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2012年08月10日
悪い脂肪を良い脂肪に変える治療法を開発
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脂肪細胞には、脂肪滴と呼ばれる脂肪のかたまりがあり、余分のエネルギーをためる貯蔵庫としてはたらいている。白色脂肪細胞には大きな脂肪滴があり、脂肪をたくわえる役割をしている。一方、褐色脂肪細胞には小さい脂肪滴が多数含まれており、脂肪を燃焼し熱を産生しやすい。
褐色脂肪細胞が多い人はエネルギー代謝が高く、太りにくいが、脂肪細胞のほとんどは白色脂肪細胞で、褐色脂肪細胞は首や肩甲骨のまわりなど、体のごく一部にしかない。また、褐色脂肪細胞は乳幼児に比較的多いものの、成長するにつれて少なくなるとされている。
褐色脂肪細胞のエネルギー消費量は、糖尿病や肥満や加齢により減っていき、結果としてエネルギーを消費しにくい体になっていく。「年をとってから痩せにくくなった」、「食べる量は少ないのに太りやすい」という話をよく聞くが、褐色脂肪組織の活性の違いで説明できる可能性がある。
脂肪細胞はアディポサイトカインと呼ばれる生理活性物質を分泌している。肥満にともなって大型化した白色脂肪細胞が増加すると、脂肪細胞の機能不全におちいり、善玉のアディポネクチンの分泌が低下し、TNF-αなど悪玉のアディポサイトカインの分泌が亢進する。
ワシントン大学医学部の研究チームは、体内で炭水化物などの栄養源から脂肪がどのように合成されるかについて調べた。脂肪が合成される過程で、脂肪酸シンターゼ(FAS)と呼ばれる酵素が必要とされる。脂肪細胞からFASを取り除いたマウスでは、高脂肪食を食べても肥満にならないことを発見した。

肥満のマウスの白色脂肪細胞(左)とFASを取り除いたマウスの脂肪細胞(右)
FASはPexRAPと呼ばれるタンパク質の作用に関わっており、脂肪細胞のPexRAPを阻害すると、脂肪の産生と蓄積が低減することもわかった。これらの作用を阻害する薬剤を開発できれば、褐色脂肪細胞の活性化につながる可能性があるという。
「白色脂肪細胞を抑え、褐色脂肪細胞を活発化する方法を開発すれば、糖尿病や肥満の新たな治療戦略となる」と研究者は述べている。
New target for treating diabetes and obesity(ワシントン大学 2012年8月2日)
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