメニュー」とし、熊本県内のホテル・飲食店・弁当店・総菜店から広く募集。総カロリー600kcal未満で塩分3g以下の条件を満たす約50のランチメニューやコースメニューを認定した。
県栄養士会が協力し、候補作品の厳正なカロリー・塩分計算を行った。認定されたメニューは、県の事業のひとつである「健康づくり応援店」として指定。ホームページや各種媒体などを通じて広報される。
糖尿病でもおいしく 熊本県内40ヵ所で提供
ブルーサークルメニューは、熊本市内の主要ホテルも取り入れおり、洋食・和食・コースメニューなど多様に広がっている。どれも低カロリーとは思えない出来栄えで、フランス料理店のメニューは魚、肉料理、パンにデザートがついて521kcal。油や塩を使わず蒸したり、香味野菜などを用い調味料を抑えたり、見た目やボリューム感をそこなわないように低カロリーのヒレ肉を使うなどして工夫している。
ブルーサークルメニュー一覧(熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業)
ブルーサークルメニューの提供で、外食時にもカロリー管理をできるようになるだけでなく、家庭での食育や食事療法への認識が深まり、また糖尿病や生活習慣病の脅威・予防法・治療法への理解が進むなどの効果を期待している。
「外食メニューの健全化から食事療法への認識が深まり、糖尿病や生活習慣病の脅威・予防・治療への理解が進むなどの効果が大きい」と、熊本大学大学院代謝内科学分野の荒木栄一教授は意義を強調している。
「ブルーサークル」、糖尿病の世界的なシンボルマーク。糖尿病の有病者が世界的に増え脅威が増しているのを受け、国際糖尿病連合(IDF)の求めに応じ、国連総会が決議を採択したのを機に、「糖尿病との闘いのため団結せよ(Unite for Diabetes)」というキャッチフレーズとともに採用された。
11月14日の世界糖尿病デーには熊本城をブルーでライトアップするなど各地で啓発活動が展開された。荒木教授が会長を務める第56回日本糖尿病学会年次学術集会は来年5月16日から熊本市で医療関係者ら1万人以上が参加し開催される予定。
熊本大学大学院生命科学研究部 総合医薬科学部門生体機能病態学講座 代謝内科学分野
熊本県栄養士会
熊本県 健康づくり応援店
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所