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2012年08月24日
糖尿病網膜症のメカニズムを解明 東北大
東北大大学院の中沢徹教授(眼科学)らの研究グループは、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病網膜症の発症メカニズムの一端をあきらかにした。
眼の網膜で受け取られた視覚刺激は、目の網膜の内側にある「網膜神経節細胞」を介して脳に伝えられる。糖尿病網膜症が進展すると、眼底血管に障害が起こるが、同時に網膜神経節細胞も減少する。この細胞を保護する方法がみつかれば、糖尿病網膜症の症状を遅らせることができると考えられている。 研究チームは、糖尿病による酸化ストレスの増加で細胞死が起こることに着目し、糖尿病になると網膜の細胞がどうなるかを調べた。細胞死が起きる際に活性化してさまざまなタンパク質を切断する「カルパイン」と呼ばれる酵素に着目した。 まず正常のマウスと、酸化ストレスに対する防御機構のスイッチとなる「Nrf2」と、カルパインの活性を抑制する「カルパスタチン」を抑えた遺伝子組換えマウスの3種類を用意した。これらのマウスに高脂肪食などを与え糖尿病に近い状態にし、網膜神経節細胞の変化を調べた。 すると、網膜神経節細胞の数は、2週間後の時点で、正常のマウスでは変化しなかったのに対し、Nrf2とカルパスタチンを抑えたマウスではともに20%以上減っていた。このことから、酸化ストレスとカルパインの活性を抑えることが、網膜神経節細胞の保護に大きく関わっていることがわかった。 研究チームは次に、抗酸化物質やカルパイン活性化を阻害する化合物を使い、網膜神経節細胞の保護効果の検証を行った。 まず糖尿病を模倣した高糖濃度の培養系で網膜細胞を培養し、薬剤をそれぞれ単独で添加した。すると、それぞれ無添加の場合に比べ、細胞の生存率が高まることが確認された。さらに、2つの薬剤を併用することで相乗的に生存率を向上させることができることも判明した。 抗酸化物質やカルパインの働きをコントロールする薬剤を開発すれば、糖尿病網膜症の新たな治療法になる。研究グループは今後、別の動物を使った研究も重ねる方針で、将来的にヒトの治療薬開発につなげたいとコメントしている。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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